リープフロッグ型発展と支えるデジタル技術を活用したサービス ~ 令和3年版情報通信白書
総務省は2021年7月30日、「令和3年版情報通信白書」を公表しました。何回かに分けて、とりあげたいと思いますが、今回は、デジタル経済の進展とICT市場の動向の中から、リープフロッグ型発展と支えるデジタル技術を活用したサービスについて、とりあげたいと思います。
新しいデジタル技術やデジタルサービスの登場等を背景に、世界各国では急速にデジタル化が進展していますが、先進国のみならず、新興国においても、新しいデジタル技術やデジタルサービスが急速に普及し、リープフロッグと呼ばれる一足飛びの発展が実現するようになっています。
リープブロックとは、経済や社会で遅れを取っている新興国が先進国を超えた発展を見せる現象で、以下のような3つのタイプで分類されます。
①同じ経路を短期間で進む「パスフロー」
②特定の段階をスキップして短縮する「ステージスキップ」
③新たな技術で道筋をつくる「パス創造」
新興国でリープフロッグ型の発展が生じる背景としては、社会インフラの未成熟という社会的課題(ニーズ)と、スマートフォンやインターネットの普及(シーズ)の2つの側面があります。
社会的課題としては、例えば、医療体制が不十分、銀行口座の保有率が低い、交通インフラが十分に整備されていないといった問題があります。こうした課題に対し、医師数や銀行口座開設数の大幅な増加や、交通インフラを網羅的に整備することが解決手段となるが、このような対応には必要な負担も多く、それらの環境整備にも時間もかかります。
他方、新興国においては、平均所得が増加するとともに、スマートフォンやインターネットサービスが低廉化しており、より多様な国民がスマートフォンを介したインターネットサービスを利用できるように
なっています。
こうした2つの要素が組み合わさること等を背景として、伝統的な医療、金融や交通等のサービスにこだわらず、社会インフラが未成熟であっても利用できる新たなデジタルサービスが新興国で出現してお
り、こうした生活を一変させる可能性を有するサービスの利用者は爆発的に増加しているという点をあげています。
リープフロッグ型発展のイメージ
出典:令和3年版情報通信白書 2021.7.30
リープフロッグの例となるデジタル技術を活用したサービスとしては、各国で普及するスーパーアプリ、ケニアにおけるモバイルマネーサービス、ルワンダにおける医療分野でのドローンの活用(血液のドローン配送)、インドにおける生体認証を活用した身分証明システムなどをあげています。
大きくは①スーパーアプリ型と、②先端技術活用型に分類しています。
①スーパーアプリ型は、多種多様なアプリ群(メッセージング、SNS、決済、送金、タクシー配車、飛行機・ホテル予約、電子商取引など)を統合した一つのアプリであり、特に、人々の生活を支える基盤として機能する。1つのアプリ上で多様な生活サービスを提供することで、生活を効率化・高度化することができるとしています。
②先端技術活用型は、AI、ドローン、ブロックチェーン、IoTなどの先端技術を活用したサービスであり、特に産業、分野等(ドメイン)を活性化することが期待されるとしています。
リープフロッグ型の発展を支えるデジタル技術を活用したサービス
出典:令和3年版情報通信白書 2021.7.30
リープフロッグ型の発展を支えるデジタル技術の中でも、生活を大きく変える可能性があるスーパーアプリについても取り上げています。
スーパーアプリの特徴は、複数の機能を持つ1つのアプリであり、多くの場合は特定企業の決済システムを利用する。スーパーアプリ内の機能は、ユースケースによって様々であるが、生活者向けのサー
ビスであることから、生活で必要となる機能を内包することが一般的であるとして、以下のとおり、機能の一例をまとめています。
スーパーアプリの機能の一例
出典:令和3年版情報通信白書 2021.7.30