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東日本大震災直後の自治体のソーシャルメディアの動きを振り返る

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2011年3月11日午後2時46分、東北・関東地方を中心に巨大な地震が襲った。ツイッターでは、被災に関わる安否確認や情報共有などの情報が飛び飛び交い、緊急事態に直面した中で、少しでも状況を好転させるため知恵を出し、励まし合う姿が見られた。ツイッターでは、テレビやラジオの情報を凌ぐ情報が、リアムタイムで流れていった。多くの被災地が被害にあい、非常に時にマスメディアがカバーしきれない情報を提供するプラットフォームとして、有益な情報は多くの人によって拡散されていった。

米ツイッターは2011年6月29日、東日本大震災の際の世界でのツイートの流れを視覚化した動画を公開。大震災の際、1秒当たりのツイート数は5回にわたって5,000件を超え、日本からのツイート数は500%増加したという。

スクリーンショット 2019-03-10 6.17.29.png

ピンクが日本のユーザーへのダイレクト返信、黄色が日本からのダイレクトリプライを表している。
出所:Flicker http://www.flickr.com/photos/twitteroffice/5885172082/

今回の被災により、ソーシャルメディアは電話やメールなどと同じように情報共有の手段の一つとして認知されるようになるようになった。一方、デモ情報などで情報が錯綜する状況も見られ、ソーシャルメディアからの情報の信頼性を疑問視する声も聞かれた。そういった中で貴重な情報源としてソーシャルメディア全体の信頼性に寄与したのが被災地から発信される自治体からの情報だった。

被災現場から情報を発信する自治体

地震発生後、被災地の自治体からはツイッターを使い、現地の被災状況が次々と発信された。被災地の自治体を中心に、震災直後のツイッターによる情報発信の取り組みを紹介する。

震災発生時に被災地の状況を発信した宮城県気仙沼市危機管理課

宮城県気仙沼市危機管理課(@bosai_kesennuma)は地震発生から9分後の2時55分、「宮城県沿岸に大津波警報高台に避難」と、被災地の自治体では、最も早く情報ツイッターから情報を発信した。

出所: @bosai_kesennuma http://twitter.com/bosai_kesennuma 2011.3.11

気仙沼市役所では地震直後に停電となり、残された通信手段は携帯電話のみとなった。危機管理課の担当者の伊東秋広氏はパソコンと携帯電話を使い現場の被災状況の情報の発信を始めた。
 津波が市役所の庁舎1階にも押し寄せたため、4階の駐車場まで駆け上がり、パソコンと携帯電話をセット。津波の状況を目で確認し、防災無線を聞き、津波の警報や避難を呼びかける情報を発信し続けた。気仙沼市の携帯電話の基地局は地域の高台にあっため、停電中も非常用電源を使い数時間程度の通信ができた。

16分後の3時2分には、

「大津波警報発令 高台へ避難」

その後数分おきに被災現場からは刻々と変化する被災状況と大津波と市内各地の火事により街が壊滅的なっている情報がリアルタイムに発信された。地震発生直後から22時37分までの約8時間、携帯の基地局の予備電源が切れつながらなくなるまで、約60のツイートが投稿された。

気仙沼市の担当者がツイッターで発信した現場の被災状況は、リツイートにより拡散された。震災翌日の12日午前1時ごろには、NHKにその取り組みが放送された。解説者が「気仙沼市危機管理課がツイッターで情報を発信しています。」と、気仙沼市がツイッターで発信した時間ごとのツイート一覧を見せ、現場の切迫した被災状況が伝えられた。

気仙沼市は、震災後の津波により、湾岸の船舶用燃料タンクが流され、水上に流れでた大量の油が、押し寄せた津波とともに市街地を包み込み、引火によって大規模な火災が発生した。NHKの空からの中継でもその火災模様が放送され、街はまるで火の海となっている状況が伝えられた。
 気仙沼市の被災現場の状況が全くわからない状況で情報が混乱する中で、気仙沼市危機管理課の担当者が書き込むツイッターからの情報から、気仙沼市の被災状況を知ることができた。

ツイッターによる情報発信は、3月12日、13日の二日間は停電などで使えず空白期間があったものの、公式ホームページに変わってツイッターから発信される現場からの被災状況や避難所などの案内は、貴重な情報源となった。

