生成AIは僕のゴーストライターになるのか?あるいは執筆での活用試行錯誤
2024年の流行語大賞は「生成AI」だった。
僕の周囲では。
皆さんの周りでも同様だったのではないだろうか。
僕自身はこういった流行り物に飛びつくのが好きではないので、「誰よりも早く使い始め、毎日もうこれなしでは仕事できません!」という感じではない。
とはいえ流石にスルーするわけにもいかず、どこか特定の領域で狭く深く使ってみることにした。だとすると、僕の場合その領域はもちろん「物書き」になる。
もう一つの仕事のコンサルティングだと顧客情報のセキュリティ等、考慮しないといけないことが増えるので(その観点も大事なのだが、それは同僚に検証を任せればいいし)。
そこでブログを書くのに少しずつ使い始めた。
ChatGPTを使い始めて数日たった時点(半年以上前)で書いたブログがこちら。
「執筆アシスタントとしてのChatGPTについて、現時点での雑感。」
あれからもう少し活用するようになり、少しはノウハウも溜まった。
現時点での感触、分かってきたことを書いてみよう。
文章を書くには大きく分けて、以下の工程がある
・アイディアの整理
・執筆
・推敲
書き始めたら結構長くなってきたので、このブログでは最初のアイディア編だけ書くことにする。
※生成AIはChatGPTのo1と4oを適当に使っています。他社のツールは使ったことがありません。ツールごとの違いを調べたり、優劣の比較をするのは他の人に任せて、自分の得意分野である執筆でなるべく使ってみよう、という方針なので。
★アイディア整理のためにChatGPTを使う
ブログであれ本であれ、書くことを一旦ノートにわーっと書き出すのが僕の執筆スタイルだ。で、構成(記載順)をざっと考えて、あとはひたすら文章化していく。
最近はノートに書き出したあとのタイミングで、ChatGPTに話しかけることにしている。
「変革プロジェクトをやるために、社外からコンサルタントを選定し、参加してもらうことが多くなりました。ダメなコンサルタントを選んでしまうことについて、アイディアをください」みたいな問いかけをすると・・
・明確な選定基準を設定する
・スキルセットの見極め
・複数の候補を比較する
みたいなリストが、それぞれの解説付きでわーっと書かれる。
はいはい、そりゃそうですね。
・「スキルセットの見極め」とひとくちで言っても難しいんすよ、そこから先をちゃんと書かなきゃ本にならんのよ。
・というか、ここに書いてあることって、コンサルタント選定だけでなく、何かを選択する時全部に当てはまる話じゃん・・。
などと、ツッコミたくなる。
このままだと、僕としては得るものはなにもない。最初はここから掘り下げることにチャレンジしていたが、なんともダルい。
★ChatGPTにマウントを取ってみる
そこで、対話の最初に以下を貼り付けるルーティンにした。
今日も変革プロジェクトを失敗させるアンチパターンについて議論したい。
いつものように、僕はこのテーマについて本を何冊も書いているエキスパートなので、ありきたりで網羅的なコメントよりも、鋭い視点を求めている
なぜAI相手にいきなりマウント取っているかというと、これさえ書けば
・"自社パッケージ"を売り込みたいだけのコンサル
・現場を軽視するコンサルは、変革プロジェクトで最も重要な"行動変容"の部分をないがしろにする
・"依存体質"を助長し、社内に何も残さないコンサル
みたいな、結構僕が書きそうなことを返してくるからだ。(3つとも、実際にChatGPTが書いたものです)
使い慣れている人にとってはおなじみの
・対話相手のユーザー(この場合は白川)はどういう人間なのか
・対話の際、ChatGPTはどういう人間に憑依して欲しいのか
を指定する、というプロンプト術である。
文脈を補完すると、それに適した応答をしてくれる、ということですね。
★AIが苦手なことと、それを補う術
15年くらい前、AIを研究している人に教わってなるほど、と思ったのは「3歳児問題」だった。3歳児問題とは、
様々なことができるAIに意外な盲点がある。それは「椅子には座ることができる」みたいな、3歳児でも分かりそうなことがAIには分からない。それを教え込むのに膨大な手間がかかる。
というものだ。近年の生成AIを見ると、「椅子」と「座れる」の関係はとっくに学習しているようなので、おおよそ克服できたのだろう。
だがおそらく「人間には当たり前で、知識とすら認識していないようなことが、時としてAIには盲点となる」という要素はまだ残っている。
先に例として挙げた生成AIとの対話での盲点は
・対話の相手である白川が、変革プロジェクトについてどのくらい見識があるか?
・対話の相手である白川に対して、どういう立ち位置で会話すべきか?
なんだと思う。
実際の同僚やお客さんは、僕と話す際に「白川さん、コンサルタントを選ぶ時には複数の候補を比較した方が良いですよ」とかは言ってこない。そんなことは僕が承知していると分かったうえで、その先の議論をする。
でも生成AIにはそんなこと分からない。以前のAIが「椅子は座れるものだ」を認識しづらかったのと同様に。
★ChatGPTが教えてくれたものを活かせるか?
