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デジタル庁が取り組む防災DX

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日本は地震、台風、洪水など、自然災害の頻度が高い国として知られています。災害時には迅速かつ適切な対応が求められ、国民の生命や財産を守るための基盤が重要となっています。

デジタル庁は、災害対応を強化するためにデジタル技術を活用した「防災DX」への取り組みを進めています。本記事では、デジタル庁が進める防災DXの具体的な施策について解説します。

防災分野の「データ連携基盤」の構築

災害時に住民が取るべき行動を適切にサポートするため、デジタル庁は防災分野での「データ連携基盤」の構築に取り組んでいます。

このデータ連携基盤は、国、地方自治体、そして民間企業が保有する災害情報をリアルタイムで共有するためのもので、災害時には各関係機関がスムーズに協力できる環境を提供していくとしています。

出典:デジタル庁 2024.9

防災分野での「データ連携基盤」の構築運用により、災害発生時に避難所の空き状況や被害情報が迅速に把握され、適切な対応が取られるようになるといいます。

たとえば、避難者のニーズに合わせた支援がリアルタイムで提供されるほか、住民が利用する防災アプリと連携し、ワンスオンリー(情報の一度入力)の実現を目指しています。

この取り組みは、被害者が複数のアプリで同じ情報を入力する手間を省き、効率的な支援を受けられる仕組みを構築するものです。2024年度からはプロトタイプが検証され、さらに実用化に向けての進展を視野にいれています。

自治体における防災アプリ・サービス調達の迅速化・円滑化

災害時に役立つアプリやサービスを素早く導入するため、デジタル庁は「防災DXサービスカタログ」や「防災DXサービスマップ」を整備し、自治体が優れた防災アプリを容易に検索し、調達できる環境を整えていくとしています。これにより、自治体は時間をかけずに最適なサービスを見つけ、導入することができるようになるといいます。

出典:デジタル庁 2024.9

サービスカタログには、防災計画の策定支援や避難所運営支援など、防災サービスが登録されており、自治体は状況に応じて必要なサービスを選択できる仕組みが整っています。

また、各サービスの機能や導入実績が明確に示されており、自治体がスムーズに意思決定を行えるような仕組みも含まれています。今後は、さらに多くのサービスがカタログに追加される予定で、地方自治体の災害対応能力が向上することが期待されています。

デジタル技術を用いた災害対応の高度化に関する実証事業

デジタル庁は、デジタル技術を活用した災害対応の高度化を目指し、さまざまな実証事業を展開しています。特に注目されるのが、位置情報やマイナンバーカードを活用した災害対応の実証事業です。これにより、災害時の救助活動や被害者支援が効率的に行われることが期待されています。

出典:デジタル庁 2024.9

たとえば、位置情報を活用したスマートフォンアプリを用いることで、避難者の位置をリアルタイムで把握し、救助活動を迅速かつ的確に行うことが可能になります。さらに、マイナンバーカードを活用した避難所運営のデジタル化実証実験では、避難者の受付や安否確認が効率的に行われ、災害時の混乱を最小限に抑えることができるとされています。

このような技術の導入により、災害時の行政業務の負担軽減が図られ、被害者支援がより迅速かつ効果的に行われることが期待されます。

「防災DX官民共創協議会」と連携した防災DX施策の展開

防災DXをさらに推進するために、デジタル庁は2022年に発足した「防災DX官民共創協議会」と密接に連携しています。この協議会は、官民が協力して防災DXの課題を解決し、エコシステムの形成を目指すものです。2024年8月時点で、この協議会には自治体や民間企業など計469の団体が参画しており、各団体がそれぞれの専門分野で協力し、防災DXの実現に向けた議論が行われています。

出典:デジタル庁 2024.9

この協議会では、防災分野におけるデータ連携のあり方や、各フェーズで必要となる技術的課題の解決に向けた提案が行われています。官民が一体となって、効果的な防災DXを実現するための市場形成や技術開発が進められ、今後の災害対応において大きな役割を果たすことが期待されています。

今後の展望

デジタル庁の防災DXへの取り組みは、今後もさらに拡大していくと予想されます。2024年度にはデータ連携基盤のプロトタイプが実証され、実用化に向けたさらなる進展が期待されています。また、自治体との連携を深めることで、防災アプリやサービスの導入が加速し、住民の安全を確保するための体制が強化されることが期待されます。

官民共創による防災DXのエコシステムが形成されることで、より多くの技術革新が生まれ、災害対応の迅速化と効率化が一層進むと考えられます。防災DXは今後の日本の災害対応を変革し、国民の安全を守るための重要な取組の一つとなることが期待されています。

現在、能登豪雨など、現地では大変な状況となっています。デジタル庁のこれらの防災DXの取組が、現地にとって役立つ取組であるものなのか、検証してくことも重要となっていくでしょう。

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