気仙沼市危機管理課では、2010年7月2日に防災情報などの発信を目的にツイッターアカウントを開設し、日頃から津波情報などを中心に災害情報を発信し続けていた。


※震災直後の宮城県気仙沼市危機管理課 @bosai_kesennuma の発信情報

出所:https://twitter.com/bosai_kesennuma

宮城県沿岸に大津波警報高台に避難
9 min after (Fri Mar 11 2011 14:55:18 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報発令 高台へ避難
16 min after (Fri Mar 11 2011 15:02:21 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波注意報予想6mすぐに高台へ避難
17 min after (Fri Mar 11 2011 15:03:10 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報 予想される津波高6m すぐに高台へ避難
18 min after (Fri Mar 11 2011 15:04:37 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報6m すぐに高台へ避難
19 min after (Fri Mar 11 2011 15:05:25 GMT+0900 (Japan Standard Time))

宮城県沿岸に大津波警報すぐに高台へ避難
31 min after (Fri Mar 11 2011 15:17:18 GMT+0900 (Japan Standard Time))

震が頻発しています 大津波警報発令すぐに避難
32 min after (Fri Mar 11 2011 15:18:08 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報 すぐに高台へ避難
42 min after (Fri Mar 11 2011 15:28:05 GMT+0900 (Japan Standard Time))

津波が到達しています すぐに高台へ避難
45 min after (Fri Mar 11 2011 15:31:33 GMT+0900 (Japan Standard Time))

津波は八日町まで来ています すぐに避難
52 min after (Fri Mar 11 2011 15:38:04 GMT+0900 (Japan Standard Time))

県知事との情報連携など複数のソーシャルメディアを活用した岩手県

岩手県広報広聴課(@pref_iwate)は、地震発生から17分後の3時3分、

「県内で大きな地震が発生しました。津波警報(大津波)が出ていますので、沿岸部の方は注意してください。」

とツイート。庁内ではネットワークがつながらず、サーバーもダウンしている状況も書き込まれた。3時間後には

「現在、災害対策本部会議を行っています。追加情報が入りましたらお知らせします。」

と災害対策本部で対応が進められている状況が伝えられた。

岩手県知事の達増拓也氏(@tassotakuya)は、3月11日の17時40分、

「地震発生直後に岩手県災害対策本部が設置されました。午後6時に次の本部員会議が開かれ、状況把握の後、知事の記者会見を行う予定です。極めて大きな災害ですが、皆で力を合わせ、少しでも被害を少なくしていきましょう。」

と呼びかけ、その後も、停電状況、陸上自衛隊や消防隊の救助、緊急支援物資の搬送や通行規制などの情報を発信した。岩手県広報広聴課では、岩手県知事の達増拓也氏とツイッター上でも連携を密にし、首長の迅速な判断のもと対応が進められていた。

達増拓也知事は3月13日午前9時に、

「見たり書いたりできる機会が取れないことも多いのですが、県の広報広聴担当が私宛のツイッターを見て、災害対策関係の情報は被害対策本部に伝えるようにしていますので、皆さんよろしくお願いします。」

と書き込んだ。被災地では、電話やメールがつながりにくい状況の中で、ツイッターを活用し、首長と災害対策本部との間で指示と情報共有も進められていた。

岩手県の広聴広報課の担当者は産経新聞の取材に対して「手軽に使われているツイッターではホームページより広範囲に情報を伝えられる。口コミで被災者に届けばいい」と話し、ツイッターによる情報の伝播力が被災地まで届くこと願い、情報発信を続けていた。

さらに、岩手県広報広聴課では、ツイッターだけでなくフェイスブックページも開設しており、被災状況、避難所、鉄道の運行状況などの情報を発信するなど、ツイッターよりも詳細な情報が発信されていた。フェイスブック上では、被災地を応援するメッセージや、避難所の詳細な情報などを求める声、被災地の関係者からの安否確認の声など、多くのコメントが書き込まれた。県が発信する被害状況などをボランティアが自発的に英語や韓国などに翻訳した書き込みも見られた。

フェイスブックの場合は、ツイッターの140文字のように文字数が限定されないため、より詳細な被災地からの情報の発信されていた。フェイスブックの場合は、原則実名で登録しているため、デマ情報などはなくユーザーからの生の声や情報共有などから被災地の状況を正しく可視化することができた。 

