企業のIT予算に影響を及ぼしている2大要因は、データ/アナリティクスとコスト最適化
調査会社のガートナーは2019年11月7日、2023年まで「日本のIT支出の予測に関する市場予測」を発表しました。
本調査によると、2023年まで日本のIT支出は年平均1.9%増で推移し 29兆円に達すると予測しています。
日本のIT支出は、消費税増税対応やOSのサポート終了対応、働き方改革に伴う業務効率化対応などを背景に、2019年の前年比成長率が3.0%に達する見通しです。
2020年には前年の反動から0.9%にとどまりますが、2023年まで年平均1.9%増で推移し、29兆円に達するものと予測しています。業種別で最も成長が見込まれるのは金融で、同業種の年平均成長率は2.4%と予測さしています。これに続くのが運輸業であり、年平均成長率は2.2%と見込んでいます。
ガートナーでは、金融業界は、マイナス金利による収益圧迫により業務コスト削減に向けた投資が急務となっているほか、関心の高まるFintechへの規制緩和による追い風もあり、サービスの高度化や顧客満足度向上など競争力強化のためのIT支出が増加しています。
一方、運輸業界においては、取扱荷量が拡大する一方で深刻化する人材不足と過重労働により、省力化・自動化・安全対策のためのIT支出が見込まれているとしています。
2019年の世界の業種別IT支出では、金融業界の比率が最も高く全体の25%を占めると見積もっています。日本で最も多くを占める製造業は、その比率は24%と金融業界の22%を上回っており、デジタル化の進展とともに、事業モデルが製品の売切り型から課題解決型へと変化しつつあり、ライフサイクル全体で収益を生み出すスマート製品へのシフトがIT支出の促進要因となっているとしています。
しかし一方で、昨今の貿易摩擦や新興国における製品需要の鈍化、原材料費・運送費の高騰など、不透明な経営環境の中、IT支出に対しては慎重な姿勢も見られ、2023年までの年平均成長率は1.4%と底堅く推移する見通しとしています。
出所:ガートナー
ガートナーでは、企業における全体的なIT予算および支出に影響を及ぼしている2大要因は、データ/アナリティクスとコスト最適化であると、みています。
デジタル・ビジネスの拡大に伴い、企業は増え続けるデータ・ストレージとコンピューティングの需要を抱えており、その需要は業種ごとに大きく異なります。モノのインターネット (IoT) への需要が高まるにつれ、データは顧客データや製品データだけでなく、IoTを構成する多くのセンサ・データも求められるようになるとしています。
また、コスト最適化は、多くの企業にとって、自社や属する業界の経済状況に左右される重要なイニシアティブとし、通常、長期的なコスト削減を実現するにはテクノロジとサービスへの初期投資が必要となるとしています。そのためには、自動化やクラウド・インフラストラクチャに関連する取り組み、さらにはコアとなるアプリケーションの全面的な見直しの必要性を示しています。
ガートナーでは、日本市場におけるデジタル関連テクノロジへの取り組みは、まだ限られた領域や業種にとどまっているものの、破壊的な製品やサービスの出現、競争環境や社会構造の変化によって、一気に導入が進む可能性があるとしています。そのため、ITユーザーもベンダーも共に、各業種における規制緩和や人材の充足度合い、代替技術の登場や新規参入によるゲーム・チェンジなど、変化の兆候を見逃さないことの必要性を示しています。