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国内パブリッククラウド市場は2029年に8.8兆円へ、生成AIとAIエージェントが成長を牽引

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IDC Japanが2025年2月20日発表した最新の市場予測によると、国内パブリッククラウドサービス市場は今後も高い成長を維持し、2029年には市場規模が8兆8,164億円に達すると見込まれています。

国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表

2024年の市場規模は4兆1,423億円であり、2024年から2029年の年間平均成長率(CAGR)は16.3%となる予測です。この成長を支えているのは、生成AIの活用拡大と、AIエージェントを活用した業務の自動化です。

生成AIがクラウド市場の拡大を後押し

2024年のパブリッククラウド市場は、生成AIの急速な普及によって大きく成長しました。クラウドサービスを利用する企業が増えた要因の一つとして、生成AIを活用したSaaS(Software as a Service)が本格的に導入され始めたことが挙げられます。企業は業務の効率化や生産性向上を目的に、翻訳やドキュメント要約、キーワード抽出、コンテンツ作成支援、プログラミング支援といった用途で生成AIを活用しています。

一方で、データ準備や業務プロセスの可視化・標準化を目的としたビジネス機能ユースケースは、まだ概念実証の段階にあります。先進的な企業が導入を進めているものの、データの統合やシステム間の連携が課題となっているため、実用化には一定の時間がかかると見られます。それでも、企業のデジタルビジネスを推進するための投資は増加傾向にあり、今後も生成AIを活用したクラウドサービスの市場拡大が期待されます。

AIエージェントの発展が業務の自動化を加速

2024年は、AIエージェントの技術開発が大きく進展した年でもありました。AIエージェントは、人間の代わりにタスクを自律的に判断し、外部のシステムと連携しながら業務を遂行する技術です。従来のAIアシスタントとは異なり、企業の業務データやアプリケーションと統合しながら、より高度な業務の自動化を実現します。

各クラウドベンダーは、AIエージェントの普及を後押しするために、さまざまな取り組みを進めています。開発環境の整備が進み、企業が自社のニーズに合ったAIエージェントを構築しやすくなっています。また、データプラットフォームの強化も進められており、企業がAIを活用しやすい環境が整いつつあります。導入支援サービスも充実しており、AIエージェントを活用した業務の自動化が今後さらに進むと予測されています。

AIエージェントの普及によって、企業は従来の業務プロセスを根本から見直し、より効率的な運用が可能になります。SaaS型のAIアシスタントとは異なり、企業ごとの業務環境に適したAIエージェントを構築できることが強みとなります。この技術がさらに発展することで、クラウド市場の成長が加速すると予測しています。

競争が激化するクラウド市場、ベンダーの戦略はどう変わるか

国内のパブリッククラウド市場は、普及が進むとともに、用途が広がりつつあります。従来はITインフラとしての役割が中心でしたが、現在では企業のデジタルビジネス推進を支える重要な基盤へと変化しています。クラウド市場の拡大に伴い、ベンダー間の競争も激化しています。

クラウドベンダー各社は、生成AIを活用した製品やサービスの開発を加速させています。また、AIを活用する企業向けのエコシステムの構築にも注力しています。企業がスムーズにAI技術を導入できるように支援することが求められており、業務変革を支援するサービスの強化が進められています。

IDC Japanのリサーチディレクターである松本聡氏は、「ベンダーはユーザー企業の業務変革を支援するとともに、『AI Everywhere』の時代における競争優位性を確立するために、アーリーアダプターへのアプローチ強化とコミュニティの活性化を図るべきである」と述べています。生成AIを活用する企業が増える中で、クラウドベンダーがどのような差別化戦略を打ち出すのかが今後の市場の行方を左右します。

今後の展望

国内パブリッククラウド市場は、今後も拡大を続けると予測されています。2025年以降、企業はAIエージェントを活用して業務の自動化を進めるとともに、生成AIを活用したクラウドサービスの導入を加速させると予測されます。

企業のデジタルシフトが進む中で、クラウドは単なるIT基盤ではなく、知能を持ったプラットフォームへと進化していきます。データの活用が進み、業務の効率化だけでなく、新たなビジネスモデルの創出へも期待されます。

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出展:IDC Japan 2025.2.20

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