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「ウィキノミクス」(日経BP社)は、以前から読みたかった本ですが、500ページを超す大著だけに、会社の有休を取って何とか読了しました。期待に違わず、読み応えとともに多くの示唆を得ることができました。副題にある「マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ」というのは、集合知やプロシューマーを含み込む内容で、とても巧いサブタイトルだと思いました。

情報技術が普及して、コラボレーションや価値の創出、競争が行えるツールをだれでも使えるようになり、普通の人々が革新や富の形成参加できるようになった(19ページ)
従来は、「ほとんどの人は循環する知識、権力、資本の輪から外れて」いて、疎外感が漂っていました。そこでは、奴隷のように働いて得たお金で大量供給される製品を消費するしかなかった訳ですが、「無数の人と企業がオープンなコラボレーションを通じて業界に革新や成長をもたらす」ようになったことは、とても歓迎すべきことだと思います。
かつて、「プロ」は別格だとされていたが、いまは、知識の源泉として認められたプロも、勝手気ままな「アマ」も同列となった。(中略)個人から個人にウェブで無料配布される最新ニュースや情報の流れがさらにダイナミックなものとなりつつある。(21ページ)
これからは、アマチュアでも稼げる時代だと思います。さらに言えば、アマだからこそ稼げる。プロゆえの商業主義に対する不信感は共通の認識だと思いますし、製品ではなく情報・知識が商材であれば、情報・知識の発信源(製品でいえば製造元)の信頼性はより重要性を増してきます。
負け組は壁で囲った庭園をつくった。勝ち組はだれでも来られる広場をつくった。負け組は自分たちだけで革新を進めようとした。勝ち組はユーザーと一緒に革新を行おうとした。(64ページ)
ユーザーとのコラボレーションを進めることは、機密管理以上に大切なことになります。競合を意識するのではなく、ユーザーを意識することが重要になります。
世界の人材を活用するというのは、安い労働力への乗り換えではなく、能力が目的なのだ(サム・パルミサーノ、100ページ)
海外生産やアウトソーシングは、コスト削減の視点で捉えられていましたが、情報・知識に関しては、民族の多様性に依拠した方が、優れた能力を獲得できると思います。
サイトの治安を厳しく守るという方法もありますが、それではちょっとした問題で次々と牢屋に入れるような形になってしまいます。それよりも、公園をこまめに掃除し、窓なんか壊してもかまわないスラムにいるんじゃないという意識をみんなにもってもらいたいと思います。健全で前向きな雰囲気を醸成し、自然と建設的に貢献したくなる場にしたいんです。(122ページ)
ウィキペディアの驚異的な成長スピードを支えているのは、この考え方です。昨今の日本は、豊かさゆえの余裕が違反摘発に向けられて、成長する際に必要なパワーが奪われている感じがします。取り締まるパワーを生み出すパワーに振り向けていく必要があるように思います。

とりあえず、前半部分の面白かったところです。

ウィキノミクス(ドン・タプスコット他著、日経BP社)

tsuji2005

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辻 俊彦

辻 俊彦

ベンチャーキャピタリスト。専門分野は、メディア系、ITサービス系。

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