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いよいよ大晦日。紅白歌合戦も良いですが、『年忘れ!にっぽんの歌』も良いですね。

紅白歌合戦は主にその年に活躍した歌手と、コンスタントに活躍し続けている歌手が中心になっています。対してにっぽんの歌のほうは懐かしいメロディが中心になっています。ちょうど私の両親くらいの年代の方が多く出演するみたいで、父と母で「この人は誰と離婚したんだっけ」や「この人の息子って誰々と結婚した」というような話で盛り上がっています。知らない人の知らない歌が多いため、私はにっぽんの歌を見ておもしろく感じた事がほとんどありませんでしたが、それは私にとっての「にっぽんの歌」と言える歌がまったく歌われないからだと思います。

今、私にとっての「にっぽんの歌」は何でしょうか。以前は歌を触媒にして思い出を語るような年寄りくさいことはしたくないと思っていましたが、やはり年齢を重ねるとそうも言っていられないようです。何曲かの歌を聞けば、強制的に思い出モードになってしまうことがあります。その中でも、ある1組のバンドについては非常に思い入れがあります。

(なお、メンバーが刑事事件を起こしたことでそのバンドは解散してしまっています。よってここで名前は言えません。私個人としては事件があって以来、自分からは人に薦めないようにしています。また、グッズやCDも買っていません。)

私とそのバンドの出会いは高校3年に遡ります。早めに進路が決まったため、バイトをしていました。バイト先のスーパーで仕事中にずーっとFMがかかっていたのですが、その中でそのバンドのデビュー曲を聞きました。すごく頭に残るメロディーで気に入りました。でも誰が歌ったのか聞き逃したためバンド名を知りませんでした。

大学に入学しました。実は時を同じくしてそのバンドのメンバーの1人が同じ大学に入学していました。それを知らずに「同じ大学の人がやっているバンドがある」という薦めで視聴したCDに、バイト先で聞いたあの曲が入っていました。この1件で親近感がわき、アルバムを買いました。

私はその春から初めての1人暮らしを始めたところで、毎日が新しいことのラッシュでした。そのバンドの人たちもホームタウンを離れてメジャーデビューをしたところ。年齢も近く、大きく変わった環境の中で精一杯やっていくところなどに共感を覚えました。そのCDを聞くと元気が沸入てくるようでしたので、寝坊防止になると思いCDを目覚まし代わりにしました。今でも1枚目のアルバムを聞くとその部屋に朝日が差す光景が思い浮かびます。そんな時間を過ごしているうちに、いつの間にかそのバンドが大好きになっていました。その年にそのバンドが紅白歌合戦に出た時はとても喜びました。

ちょうど就職活動をする頃、そのバンドの人気は落ち目でした。ファンはどんどん濃いファンになっていくのですが、新しいファンが増えないような感じだったと思います。公式掲示板は常連ばかりになっていました。この時期にCDが10ヶ月ほどリリースされなかったことがあります。私の憶測ですが、そうしたファンを大切にしたいという思いと、売上げを伸ばしたいという思い等が交錯していたのではないかと思います。私にとっては好きな曲が多い、そのバンドらしさが溢れたアルバムはあまり売れませんでした。

私は内定を得て就職活動を終えました。大学生としてやり残したことがないようにしようと振り返りを始めた頃に、そのバンドのベストアルバムが発売される事になりました。それに向けて応援メッセージを募集するという企画が始まりました。私はその時の気持ちを正直に綴り、メッセージを送りました。

「私が大学に入学した時にヒット曲が出て、たくさん悩んだ時期には同じく悩み、そして卒業を意識する時になってベストアルバムが出るというのも奇遇ですね。」

と、いうような内容でした。そのバンドのメンバー1人ずつが心に残ったメッセージを選ぶという雑誌の企画で、自分のメッセージが選ばれていてびっくりしました。後日発売されたベストアルバムのスタッフ欄にspecial thanksのような形で自分の名前が載っていたときはもっとびっくりしました。それまでライブに行った事はなかったのですが、思わずライブに行ってしまいました。

そして社会人になりました。仕事に時間を割くようになってゆっくり音楽を聴く時間も減りました。そのバンドの歌も、聴くと言うよりも部屋のBGMのひとつになりました。時間がなくなった以外に理由らしい理由は思い浮かびませんが、ひとつ挙げるならキャッチーさが無くなった事があると思います。自分にとってのそのバンドの良さは親近感があることでした。学生の時は、未来に向かって勉強する自分、夢に向かって頑張るバンドのメンバーという図式がありましたが、システムエンジニアと売れないバンドでは共通項がありませんでした。

そんな感じの関係でしたが、惰性でファンでした。ある日、そのバンドの公式掲示板を見るとひっそりとミニライブが告知されていました。会社帰りに行けそうだったので出かけてみると、活動休止宣言がありました。事実上の解散宣言のような感じでした。やっぱりね、と思いました。自分と同じく「もう必要なくなった」という人が増えたからかな、というように感じました。

最後のライブは大阪だったのですが、ちょうど他の用事もあったことから関西への小旅行も兼ねて見に行きました。歌を聴いていると、もう生で聞く事もないんだな、という思いよりも、その曲が発売されたときは何歳で、どんな境遇で、どんな事を考えていたかという事が次々と思い出されました。まさしく走馬灯のようでした。

後日、メンバーの1人が刑事事件を起こしたことにより正式に解散となりました。そのメンバーは、私のメッセージを選んだ人でした。その事を思い出したときは何とも言えない苦々しい気持ちになりましたが、その事で惰性を断ち切りスッパリとファンを卒業できたように思います。

それから数年たったある日の事。都内某所に出かける用事ができました。以前、なんとなくこのあたりに行きたいと思ったことがあったんだけど何の用事だったんだろう、という思いがある場所でした。がんばって思い出してみると、そのバンドがリリースした最後のアルバムのジャケット写真が撮られた交差点の近くだということがわかりました。そこで、用事ついでにその交差点を見に行く事にしました。

その交差点は五叉路になっています。その道を利用して、最後のアルバムらしくメンバーがそれぞれの旅路に踏み出すようなイメージの写真が撮られました。

junction

これがその場所です。アルバムには分岐点を意味するタイトルがつけられました。分岐点と言われればその通りですが、何の変哲も無い交差点です。写真を撮り、しばらくの間ぼーっとしました。解散以来、長い間そのバンドのCDを聴いていなかったように感じましたが、色々な曲を思い出すことができました。その曲に合わせて、大学時代の色々な思い出が蘇りました。

年の終わりになるとその年にあったいろいろなことが思い出されるように、ある事がきっかけで突然思い出が溢れてくるようなことがあります。それは結婚式だったり、古い友人からの電話だったり、部屋の整理をしていて古いCDを見つける事だったりするかもしれません。そのようなマイルストーンのひとつとして、年忘れ!にっぽんの歌があるのだと思います。きっとうちの両親も曲を聴きながら色んな事を思い出しているのでしょう。私も20年後には第60回の年忘れ!にっぽんの歌を見ながら子供につまらなそうな顔をされるかもしれません。

yohei

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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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