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 先日参加したMIJS秋の会員交流会は、林さんや他の知り合いの方もいらっしゃり、とても有意義に過ごせたのですが、そのパネルディスカッションの質疑応答で「青野さんと平野さんに質問です。もし今から起業するとしたら、またオンプレミスから始めますか?それともクラウドでやりますか?」という質問がありました。
 青野さんというのはサイボウズ社長の青野さんで、平野さんはオルタナティブブロガーでもある、インフォテリア社長の平野さんです。お二人は即答で「クラウドからやります!」と仰有っていました。僕も、そこは100%同意です。

 た・だ、クラウドサービスを始めると言っても、ある一定の開発資金は必要になります。また、サービスインするまでの運転資金も必要になってきます。いつサービスインできるのか、開発に半年かかれば、半年後からお金が入ってくるわけではありませんよね。売れ始めるのはさらにそこから最低でも1ヶ月、2ヶ月・・・。その間の社員の給与、自分の収入、家賃などの固定費、開発に必要なハードウェア、ソフトウェアなどなど。決してラクな話しではないですよね。

 先日僕が参加できなかったオルタナティブブロガー定例ミーティングでは、松井さんが「クラウド破滅へのカウントダウン」という、ある意味で挑戦的なお話(笑)をされていますが、そこで話されていることも事実。これらがボトルネックで、クラウドサービス提供を躊躇している企業もあることでしょう。

 クラウドサービスは、「オンラインにファイルサーバがありますよ。便利ですよ」では、もうニーズが無くなってきています。そのため、○○システムとか、業種を特化させたサービスなどが必要になってくるわけですね。買う側にとっても、売る側にとっても。事実、そういうサービスもすごく増えていますよね。当社でも、お客さまにご紹介するサービスが増えすぎて、選定に苦慮しています。選択できることは、いいことですけどね。
 どういうサービスを提供できるか、というのはクラウドサービス提供事業者にとって、大きな課題だと思います。青野さん、平野さんは本気で仰有っているわけですが、それを「そうか、これからはやっぱりクラウドだ」なんて考えてスタートさせるのは早計で、ちゃんと使っていただけるサービスにしないといけないわけですね。アップル的に言うと「Bクラス」のサービスを作るわけにはいかないわけです。ま、Bクラスなら費用対効果で使ってもらえるかも知れませんが、Cクラスになってしまうと、もう市場がなくなってしまいますよね。

 僕自身も、クラウドサービスにはまだまだ可能性があると考えています。しかし、これだけ増えてくると、AppStore上で買ってもらえるアプリを作るようなもので、なかなか目立ちませんし、差別化しづらいですよね。よーく考えないと、一気に沈んでしまいかねません。諦めないことは重要ですが、可能性のないサービスを諦めないということではありませんしね。

 中には、クラウドと称して、自社のオフィスにサーバを置いて提供している事業者もあると聞いたことがあります。マシンルームではなく、オフィスです。
 本当に必要なものはなにか。そして、それをどのような体制、環境で提供するのか。とても重要なことだな、と感じながら拝聴していました。

kumaboo

20111118_63249  ずいぶん時間がかかってしまいましたが、スティーブ・ジョブズ II を読み終えました。上巻よりも感情的なところが多いのですが、ここ最近の自分自身の仕事、プライベートを振り返る機会になりました。
 
 この本の中でスティーブはベンチャーを興す人たちに警鐘を鳴らしています。

スタートアップを興してどこかに売るか株式を公開し、お金を儲けて次に行くーーそんなことをしたいと考えている連中が自らを「アントレプレナー」と呼んでいるのは、聞くだけで吐き気がする。

「そんなことを言えるのはスティーブ・ジョブスだからだ」そういう考え方もあるかも知れません。スティーブ・ジョブスが若くして大金を手に入れることが出来たから、そんなことが言える、という考えもあると思いますし、僕もそれは間違いだとは思いません。僕だってお金はあるに越したことはないと思います。

 問題は、日々の生活の中で、日々仕事をしていく中で、どこを見ているか、ということなんだと思います。日々、「これは金儲け」と思ってやっているのか、あるいは・・・。
 当社は、「本当の意味で顧客企業に役立つためには」を考え尽くした結果、スマコンが生まれました。「予算は少ないけど相談したい」「月次で少額なら支払えるけど」という心の声を実現したわけです。

 さすがにスティーブのように、消費者のニーズを聞かずにもっと先を考える、なんてことは出来ていませんが、「いくら儲けるか」からスタートしてしまわないように、と考えています。もちろん採算というものも考えるのは我々経営者の仕事ですし、赤字を何ヶ月も出す、ということが出来ないのも事実です。ただ、それと目標を取り違えてはいけない、と考えているんですよね。

「またスティーブ・ジョブスの話か」と思われてしまうかも知れませんが、これは複数の経営者の言葉でもあります。我々経営者は、安定的な経営基盤を作ることも大切な仕事です。その一方で、必要なチャレンジもありますし、社会に貢献することも大切になってきます。

 先日、MIJS(Made In Japan Software)コンソーシアム秋の会員交流会にお招きいただき、パネルディスカッションなど拝聴させていただきました。パネルに参加されていた皆さんも、運営を支えられている皆さんも、別にこういうことをしなくても自社のことだけやっていればいい方が大勢いらっしゃるんですよね。でも、あえてこういう場に参画し、日本のソフトウェアの「」を考えていらっしゃるわけです。目の前だけ考えたら、あるいは自社のことだけ考えていたら、別に参画しなくてもいいのかも知れません。でも、あえてやる。それはお金のことだけを考えていないからなんですよね。

 起業は決して割のいいものではないと考えています。自分だけ食えればいいのなら、社員も雇わず、一人会社あるいは個人事業主でやるほうが効率もいいのかも知れません。さらに「目標はお金じゃない」なんて意味が分からない、と仰有る方もいるかも知れません。しかし、あえてそこにチャレンジすることが、今の時代における起業に必要なのではないか、と考えている次第です。

kumaboo

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プロフィール

大木 豊成

大木 豊成

スマートフォン法人導入コンサルティングのイシン株式会社 代表取締役。
著書に、iPad on Business、ソフトバンク流『超』速断の仕事術、ファシリテーターの道具箱(共著)がある。

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