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ブログを書くときに気をつけていることは内容が「事実」なのか「考察」なのか「意見」なのかを意識することです。これらはそれぞれ取り扱いが異なってくるからです。

理系の論文では「結果」と「考察」を分離します。例えば実験結果がいまいちであってもそのまま取り上げ、それについて考察することが重要だからです。考察のために結果をいじってしまったら、それを再現しようとした人が困ってしまうでしょう。同じように考えればブログでも「事実」であることはそのまま取り上げたほうがよいということになります。主張のために事実を曲げたら、その事実が嘘だと知ったときにその人の考察や意見が意味のないものになってしまいます。そのため引用やリンクでどの事実を取り上げたかを明確にしておく必要があります。そして事実であると断っておきながら出典を明確にしないということは良いやり方ではありません。

そこから何を考えていくか、それが「考察」にあたります。こちらは自分はある事実についてこう考えている、ということを述べることになります。意見との違いがわかりづらいですが、論理的に矛盾のないことだけを述べることが重要です。論理的に矛盾がない、の部分にはみんながそう思うかどうかは必要ありません。むちゃくちゃなことを言っていない限りは「こういう事実があるけど、それはこういうことの表れではないか?」という考えを述べることに意味があります。

わかりづらいので例をあげると、たとえば「物と物とは引き合う性質があるのではないか」と考えたとします。これはニュートン以前ではよくわかっていないことでしたので荒唐無稽なことに聞こえたことでしょう。またそれに矛盾しない証拠もたくさんありましたが、証明するような証拠はあまりありませんでした。リンゴが落ちるからといって万有引力が正しいことを信じる人は少なかったでしょう。しかし後に正しいことが証明されました。

同じようにインターネットや身近に転がっている現象についておもしろい考察をすること自体は問題ではありません。ことさらに事実の一面だけを取り上げて主張をすることは多くの人に「こいつ大丈夫か?」と思われる可能性はありますが、そのこと自体を否定すべきことはありません。そこを否定して右へならえしてしまうとせっかくユニークなインターネットの世界が均質でつまらないものになってしまいます。大切なことは事実に矛盾しないかどうかです。

最近の動向をして「twitterは日本では流行しないだろう」と主張することは勇気が要るものの、してはいけないことではありません。反論されたときに言い返すだけのパワーがあれば問題ないでしょう。インターネットではみんなが同じ論拠に簡単に行き着くことができますし、自分の主張を文章で残せるのでこういった議論を簡単に行うことができます。ただしこれを言うのであればある「事実」を提示して、それに矛盾のない解釈を加え「考察」とわかるように主張しなくてはなりません。

twitterのアカウントが日本でも爆発的に増えた上、ネット以外のメディアでも取り上げられているところに「流行しない」という考察を言うからにはそれなりの論理が必要となるでしょうが、何らかの傾向さえ示していれば問題あることではありません。例えば(あくまで例えばです)爆発的に増えているといっているがアメリカで流行したときの半分以下だ、とかいう事実があってそれを示して考察を述べればとても価値のある主張ということになります。反対に、いわゆるソースを提示せずにこれが「事実」であるように主張するのはそのブログが信用されなくなる恐れがあります。

対して「意見」はどうとでも言うことができます。差別的なものであったり読む人をいたずらに不快にさせるようなものは困りますが、そうでなければ自分の思うところをそのまま言えばいいでしょう。「好き」や「嫌い」を言ってはいけないというルールはありません。もちろん多くの人が「好き」というものを嫌いといったり、一部の人だけが「好き」なためにそれを「嫌い」と公言することがその人たちを追い詰めてしまうなど取り扱いの難しい話題はたくさんあります。下手する炎上するかもしれません。ビジネスの場でも野球のひいき球団や政治の話などは気をつけたほうがいいと言われますが、そうしたことに注意を払っていれば個人的な思いを書くことはさほど問題になりません。

書き方については個人の「意見」であることを明記した上で書くことです。「日本人の9割以上は嫌いだと言っている」などと事実めいた感じにしたり、「だから日本人が生き残る道はこうするしかない」という考察であるようにすると反論が巻き起こります。事実について嘘をついてはいけませんし、考察については論理に基づいた主張でなければ反論に対して返事をする義務があると思ったほうがよいでしょう。

もちろんネットはそういったカチカチの世界だけではありません。考察について自信がなければ事実から意見につないでしまって「個人的には●●というような可能性があるように感じられる。それはなぜなのだろうか。私にはわからないがとってもおもしろいことであるように思うのでしばらく注目していきたい。」というように書けば有力な情報が集まるかもしれません。

本エントリは事実→考察→意見を1セットにして複数セットを繰り返しています。事実をみっちり、考察をみっちり、意見をみっちりの1セットだけで終わる構造もあるでしょうし、事実はひとつで考察と意見をいくつも書くというやり方もあるでしょう。順番を反対に「意見」「考察」「事実」とやると都合のよい事実をピックアップしているように感じられてしまがちなのでそうならないような書き方に注意が必要です。

もちろん存在自体がおもしろい事実には考察も意見もいりませんし、気分によっては「誕生日だわーい」と意見だけ書くこともおもしろいものです。むしろブログはそういうことを書くことに向いているお気楽なメディアなのですが、活字の情報は注意して書かないと意見なのに事実であるように伝わってしまったり、重要な事実を見つけたのに個人的な意見として伝わってしまうという恐れがあります。

「事実」と「考察」と「意見」を分割し、議論すべきところは議論し、そうでないときはおもしろおかしいことや幸せを伝えられると良いですね。

  • 【DoHowブログ】ブログはいきなり本題から書く
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    山口 陽平

    山口 陽平

    国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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