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マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2010年8月23日

2010年8月24日の投稿

2010年8月25日 »

ちょっと古い記事ですが、8/11の日経新聞の記事「昨年の新規供給電力源、EU、再生可能エネ62%、『風力』37%占める」に、以下のような記述がありました。

---(以下、引用)----

 欧州連合(EU)の欧州委員会は、2009年に域内で新たに供給された電力源のうち、風力や太陽光、水力など再生可能エネルギーが62%を占めたとの調査結果をまとめた。前年と比べて5ポイント上昇した。電力源全体に占める再生可能エネルギーの比率は約2割に達し、石炭火力発電への依存からの脱却をめざすEUの方針が着実に進んでいる。

(中略)

 欧州委によると、風力や太陽光発電などの新規設備が増える傾向が続くと、20年時点で電力消費量の35~40%を再生可能エネルギーで調達できる見込みという。日本の経済産業省の想定では日本では30年時点でも電力源のうち再生可能エネルギーなどの占める割合は約2割にとどまり、EUと日本の差は依然として大きい。

 EUは20年までに石油や石炭、天然ガスなど1次エネルギー供給全体に占める再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げる目標を掲げる。電力供給での比率向上はそのカギを握っており、欧州委は今後の課題として、研究開発(R&D)投資の支援、電力網へのアクセス確保などを指摘している。

---(以上、引用)----

まとめると、...。

欧州では、電力全体に占める再生エネルギーの割合は既に20%2020年時点で35-40%。これによりエネルギー消費全体の中の再生エネルギーの割合を20%にすることが目標

一方で日本は、電力全体の中で占める再生エネルギーの割合は2030年時点で20%。比率だけ見ると、20年後に現在の欧州に追いつくペース

 

省エネ先進国だったはずの日本。

いつの間に、このようになったのでしょうか?

 

欧州は欧州全体を挙げて、戦略的に再生エネルギー活用を推進しています。

それも、エネルギー業界だけではなく、業界横断的に進めています。

 

例えば、デンマーク。数年後に国内の電気自動車/プラグインハイブリッドの比率を最大10%にすることを目標にしています。

このようになると、電力需要が圧迫する可能性があります。

これを回避するため、風力エネルギー供給の安定性を確保し、充電・決済インフラを構築し、検証するプロジェクトをバルト海の離島で始めています。EDISONというプロジェクトです。

風力発電は、天候次第なので、従来の発電所と比べて、発電が安定しません。

これは再生エネルギー共通の課題で、需要に対して、余ったり、足りなくなったりします。

そこで、余った風力発電の電力を家庭にある電気自動車に貯蔵し、不足の際に回収するエネルギー管理システムを構築しています。このために、モデリングやリアルタイム分析などの技術を活用しています。

このプロジェクト、社会インフラそのものです。

電力会社だけでなく、様々な企業が参加し、お互いが連携するための業界標準を策定した上で、それぞれの企業が得意とする先進テクノロジーを提供し、国を超えて協業を進めているのです。

骨太でシンプルな戦略思考のもとで、グローバル規模で、迅速に標準を策定して企業連携を進め、価値を生み出すという世界の流れの中に、わが国は大きく出遅れている感が否めません。

 

もっとグローバルな場に出て、グローバルのルールのもとで議論し、標準策定の中に参画する。

その中で、それぞれの企業が、自分たちが得意な分野に絞って、独自の価値を提供していく。

私たちは、このようなことを考えていくべき時期に来ているのではないでしょうか?

 

従来、得意でない分野も含めて、自分たちで垂直統合して作るのが成功モデルだった時期もありました。

しかし現代は、そのようなものを作ることで時間がかかりますし、出来たものは競争力を失っています。

不得意な分野まで含めて、自分たちで全部をカバーする余裕はありませんし、現代は必ずしもその必要はありません。(もちろん、現代でも垂直統合で成功している少数の例外もあります)

 

以前ご紹介した、ライフネット生命保険社長・出口治明さんの本「『思考軸』をつくれ」には、日本は、元々グローバルで活躍する海洋国家であったことが書かれています。

同書 p.178-179より、いくつか抜粋します。

・織田信長が南蛮貿易を推奨した時代、16世紀のある時期には世界に流通する銀の半分は日本産だったという記録が残っています。GDPから見ても、当時の日本は世界第5位でした。

・山田長政は、タイ・アユタヤ王朝に渡り日本人町の頭領として活躍、今でいうところの国防次官に匹敵する官位を得ました

・ルソンで豪商として名を馳せ巨万の富を得た呂宋(るそん)助左衞門のような例もあります。

・13世紀から16世紀にかけて東シナ海を暴れ回っていた倭寇は、日本人グループが中国人や朝鮮人を組織して貿易業を営んでいたものです

・奈良時代の阿倍仲麻呂は、遣唐使として中国に渡海し、そこで安南節度使に命じられています。今で言えば日本人の優秀な大学生が海外留学の末にベトナムで知事になったようなものです

 

途中、江戸時代に260年の鎖国を行ないました。

しかし実は、グローバルで活躍する遺伝子は、日本人の中には組み込まれているのです。

 

今こそ、ふたたび日本がグローバルに出て行く時期なのではないでしょうか?

nagai

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永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

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