岩手県は、ツイッターでは被災地からの被害情報などをクチコミで拡散。そして、フェイスブックではより詳細な情報が書き込まれ、実名ユーザーによる様々な情報の書き込みなどにより、被災地のより詳細でリアルな情報を確認することができた。さらには、ツイッターの伝播力とフェイスブックの状況の可視化が相乗効果を生み出し、首長のツイッターとの連携も加わり、より多くの情報が被災地及び全国に届けられた。

岩手県は震災前からソーシャルメディアの活用において力をいれていた。2010年2月1日に達増拓也知事がツイッターアカウントを開設し、「インターネット知事室」とリンクさせ、県の食や観光などに関する情報を発信。2010年4月16日には広報広聴課がツイッターアカウントを開設、2011年にはフェイスブックを開設している。岩手県はある調査で知名度などが低いという結果が出ており、ソーシャルメディアを通じて地域の食や観光の案内など地域ブランドの向上などに活用していた。こういった平常時の活用が、知事との連携や的確な情報発信など、震災にも力を発揮できたといえる。


※震災直後の岩手県広報広聴課 @pref_iwate の発信情報

県内で大きな地震が発生しました。津波警報(大津波)が出ていますので、沿岸部の方は注意してください。
17 min after (Fri Mar 11 2011 15:03:05 GMT+0900 (Japan Standard Time))

現在庁内のネットワークが落ちていますので、詳しいことは後ほどご報告します。
19 min after (Fri Mar 11 2011 15:05:29 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大きな余震も続いています。
23 min after (Fri Mar 11 2011 15:09:02 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大きな余震が続いています。警戒してください。
25 min after (Fri Mar 11 2011 15:11:08 GMT+0900 (Japan Standard Time))

県内に津波が到達しています。沿岸部の方は警戒してください。
30 min after (Fri Mar 11 2011 15:16:32 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報が出ています。海岸付近には近づかないでください。
34 min after (Fri Mar 11 2011 15:20:51 GMT+0900 (Japan Standard Time))

庁内のサーバーもダウンしています。これから暗くなりますが、信号も消えていますので、お車の方、歩行者の方も十分注意して通行ください。
2 hour after (Fri Mar 11 2011 16:49:54 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報も継続されています。午後7時すぎに満潮をむかえますので、海岸付近の方は引き続き警戒してください。
2 hour after (Fri Mar 11 2011 16:52:54 GMT+0900 (Japan Standard Time))

3月11日14時46分、県内で強い地震が発生し、大きな被害が出ています。現在も余震が続いています。鉄道は不通。全域で停電。沿岸部では避難を継続してください。火の元にも注意してください。
3 hour after (Fri Mar 11 2011 17:59:45 GMT+0900 (Japan Standard Time))

現在、災害対策本部会議を行っています。追加情報が入りましたらお知らせします。
3 hour after (Fri Mar 11 2011 18:15:26 GMT+0900 (Japan Standard Time))

液状化現象などの対応にソーシャルメディアを活用した千葉県浦安市

千葉県浦安市(@urayasu_koho)は、震災発生13分後の2時59分、

ただ今、宮城県北部で震度7の地震がありました。浦安市でも震度5弱となっています。千葉県内では津波警報、注意報が出ていますので海岸沿いには近づかないでください。また、交通機関などへの影響も懸念されますので、今後、最新の情報にご注意ください。

とツイート。その後対策本部の設置や避難所などが案内された。

浦安市では、震災により道路などが激しく波打つなどの液状化現象がおきていた。浦安市は、震災翌日の3月12日、

現在、市内のいたるところで液状化と思われる現象が起こっており、道路上に地中から噴出した水混じりの土砂がたい積しています。 道路は、舗装面やマンホールなどの隆起や、縁石の倒壊があり、危険な状況ですので、通行の際は十分ご注意ください。

と注意を呼びかけた。

被害を受けたライフラインの中でも下水道が大きな被害を受け、最大約3万3千世帯の下水道が不通となった。浦安市では、ツイッターなどを通じて液状化による断水状況や給水所の案内を発信した。

