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マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2011年5月6日

2011年5月7日の投稿

2011年5月8日 »

我が家のエアコンはもう15年選手です。

調べてみたら、最新型のエアコンの消費電力は2/3。

一昨年から「そろそろ買い換えかな?」と考えていたのですが、家が借家でエアコンは大家さんのものでしたし、借家の契約更新が今年3月だったので見送っていました。

しかし、この3月に借家も契約更新しました。しかも、この夏の節電。

買い換える理由ができました。

ということで、一昨日、ある家電量販店でエアコンを購入しました。

その前日、この家電量販店に立ち寄ってもらったチラシによると、その翌日に某A社のエアコンが台数5台限定で特価になる、とのこと。この商品が目当てです。

 

ということでエアコン売り場のフロアに到着。休日の午後6時というのに閑散としています。店員さんの方が多いくらい。

そこで、一番シニアな感じの店員さんと目が合いました。

実はこの店員さんが、まさにセールスの達人でした。

とっても勉強になったので、ブログに書くことにしました。

 

まず、この店員さんに「このチラシのエアコンについてお聞きしたいのですが....」と言いながら、着ているジャケットを見ると、お目当ての商品の某A社ではなく、某B社の方でした。

「あ、ごめんなさい。B社の方だったのですね」と言ったところ、「いや、いいんですいいんです。説明しますよ」と言って、某A社の商品の説明をしてくれました。

このセール品がなぜ安いのかお聞きしたのですが、「暖房・冷房という機能に限れば、この商品で十分なんです。値段が2倍や3倍の他の商品は、色々と機能が付きすぎで、使わないですよね」という回答。

この売り場には、なぜかエアコンで有名な某C社の製品が置いていませんでした。理由をお聞きしたところ...ここには詳しく書けませんが、明確な回答がありました。

信頼できる方だと感じました。

 

借家なので、現在使っているエアコンを買い換えるためには、大家さんの確認が必要なのですが、実はこの時点で大家さんに買い換えの確認が出来ていませんでした。

そこで「かくかくしかじかの事情で、今日買えないのですが、この価格は、今日だけですか?」と尋ねたところ、「この特価は今日だけです。ただ後でキャンセルいただければ簡単に返金致しますし、今日お買いいただいた方がお得ですよ」との答え。

セールスは、今日、今のお客さんを逃さずに売るのが鉄則。それを忠実に守っているのですね。

 

商品について色々と考え始めたところ、「ところでお客様、少しだけ高くなりますが....」と言いながら、B社の商品の説明が始まりました。この店員さんの会社の商品です。しかし、全く嫌みがありません。

風が上向きでダイレクトに当たらないこと、室内の臭いをきれいに除去して快適にしてくれること、フィルターを自動で掃除してくれること、等、色々なメリットを説明してくれます。これで、A社の特価品と比べて25,000円高いだけ。

私に対して説明する間に、ポイント・ポイントで、妻の方にもしっかり視線を合わせます。力関係をちゃんと見極めているのはさすがです。(笑)

結局、買ったのは、このB社の商品でした。

 

素晴らしいと思ったのが、空気清浄機能の説明をした時のこと。

「私は鈴木(仮名)ともうしますが、この機能で鈴木さんの家の臭いがきれいに取れるんです」と表現します。「永井さんの家の臭い」とは言わないのですよね。確かに、「ウチの家は臭いません!」という反応をする人もいるでしょうから、この言い方がスマートですね。

言い方が分かりやすいのも、素晴らしかったですね。

例えば、この空気清浄機能の名前は、カタカナ10文字以上の分かりにくい言葉だったのですが、その名前をそのまま使いながら、「とにかく、いたずらでいいので、このリモコンのブドウのマークを時々押してみて下さい。空気がとっても爽やかになりますから」との説明をします。この説明だったら、ご年配の方でも理解できます。

この店員さん、「自社製品は絶対によい」という強い情熱と信念を持っています。ただ、B社の名前は一切出さないのが凄いところ。あくまで顧客視点で、何がいいのかを、話をしてこちらの課題を探りながら話していきます。

商品知識も豊富です。私の自宅で今使っているエアコンの写真を見せたら「あ、これはxx年前の機種で、電源のタイプは同じタイプですね」とすぐに分かります。当然のことですが、顧客視点で商品を説明するには豊富な商品知識が必須なのですね。

説明も一切不安を抱かせません。

例えばエアコン工事の日程変更についても、「3日前以後は変更できません」という言い方はしません。「3日前までだったら全く問題ないです」というポジティブな言い方をします。同じ事実でも、この説明の方が安心です。

他に質問をしても、「もちろん!」と即答で言い切ります。

最後には、「何かあったら、ご遠慮なくご連絡下さい」と連絡先を教えていただきました。

値引き交渉はしなかったのですが、買う段階になった時、「値段交渉してきます。私の仕事なので」と一言言って一瞬いなくなり、数分後に1000円だけ値切ってきました。このように買う理由を周到に作るあたり、達人ですね。

話している途中で気づきましたが、この店員さんは髪が黒々としているのですが、髪の根元、約1mm程度が真っ白になっています。白髪を染めているのですね。恐らく60代中頃でしょうか?しかし黒々とした髪と、ハキハキした話し方のおかげで、若々しく、すごくよい印象を受けます。よい印象を与えるのはセールスにとって重要である、ということを再認識です。

 

このエアコンのフロアには、他にも店員さんが10名程いましたが、他の店員さんのほとんどは若い方でした。

この商品を買う前日、若い店員さんにエアコン工事の質問をしたのですが、「予約した工事日の後だったら、変更できますよ」との答えでした。確かに順当な回答ですがそれだけで終わり。あまり売る気を感じませんでした。

こんな中にいる、このセールスの達人。「エアコン売り場」というサバンナで、多数の草食系動物の中にいるたった1匹のライオン、といった印象を受けました。

このフロアに来るお客さんは1時間に十数組程度かもしれませんが、恐らくこの店員さんは、1日10件以上のエアコンを売りまくっているのではないでしょうか?

 

20分程度で決めた買物でしたが、「納得のいく、よい商品を買った」という満足感とともに、「セールスの名人芸と極意を学ばせていただいた」と深く感謝です。

 

 

nagai

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永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

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