で、上記のようにプロンプトを工夫したり、更に対話を重ねることで、ChatGPTは沢山の情報を投げてくる。それらは本を書く際の参考になるだろうか?
僕のいまのところの回答は「ほんの少しなる」である。
本やブログに書くテーマについてはこっちもプロなんで、ここまでやったとしても、ChatGPTが教えてくれることについて、「全く知りませんでした!勉強になりました!」ということはないからだ。
どれだけ工夫したとしても、生成AIって一般的なことを書くのが得意なツールなのだ。
でも「あー、それもあったね。書いても良いかも」とか「大々的に取り上げないまでも、今書いている文章に2行くらい書き足そうかな」くらいはある。
つまり文章の品質がちょっとあがる。
★対話の効果
ChatGPTから有益なことを教えてもらうことは少ない。
だがこれから書こうとしているテーマについて、ChatGPTと対話すること自体は、有益だ。
対話していると、自分で勝手に気づくことが多いからだ。「あ、ちょっとこういう風に偏っていたな」とか「これをきちんと書かないと、本として意味がないな」とか。
ChatGPTが教えてくれるのではない。対話を通じて自分で気づくのだ。
プログラマーをしていた頃、自分が担当するシステムの設計思想について、後輩に説明することにしていた。相手の勉強のために始めたのだが、しばらくして、説明中に問題点に気づいたり、もっと良い実装方法を勝手に思いつくことに気づいた。
誰かと対話する(説明する)というのは、自分の頭を整理する効果があるのだろう。
僕はChatGPTに「グプタ君」と名前をつけ、人間扱いすることにしているので、同僚と話すのと同じ現象が起きているのだと思う。
ChatGPTがいなくても、本を書く時には同僚に取材したり、意見を聞くことは多い。でもChatGPTはいつでも付き合ってくれるのが強みだ。土曜の朝にzoomで同僚を呼び出す訳にはいかないし。
★まとめ(生成AIは文章を書く際のアイディア出しに役に立つか?)
5月に書いたブログで
> ネタ出しには役に立たない(今のところ)
と書いた。
執筆自体や推敲よりは、ネタ出しに役に立つかな・・というのが、現時点での僕の見解だ。ただしこれはかなり人によると思う。
というのも、生成AIってソツがない能力を持っているので、何においても
苦手な人<生成AI<得意な人
という構図が当てはまりやすい。
僕の場合はずっと本やブログを書いてきて、執筆自体に苦手意識がない。むしろ趣味だったりする。なので生成AIよりは自分の方が執筆能力が総合的に高い、と評価している。今のところは。
なので執筆自体に活用しようと試行錯誤するより、自分で書いた方がクオリティがずっと高くなる(速さでは負けるが)。
だからアイディア出しに活用している。
むしろ文章を書くのがそれほど得意でないひとこそ、使うメリットが大きいと思う。
★セミナー(というか勉強会)を開催します。
ということで、まだまだ模索中ではありますが、「AI×執筆」というテーマで、Zoom勉強会をやります。
最初はケンブリッジ社内の勉強会というクローズな場でやろうと思っていたくらいなので、いつもやっているウェビナーよりも更にカジュアルです。
・スピーカー陣もノウハウが確立されている訳ではない
・スピーカー意外の人も声出し可能
・「俺はこうやっている」というノウハウ提供歓迎
1)登壇者
白川だけだとノウハウ提供に限りがあるので、社外からゲストスピーカーを2人お呼びします。
先日少し話しましたが、お二人とも僕とは違った角度で活用されているので、勉強になりました。
原田篤史さん(ウォーターデジタル合同会社代表)
https://water-digital.com/
書いているもの:NewsPicksプロピッカーとして、水処理関係の発信。
柏木誠さん(プロジェクトデザイナー)
https://note.com/memo_notes
書いているもの:プロジェクトやAIによる思考拡張について。Noteフォロワー1.7万人。
2)アジェンダ案
・俺はこうやってAIを執筆に使っている
・架空の本の目次案をAIに作らせよう!
・座談会:AI執筆のメリットと限界
3)参加方法
2/26 19時開始。(226事件のあった日とおぼえてください)
時間になったら、以下のURLで座談会を開始します。
いつものケンブリッジセミナーとはことなり、申し込みは不要です。
https://x.gd/zUi8Z
*******
なお、上記の文の改善点をChatGPTに指摘してもらいました。
いつものようにガン無視しました。
正しい指摘だけど、大きなお世話なんだよな・・。
★「2024年の流行語大賞は『生成AI』だった」という書き出しはインパクトがありますが、続く「僕の周囲では。皆さんの周りでも同様だったのではないだろうか。」という一文でやや唐突な印象があります。
★「ダルい」「ツッコミたくなる」「マウントを取る」といった表現は、そのままでも親近感はわきますが、やや軽めに映る可能性もあります。