飲料水300トンを積んだ海上自衛隊による水の運搬船がまもなく到着する見込みです。今後、順次、市内の給水所へ運搬します。

と、海上自衛隊の水の運搬船による大規模な給水準備が進められていることが伝えられた。

浦安市では、液状化への対応により様々な情報が発信されている。たとえば、4月10日には、

市では、災害情報をホームページ、重要なお知らせメールサービス、Twitterなどでお知らせしています。インターネットを使えない環境で、情報を入手できない方が近所にいましたら情報を伝えていただきたいと思います。災害時は地域による助け合いも大変重要です。ご理解ご協力をお願いします。

と、積極的にホームページやメルマガ、そしてツイッターで情報発信をし、その情報を受け取った人たちによる地域への情報の伝達と助け合い呼びかけた。

浦安市のように、液状化現象により刻々と状況が変化し、水道の復旧情報などの生活支援の情報が必要となる中、ツイッターはリアルタイムに情報を発信することができるため、市民に迅速に適切な情報を届けることができた。また、ツイッターを読んだ住民がクチコミで他の市民に連絡するケースも見られ、情報を正しく拡散させていくことができた。


※震災直後の千葉県浦安市 @urayasu_koho の発信情報

ただ今、宮城県北部で震度7の地震がありました。浦安市でも震度5弱となっています。千葉県内では津波警報、注意報 が出ていますので海岸沿いには近づかないでください。また、交通機関などへの影響も懸念されますので、今後、最新の情報にご注意ください。 #urayasu
13 min after (Fri Mar 11 2011 14:59:56 GMT+0900 (Japan Standard Time))

現在、災害対策本部を設置し、状況の把握に努めています。市民の皆様は余震に注意してください。#urayasu
2 hour after (Fri Mar 11 2011 16:50:32 GMT+0900 (Japan Standard Time))

避難所の開設を準備中です。#urayasu
2 hour after (Fri Mar 11 2011 17:03:54 GMT+0900 (Japan Standard Time))

市内小中学校の避難所は全て開設しました!#urayasu
5 hour after (Fri Mar 11 2011 20:13:31 GMT+0900 (Japan Standard Time))

※震災直後の青森県庁 @AomoriPref の発信情報

強い地震がありました。大津波警報が出ている地域もありますので注意してください
11 min after (Fri Mar 11 2011 14:57:47 GMT+0900 (Japan Standard Time))

強い余震が続いています。十分に注意してください。
26 min after (Fri Mar 11 2011 15:12:28 GMT+0900 (Japan Standard Time)

県内停電の箇所があります。県庁も停電しています。信号が止まっている場所では通行に注意してください。
32 min after (Fri Mar 11 2011 15:18:05 GMT+0900 (Japan Standard Time))

大津波警報がでています。海岸や河川からは離れて高台に避難してください。
39 min after (Fri Mar 11 2011 15:25:45 GMT+0900 (Japan Standard Time))

避難勧告が八戸市、三沢市、おいらせ町にでています。避難指示が六ヶ所村にでています。
44 min after (Fri Mar 11 2011 15:30:10 GMT+0900 (Japan Standard Time))

避難指示は六ヶ所村の太平洋沿岸です
46 min after (Fri Mar 11 2011 15:32:26 GMT+0900 (Japan Standard Time))

避難勧告が八戸市、三沢市、おいらせ町に、避難指示が六ヶ所村太平洋沿岸にでています。
48 min after (Fri Mar 11 2011 15:34:13 GMT+0900 (Japan Standard Time))

青森県太平洋沿岸に大津波警報が、むつ湾に津波警報がでています。海岸や河川には絶対に近づかないで下さい。近くにいる人は速やかに避難して下さい
55 min after (Fri Mar 11 2011 15:41:10 GMT+0900 (Japan Standard Time))

県庁も停電しています。ホームページでの情報提供が遅れるかもしれません。当面ツイッターで情報提供します。
1 hour after (Fri Mar 11 2011 15:46:11 GMT+0900 (Japan Standard Time))

避難指示が八戸市、むつ市、階上町、六ヶ所村、東通村、風間浦村に、避難勧告が三沢市、おいらせ町にでています。
1 hour after (Fri Mar 11 2011 15:54:01 GMT+0900 (Japan Standard Time))

自治体公式ホームページの代替手段として力を発揮するソーシャルメディア

県や市町村の庁舎に設置されている公式ホームページのサーバーは、地震や津波、停電により、アクセスできなくなるケースが相次いだ。気仙沼市の公式ホームページの場合は、本庁舎が津波に襲われサーバーなどが水没し、地区全体も停電となったため、復旧したのは地震発生後から10日後の3月21日だった。

