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AI・半導体産業基盤強化フレーム

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2024年11月22日、日本政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定しました。

全体のイメージは以下のとおりです。

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出典:内閣府 2024.11.22

本対策の中で、私自身が注目しているのが「AI・半導体産業基盤強化フレーム」です。「AI・半導体産業基盤強化フレーム」は、次世代技術の研究開発と国内生産基盤の強化を通じて、日本の産業競争力を飛躍的に向上させることを目的としています。この計画では、2030年度までの10年間で10兆円超の公的支援を基盤に、官民合わせて50兆円を超える投資の実現を目指しています。

本フレームの中核となるのは、AIと半導体の技術革新を活用した経済成長、エネルギー効率の向上、そして経済安全保障の確立です。

今回は、AI・半導体産業基盤強化フレームに焦点をあてて、この記事では、本フレームの背景や概要、財源の確保方法、そして今後の展望などについて取り上げたいと思います。

「AI・半導体産業基盤強化フレーム」策定の背景

AIや半導体分野は、現代の産業競争力を支える重要な基盤であるだけでなく、エネルギー政策や経済安全保障とも密接に関連しています。世界的な技術競争が激化する中で、日本はかつて半導体産業で持っていた優位性を失いつつあり、国際市場での競争力回復が喫緊の課題となっています。

生成AIや次世代通信技術の進化により、AIおよび半導体の需要は急速に高まっています。この状況下で、日本は国内の研究開発能力を強化し、供給基盤を再構築することで、産業競争力を取り戻す必要があります。本フレームは、こうした課題を克服し、将来の経済成長を確固たるものにするための戦略的な位置づけとなっています。

公的支援の規模は10億円を超える規模に

このフレームの目玉は、政府による10兆円を超える公的支援です。この支援は、以下の2つの分野に焦点をあてています。

補助および委託金(6兆円規模)
次世代半導体の研究開発やパワー半導体の量産投資を支援するため、6兆円規模の補助金や委託金が投入される計画です。本支援は、国内の研究開発能力を向上させ、最先端技術の社会実装を加速させることを目的としています。

金融支援(4兆円以上)
次世代半導体量産投資やAI活用のための計算基盤整備を支援するため、4兆円以上の出資や債務保証が行われます。民間企業が大規模な投資を行う環境整備を進めていく方針です。

また、AIや半導体の活用がエネルギー効率向上に寄与することを踏まえ、エネルギー対策特別会計を活用して財源を管理するなど、エネルギー政策との連携が図られています。

10兆円超の財源確保は?

10兆円を超える公的支援を実現するため、政府は多様な財源確保策を講じていく方針です。

エネルギー対策特別会計の活用
情報処理の高度化によるエネルギー消費削減の効果を背景に、エネルギー対策特別会計から複数年度にわたり約2.2兆円を確保。また、必要に応じて特会債を発行し、一時的な資金需要にも対応

既存基金や執行残額の活用
過去に設けられた産業競争力強化のための基金や未執行の補助金を点検し、約1.6兆円を確保し、既存資源の効率的に活用

GX経済移行債の発行
データセンターの電力需要増加やグリーントランスフォーメーション(GX)の推進を背景に、GX経済移行債を発行して約2.2兆円を調達

財政投融資特別会計の活用
民間投資を支援するため、財政投融資特別会計からの出資や債務保証を通じて、必要な資金を提供

支援事業の条件と管理体制政府は、公的支援を効果的に実施するため、以下の条件を設定しています。

産業競争力と地方創生への寄与:支援事業は、幅広い産業の競争力強化や地方経済の活性化に資する事項

経済安全保障上の重要性:サプライチェーンにおいて戦略的に重要な技術や物資が対象

民間では実現困難な事業:公的支援がなければ実現不可能な中長期的な投資が対象

また、第三者有識者による進捗状況の検証、適切なマイルストーンの設定、支援の透明性確保などを通じて、事業の効果的な実行を進める方針です。

今後の展望

「AI・半導体産業基盤強化フレーム」による10兆円超の公的支援と50兆円超の官民投資によって、以下の成果を見込んでいます。

・国内での次世代半導体の生産基盤を確立
・地方への生産拠点を整備し、地域経済の振興と新たな雇用を創出
・次世代技術分野での優位性を確立し、グローバル市場での日本の競争力を向上
・AIや半導体技術の活用により、エネルギー消費の削減と持続可能な社会の実現

中でも次世代半導体の開発と国内製造能力の強化を通じて、北海道の千歳をはじめとする日本の半導体産業を復活させること大きな柱となるでしょう。

AI・半導体産業基盤強化フレーム」は、技術革新と経済成長を両立させ、地方経済の活性化や国際競争力の回復を図ることで、日本が世界の中で再び技術大国としての地位を確立することが期待されています。

一方で、この計画を成功させるためには、迅速かつ効率的な政策実行、官民連携の強化、そして専門人材の育成が不可欠です。国際的な技術標準をリードするための協力体制を築くことも求められます。

そして、10年間で10兆円超の公的支援と50兆円超の官民投資が、果たして日本の経済成長に寄与する投資につながるが、投資の事業規模が大きいだけに、その成果が問われることにもなるでしょう。

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