AIの導入により2030年までに19.9兆ドル価値が生まれる
IDCは2024年9月17日、調査報告書「The Global Impact of Artificial Intelligence on the Economy and Jobs」を公表しました。
IDCに調査によると、AIの導入により、2030年までに世界経済に累積で19.9兆ドルの価値が生まれ、世界GDPの3.5%を押し上げると予測しています。
企業は、AIを活用して業務プロセスを最適化し、消費者や企業向けに新しい製品やサービスを提供することで、ビジネスの革新と成長を実現していくことが期待されています。
1ドルのAI関連投資が4.6ドルの価値を創出
IDCの調査によると、2030年にはAI関連ソリューションやサービスに企業が投じる1ドルごとに、経済全体で4.6ドルの価値が創出されると予測しています。AIの導入が加速することで、AIソリューション提供者やサプライチェーン全体にわたる収益増加につながることが背景にあります。
AIは2024年の時点で、すでに発展段階に入り、多くの企業が運営コストの最適化や業務効率化に向けてAIに積極的に投資しています。この流れが進むと、新たなビジネスチャンスが生まれ、業界全体の競争環境が大きく変化していくとIDCでは予測しています。
新たな職種が登場し、これまでの職種も進化
AIの普及により、雇用市場にも大きな変革をもたらすと予測しています。IDCの「Future of Work Employees Survey」によると、従業員の48%が今後2年間で業務の一部がAIによって自動化されると予測しており、15%はその大部分が自動化されると見ています。一方、3%の従業員が、AIによって自身の仕事が完全に取って代わられると考えています。
AI関連のテクノロジーの進展に伴い、新たな職種が登場することも予測しています。例えば、AI倫理スペシャリストやAIプロンプトエンジニアといった役職が企業内で重要な役割を担うようになると予測しています。また、人間の感情や社会的スキルが求められる職業、例えば看護や教育分野では、AIが補助的な役割を果たすことによって、これらの職務が強化されると予測しています。
IDCのリック・ヴィラーズ氏は、
AIは仕事を奪うのではなく、むしろAIをうまく活用できるスキルが、今後の職業的成功において重要になる
と指摘しています。
AIを活用できる人と、そうでない人との格差が広がっていく可能性はあるでしょう。
AIによる経済的影響モデル
IDCは、AIが経済に与える影響を評価するため、以下の主要な独自の経済影響分析手法を用いています。
直接的影響:AIソリューションやサービスの提供者が製品を販売することで生み出す収益
間接的影響:AIソリューションを提供する企業のサプライチェーンや、AI技術を採用する企業が得る生産性向上や新しい収益源。供給側と需要側双方の効果を評価し、AIの採用が地域や国に与える経済的効果を分析
誘発的影響:AI導入に伴う収益増加が、従業員の所得向上を通じて消費活動を促進し、さらなる経済効果を創出
IDCのカラ・ラ・クローチ氏は、
経済影響モデルは、企業や政府がAIへの投資が経済に与える短期的・中期的な効果を評価し、効果的な意思決定を行うために重要なツールである
と述べています。
AIは今後、直接から間接、そして誘発的まで含めて、さまざまな形で経済や産業への影響を与えていくことが想定されます。
今後の展望
AIは単なる業務改善のためのツールにとどまらず、これまでのビジネスモデルを再構築し、新たな市場や収益機会を創造する新たなアプローチとなっていくでしょう。
AIを戦略的に活用できる企業は競争優位性を確保するとともに、グローバル市場での事業の成功にもつなげていくことができるでしょう。
AIの進展に伴い、新たな職種やスキルも求められるようになります。AI技術を駆使する能力を持った人材の需要が高まる一方で、感情や社会的スキルが必要な職務はAIの進化に補完される形でこれまで以上に付加価値が高まっていく可能性があります。
企業や政府がAIの潜在的なメリットとデメリットをしっかりと見極め、社会や産業全体においてAIの効果を最大化していくかが、今後の重要なアプローチの一つとなっていくでしょう。