地震や津波や停電の影響を受けなかった被災地の自治体のホームページにも被害状況の確認などのため全国からのアクセスが集中しつながりにくい状況が続いた。被災地では、災害時においても切れない強固な通信手段としての消防防災無線も津波で破壊され、津波警報を流せない状況となった。

被災地の自治体では、ホームページによる情報提供の代替手段、そして消防防災無線に変わるリアルタイムで緊急性の高い情報を発信する手段として、ツイッターなどのソーシャルメディアのサービスが活躍することとなった。

ソーシャルメディアのサービスは、被災地以外のデータセンターにサーバーがあり、今回の震災で停止することはなく、アクセスが集中してもつながらなくなることはほとんどなかった。携帯電話からネットにつながる環境であれば、どこからでも閲覧や投稿することができたのだ。今回の震災を機に、自治体では、非常時における住民への情報提供手段として、ツイッターのように、携帯電話やスマートフォンなどのモバイル機器からも利用できるサービスを採用する動きが加速することが予想される。

震災後に公共サービスとして活用されるソーシャルメディア

県や市町村の自治体のツイッターの活用は、平常時においては住民向けの地域の情報発信など地域活性化を目的とした情報が占めていたが、地震発生後は、これまで各自治体の取り組みを紹介したように、被害情報の提供や安否確認など、緊急性の高い情報の連絡手段として力を発揮した。被災地の自治体では、震災発生後から1週間程度の間、主に以下のような情報が発信された。


・地震に関する情報

・津波警報

・避難勧告・指示

・避難情報

・被災地の被害状況(死傷者・負傷者、家屋の倒壊状況等)

・災害対策本部の情報

・被災地への生活物資受け入れ情報(窓口)

・停電や復旧情報

・断水情報

・人口透析などの急病診療情報(窓口)

・通信状況(固定・携帯)

・銀行ATM稼動情報

・鉄道などの交通運行情報

・自衛隊や消防隊の派遣情報

・海外からの救助隊支援の情報

・その他生活情報

情報が錯綜し、時間ごとに状況が次々と変化する中において、被災地の自治体から発信される避難情報や被害状況、医療、交通運行などの情報は信頼性が高く、被災者や被災地以外の人々にとっても貴重な情報源となった。

岩手県大船渡市(@ofunato_city)では、ツイッターで罹災証明書発行や仮設住宅の建設・着工、お金の払い戻しなど、被災者がこれから生活をしていく上で、欠かせない情報を知らせるなど、被災者の生活支援や復旧に向けた情報発信としても活用された。
出所:https://twitter.com/ofunato_city

茨城県農林水産部園芸流通課うまいもんどころ推進室(@umaimon_ibaraki)は、日本の自治体で最も多くのフォロワー数を抱え、2011年3末時点でフォロワー数が10万を超え、2012年2月時点では13万を越える自治体の中では最も多くのフォロワー数を持つアカウントだ。
 茨城県の茨城県産農産物の一部は、福島第一原発事故の影響により、暫定基準値を超える放射線物質が検出され、出荷や摂取の制限になった3月下旬以降は、風評被害を受け、制限対象外の品目まで価格が大幅に下落していた。そのため、うまいこんどころ推進室では、風評被害への対応を強化するため、ツイッターやブログなどを活用し、積極的に情報発信やフォロワーとのコミュニケーションをはかっていった。

県産農産物の安全確認と分析調査結果の情報を随時発信し、東京など全国各地で実施されている茨城県産の農産物の販売情報などを積極的に情報提供した。フォロワーからも多くの応援メッセージが届けられた。

「温かい励ましに感謝します! 」
「これからも応援お願いします!」
「震災後復旧に向け頑張っている茨城の生産者に、皆様の温かい声援を伝えて行きたいと思います。」

など、多くの激励や応援のメッセージに対して返信をするなど、風評被害を乗り越え、茨城の食の魅力を伝えるため、ツイッターを積極的に活用した。

出所:https://twitter.com/umaimon_ibaraki

各自治体からツイッターで発信される情報は、被災地にとって大切な情報が発信が多く、それが多くの人によって拡散され、多くの人に認知されるとともに、ソーシャルメディア全体の情報の信頼性の向上に大きく寄与した。

