« 2010年3月17日

2010年3月18日の投稿

2010年3月23日 »

ブロガーミーティングでIBM様よりLotusLiveを紹介いただきました。

Web会議や掲示板などのコミュニケーション基盤をインターネット上に構築することで、特に企業間のコラボレーションなどに活用できるとのこです。紹介いただいたのは

  • LotusLive Meetings(Web会議)
  • LotusLive Connections(ファイル共有やタスク管理)
  • LotusLive iNotes(メールとスケジュール)

のあたり。私の感覚からすると、企業間のコラボレーションでは互いに利用しあうITインフラを用意するとなるとちょうどよい基盤がたまたま存在しているということは少なく、ではどっちが持ち出すかという話になると決定に至らずに既存資産ということでメールで巨大な添付ファイルを送り合うという不毛な結論に達することがあろうかと思います。そういった場合にお互いの費用はお互いで精算しやすいLotusLiveのようなプラットフォームがあると非常にやりやすいのではないか、そのように思いました。

多くの大企業ではLotus Notes/Dominoの資産が運用され続けていることと思います。個人的には、自社で運用する技術と体力のある企業にとっては無理な移行をするよりもNotesの移行を続けるほうがいいように思います。また、Notesの持つDBを簡単に作ることができる=スモールスタートに強いという特性は、大企業にとって対抗馬であるチャレンジャー企業に対して同じサービスを迅速に投入してスケールメリットでつぶすという戦略を支えるのに非常に向いています。確かにメールやスケジュールだけ見ると低コストなSaaSに移行したいという思いも浮かぶかもしれませんが、これと思った新システムをざっくりとでもいいから早く安く作りたいという要求にはNotesに一日の長があるでしょう。

一方で様々な発展レベルの国に拠点を抱えるグローバル企業に対してそれをやろうと思うと、Notesクライアント配布やIDファイル配布やDBの署名といった問題をクリアしなくてはなりません。それならば一極集中しやすいインターネット越しのサービスのほうが向いています。また中小規模の会社にとってはNotesであるかどうかは別として運用から開放されるためにインターネット越しに運用を委託できるサービスが欲しい会社も多いでしょう。そういった会社で今Notesを使用しているところはIBM以外のサービスに乗り換えて行ってしまうかもしれませんので、LotusLiveはそれを食い止めるという性格もあるのかもしれません。

一連の説明を聞き、私が思ったのは個人向けのビジネスプラットフォームとしてのLotusLiveがあったら喜ぶ人がおおいのではないか、ということです。会議あり、成果物置き場あり、コミュニケーション基盤あり、タスク管理あり、と欲しい機能は一通り揃っています。完全なフリーランスも、企業に属しつつ許される範囲での個人的活動をしている人も、今現在はブログや個人サイトなどをプラットフォームにして活動するのが普通です。コミュニケーションの手段がtwitterにぐっと集まったように、そういった活動の場所がLotusLiveに集まるようなことがあればどうでしょうか。誰かに仕事をお願いしたいことあがればLotusLiveから探し、自分が働いた成果はLotusLiveに置き、それが印刷物や運搬を伴う納品といった仕事であればLotusLiveにサービス連携しているパートナー企業を利用し、自分にない技術が必要になった場合はLotusLiveから探す、という生態系が生まれるように思います。

mixiやFacebookといった巨大SNSがそういった役割を果すことも考えられますが、既存の私的な人間関係が持ち込まれてしまっている以上、LotusLiveのように個人から切り離された空間のほうが仕事はしやすいでしょう。また、プロボノと言われるように企業に属しつつ私的な社会貢献活動をしたいというような人は、会社に対して「利益相反になるようなことをしていません。」ということを示しつつ、「社会への貢献活動はこのような成果となりました」ということも示していきたいということがあるでしょう。そういった面で会社と社員の間で私的な活動の状況を簡単に共有する基盤が存在すれば、社員側も安心してボランティアやブログの執筆活動に取り組めるのではないかと思います。

反対に、企業を相手とするならばその他SaaSと比較して決定的な優位点は感じられませんでした。もし既存のNotesDB(nsf)を活用しやすいような道があるのであれば非常に大きいと思いますが、それがまったく考慮されないということであれば、ライバルと果てない価格競争に巻き込まれる事になりますし、またNotesからリフレッシュしたい(Notesに従事するシステム部門メンバーを整理したい)という面から逆境に立たされてしまうということもあるかもしれません。

人が集まるところに金が集まるというのがインターネットを支配する法則の一つでもありますので、マネタイズのことはひとまず置いておいて個人向けにもプラットフォームを開放していくというのがおもしろいのではないかと思います。

IBMの皆様(と元Lotus関係者の3名様)、本日はありがとうございました。

yohei

« 2010年3月17日

2010年3月18日の投稿

2010年3月23日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
yohei
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