2030年のネットワークのインテリジェンス化とOSS/BSS
総務省は2018年10月4日、「情報通信審議会 電気通信事業政策部会 電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証に関する特別委員会(第1回)」を開催し、「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」や2030年頃を見据えたネットワークビジョンに関する考察などについて、議論・検討を行っています。
今回は、2030年のネットワークのインテリジェンス化とOSS/BSSについて、とりあげたいと思います。
ネットワークの運用・管理の主体(インテリジェンス)は、データ処理の場所・手法に応じて、上流で一括処理する「集中」と末端で 自律処理する「分散」を繰り返してきており、現在、大容量データの効率的な処理を可能とするクラウドによる「集中」から、IoT 時代の多様なニーズに迅速に対応可能なエッジコンピューティング等による「分散」へと移行しつつあるとも言われています。
今後、あらゆるモノがつながることで経済成長や社会課題の解決につながる「Society5.0」時代と、「あらゆるモノ」(人、機器、 インフラ等)からの「あらゆる要求」(大容量、低遅延等)にダイナミックに対応する高性能のネットワークが求められることから、 インテリジェンスが各レイヤに偏在し、AIにより自動制御される「ヘテロジニアス」なネットワーク環境が到来するとしています。
2030年までに想定される変化シナリオは、
通信ネットワークがエコシステムの一部に組み込まれ、モジュール化するのではないか。
オペレーション制御において、AI能力が市場支配力を決定づけるのではないか。
インテリジェンスの偏在により、セキュリティの脅威が増大するのではないか。
の3点をあげています。
インテリジェンスのネットワークの未来像を見据えた検討課題(案)では、
中継網・アクセス回線の区分等、回線設備の設置・不設置等、既存のネットワーク構成を前提とした規律コンセプトの見直し
エンド―エンドでセキュアな通信を可能とする高度なセキュリティ基盤の確立
の2点をあげています。
出所:総務省 2018.10
また、総務省では、IoT端末の増加等によるサービスの多様化や動画配信サービスの拡大等による ネットワークの効率的な運用への要求が高まることから、ネットワークが対応すべきサービス要件が複雑化する ことが予想され、 サービス要件の複雑化に対応するためには、AIによる要件理解等を通じて、効率的かつ正確に、ネットワーク リソースの自動最適制御を実現する技術の更なる普及・高度化が期待されるとして、以下の図をまとめています。
出所:総務省 2018.10
次に、OSS(Operating Support System)やBSS(Business Support System)に関してですが、SDN/NFVは専用線等(法人向け)を中心に普及が進んでおり、今後、公衆ネットワーク(エンドユーザ向け)にも導入が進むと考えられ、ソフトウェアや機器の開発において、世界規模の競争が進展しています。
今後、IoTサービスの普及により、スライシング技術等も活用して、多種多様なサービスに応じて、必要なサービスや機能をネットワークから「切り出す」ニーズが高まり、複数のIoTサービスを統合的に管理し、そこで得られるデータを活用して新たな価値を生み出すOSS(Operating Support System)やBSS(Business Support System)を巡る競争が激化することが予想されるとしています。
2030年までに想定される変化シナリオでは、
課金、顧客管理等のプラットフォーム機能に強みを有する企業(非回線設置事業者)により、物理網をまたぐ形でのネットワーク管理が拡大するのではないか。
従来は集約されることのなかったデータが通信ネットワーク上で流通することにより、新たなビジネスモデルが生まれるのではないか。
の2点をあげています。
OSS/BSSのネットワークの未来像を見据えた検討課題(案)では、
電気通信事業者やネットワークの単位を超えたネットワーク管理に対する適切なルールの在り方
ネットワークとサービスの両面にわたるデータが集積・活用されることについて、利便性の確保と利用者情報の保護等
の2点をあげています。
出所:総務省 2018.10