震災を機にツイッターの採用が広がる自治体

 自治体のツイッターに対する期待は、震災後の被災地の自治体のツイッターのフォロワー数の急速な増加からも読み取ることができた。地震発生後の約2週間後と地震発生前の各自治体のフォロワー数を比べると、青森県庁は3,500から約3倍強の12,000、岩手県広報広聴課は2,500から約10倍の25,000、液状化などの被害の大きかった千葉県浦安市は500から約20倍の10,000、そして、被害の大きかった気仙沼市危機管理課は、600から40倍を超える26,000までフォロワー数を伸ばしている。

※震災前(3月6日)と震災後(3月16日)の東北地域のフォロワー数比較

(青森県)

青森県庁 @AomoriPref 3,623(3/6集計)⇒9,853(3/16集計)
青森県むつ市 @mutsukoho 618⇒1,887
青森県八戸市 @HachinoheCity 2,399⇒6,534

(岩手県)

岩手県広報広聴課 @pref_iwate 2,471⇒20,743   約8倍

(宮城県)

宮城県気仙沼市危機管理課 @bosai_kesennuma 617⇒21,996  30倍以上

(福島県)

福島県会津若松市 @aizuwakamatsuct 1,400⇒3,915

(茨城県)

茨城県 広報編集グループ @Ibaraki_Kouhou 2,080⇒2,320
茨城県茨城県(うまいもんどころ推進室) @umaimon_ibaraki 98,129 ⇒100,383
茨城県つくば市 情報システム課 @tsukubais 2,221⇒11,326

(千葉県)

千葉県浦安市 @urayasu_koho 577⇒6,845  10倍以上 


 被災地だけでなく、震災前から利用している全国各地の自治体でもフォロワー数が軒並み増加した。神奈川県厚木市は、震災前の約900人から2週間後には約1500人にフォロワー数が増加した。

出所:https://twitter.com/AtsugiCity

 今回の震災を機に、ツイッターを始める自治体が相次いだ。経済産業省によると、国や地方公共団体などの公共機関のツイッターのアカウント数は、震災前の3月が121だったのに対し、4月4日時点では148にまで増加している。2月までの増加ペースは月間数件程度だったので、今回の震災で自治体の利用が急速に進んだ形だ。

ソーシャルメディアから見る復興に向けた自治体の取り組み

震災後、被災地の自治体では復旧から復興の時期に入りそれぞれの取り組みを実施しており、各被災地の自治体のツイッターからもその取り組みを垣間見ることができる。

宮城県東松山市は7月8日、東松島市震災復興本部(@HMfukko)のアカウントを開設。東松島市では、震災により約65%が浸水し1,000名を超える尊い犠牲者が出ている。ツイッターでは、復興まちづくり計画に関する情報や震災復興に関するイベント情報などを発信。7月26日には、第1回「復興まちづくり計画」懇談会の模様の案内や、復興まちづくり計画を作っていくにあたってのキャッチフレーズの意見を聞くなど、ツイッターを活用し、情報発信とともに住民との意見交換をすすめている。

出所:https://twitter.com/HMfukko 

宮城県気仙沼市(@bosai_kesennuma)では、防災に関する情報とともに、「311まるごとアーカイブプロジェクト」の取り組みを随時紹介。「311まるごとアーカイブプロジェクト」は、被災地の被災地前の過去の街並みや行事の映像などの「過去」の記録を再生、津波の被害や避難生活の映像などの被災した「現在」を記録、そして、復興まちづくりや産業復興の映像など「未来」を記録している。現在、被災地の自治体、地域コミュニティ、ボランティア、国、大学等研究機関と協動で映像などの収集、記録に取り組み、津波の教訓の後世への伝承、被災地内外の津波防災対策の検討や研究、教育、復興支援のために、人類の共有財産として一般に無償で提供している。

岩手県大船渡市(@ofunato_city)は、災害復興局からの復興に向けた地区懇談会の開催案内や広報からの災害復興計画策定委員会専門部会の委員募集や復興計画策定にあたっての情報提供依頼など、住民に向けた情報発信をしている。

各被災地の自治体は震災後の緊急連絡だけでなく、被災地の復興に向けての情報発信や住民とのコミュニケーションなどを通じて、復興に向けた取り組みを進めている。被災地の復旧や復興に向けた情報が不足する中で、各自治体がソーシャルメディアを通じて発信する情報は貴重な情報源となった。

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