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AIの成長が電力需要を押し上げる中のデータセンターの脱炭素化

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ABI Researchは2024年8月15日、「世界のデータセンターに関する調査結果」を公表しました。

Data center operators are adopting sustainable strategies and technologies to reduce carbon emissions and mitigate climate change

デジタル習慣の変化やクラウドサービスの普及、AI(人工知能)やML(機械学習)、さらには暗号通貨のトレンドにより、データセンター(DC)の需要は年々増加しています。ABIリサーチによると、2030年までにデータセンターの数は2万4,000拠点を超え、年平均成長率(CAGR)は12%に達する見込みです。

現在、企業はプロセスの最適化を目指し、生成AIの活用に積極的です。その一方、AIアプリケーションやトレーニングモデルには多大な電力が必要であり、データセンター全体の電力消費の10~20%を占めています。

この急速な需要の増加は、2030年までに2,477テラワット時(TWh)に達すると予測され、電力網に大きな負担をかけることが懸念されています。

ABIリサーチのアナリストは、

データセンター内で最もエネルギーを消費するのは、高性能GPUによる計算処理と冷却であり、全エネルギー需要の80%を占める

と述べています。

これらの問題に対処するため、データセンター業界は新技術の導入に積極的です。特に、既存のインフラに対して新たな技術を適用し、持続可能な計算処理を推進することが、電力需要の抑制や炭素排出の削減に不可欠となっています。

持続可能なデジタルトランスフォーメーションに向けて、データセンターの「グリーン化」は気候変動対策の中心に位置しています。データセンターの環境負荷を削減することにより、国は温室効果ガス排出を抑え、持続可能性目標を達成できます。

ABIリサーチのアナリストは、

政府がグリーンビルディング基準を設け、再生可能エネルギーの利用を促進し、冷却剤の規制を行うことで、持続可能なデータセンターの実現が加速する

と述べています。

一部のデータセンター運営者は、電力網の安定化やESG(環境・社会・ガバナンス)パフォーマンスの向上、炭素フットプリントの削減に取り組んでいますが、これらの取り組みは「ネットゼロ」に到達するための途中段階にすぎません。

ABIリサーチのアナリストは、

データセンターのネットゼロ達成は最終目的ではなく、常に進化し続けるべきプロセスです。持続可能なビジネスフレームワークを活用し、気候目標に適応しながら、収益性を維持することが重要です

と指摘しています。

新技術の導入例としては、オンサイトマイクログリッドや負荷シフト、効率的な電力・空気管理技術、インフラの仮想化、資産ライフサイクル管理、熱回収、責任ある計算処理などを挙げています。

Google、Microsoft、Intel、Meta、Amazonといったハイパースケーラーは、Equinix、シュナイダーエレクトリック、ジョンソンコントロールズ、ダンフォス、シーメンスといったデータセンターおよび電力網運営者と協力し、持続可能な運営の実現に向けた取り組みを進めています。

これらの取り組みは、単なる環境配慮だけでなく、長期的にはコスト削減や競争力の向上にも寄与するものです。企業にとって、持続可能なデータセンターはもはや選択肢ではなく、成長と利益を確保するための戦略的な必須要素となっています。

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