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企業における生成AIの利用状況 〜「DX動向2024」から

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IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は2024年6月27日、「DX動向2024」を公表しました。

「DX動向2024」進む取組、求められる成果と変革 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理推進機構(IPA)の「「DX動向2024」進む取組、求められる成果と変革」に関する情報です。
本動向では、以下の5つから構成されています。

1.DX取組と成果の状況
2.DX実現に向けた技術利活用の状況
3.DXを推進する人材
4.DX関連施策の認知・活用状況
5.「企業等におけるDX推進状況等調査分析」概要

1.DX取組と成果の状況」では、DX取組状況や取組による成果の状況の他、DXの成果を把握するための評価やDX推進の体制について述べています。

2.DXを実現するための技術利活用の状況」では、DXを推進するために必要な技術について、データの利活用、AI・生成AIの導入・利活用、ITシステムの内製化やレガシーシステム刷新の状況をそれぞれの課題も含め説明しています。

3.DXを推進する人材」では、人材の過不足状況、人材育成方法と課題に加え、企業文化・風土について述べています。

このDX実現に向けた技術利活用の状況の中から、生成AIに焦点をあててとりあげたいと思います。

生成AIの導入状況

生成AIの導入状況について尋ねた結果では、導入または検討・予定している企業の割合(「導入している」「現在、試験利用をしている」「利用に向けて検討を進めている」「これから検討をする予定である」の回答割合の合計)が半数を超えており、企業における生成AIの導入が本格化しつつあることがうかがえます。

また、従業員規模別でみると、「1,001人以上」では導入または検討・予定している企業の割合が93.2%であり、大半の企業が生成AIの導入に関心を持っています。

また、「導入している」「現在、試験利用をしている」の回答割合の合計は71.7%である一方で、「101人以上300人以下」「301人以上1,000人以下」では、3割前後、「100人以下」では13.4%と、従業員規模により大きな差が生じています。

生産性向上が課題である中小企業が生成AIの導入や試験利用に取り組めていないことが分かります。

生成AIの導入状況(従業員規模別) 出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

生成AIの導入状況について尋ねた結果を業種別では、情報通信産業や製造業等が多く、流通・小売業とサービス業は他業種と比べて導入がやや遅れています。

生成AIの導入状況(業種別)   出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

生成AIの導入状況をDX取組状況別では、生成AIを「導入している」「現在、試験利用をしている」「利用に向けて検討を進めている」の回答割合の合計は、DXに取り組んでいる企業が57.5%、DXに取り組んでいない企業は8.7%と大きな差となっています。

生成AIの導入状況(DX取組状況別)   出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

生成AIの導入状況をデータ利活用状況別では、前者で利用している企業が最も多く、データ活用している企業ほど生成AIの導入も進んでいます。

生成AIの導入状況(データ利活用状況別)   出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

生成AIの利用内容と目的

生成AIをどのように利用しているかを尋ねた結果では、入力情報の漏えいが発生しない方法を選択している企業が多くなっています。また、ルール・ガイドラインを設けた上で利用するという企業も4割にのぼっています。

企業が生成AIを利用するには、ルールやガイドラインを設けた上で、入力情報が漏洩しない方法で、活用するケースが一般的に見受けられます。

生成AIの利用方法    出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

生成AIを導入する目的について尋ねた結果では、ドキュメント作成・編集・翻訳が最も多くなっていますが、ブレーンストーミングやアイデア出し、情報収集、プログラミングなど、その他さまざまな目的で活用されています。

生成AIを導入する目的   出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

生成AIを業務で活用する上での課題

生成AIを業務で活用する上での課題について尋ねた結果では、「経営層の承認が得られない」の回答率が5.5%、「有料サービスの予算を確保できない」が15.7%と比較的少なく、企業が業務へ生成AIを取り入れることへの抵抗感は低いと推察されます。

一方で、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」の回答率が47.0%、「誤った回答を信じて業務に利用してしまう」が41.6%、「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」が40.4%と高くなっています。

生成AIを業務に適用する段階に入ってきているため、これらのような実導入に際した問題に直面し始めていると考えられます。

生成AIを業務で活用する上での課題    出典:IPA DX動向2024 2024.6.27

今後の展望

IPAの調査からみると、1001名以上の企業においても役割3割と必ずしも多くはなく、企業の規模や業界・業種をみても普及・浸透している段階をは言えにくい状況です。また、DXに取り組んでいる企業ほど、生成AIの利用率が高く、DXに取り組んでいるのが前提で、そのプロセスの中で生成AIを活用していくのが適切ではないかと考えられます。

生成AIでは、ドキュメント作成・編集・翻訳から、ブレーンストーミングやアイデア出し、情報収集など、さまざまな目的で利用されていますが、データ処理・分析など高度な利用している企業は、限定的のようにみえています。

その一方で、「生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している」の回答率が47.0%、「誤った回答を信じて業務に利用してしまう」が41.6%などが上位に入っており、生成AIの活用も試行錯誤が続いているという印象です。

生成AIの活用は正しく恐れつつ、積極的に活用し、さらには、企業の業務改善に加えて、新しいビジネスの創造につなげていくことが、これからの企業には求められていくでしょう。

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