永井孝尚のMM21:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 永井孝尚のMM21

マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

« 2006年9月20日

2006年9月21日の投稿

2006年9月22日 »

あなたは、買った住宅や家がズルズルと値段を下げている場合、損が出るのを承知でスパっと売却するタイプですか? 又は、「今売ると損が出るし、いつか上がるから、しばらく持っておこう」と判断を保留するタイプですか?

よくある状況ですが、このような場合に人間はどのように反応するかということは実は研究対象になっていて、「プロスペクト理論」という名前が付いています。

■ ■ ■ ■

例を挙げて考えてみましょう。

例1: 報酬をもらうことになりました。Aは確実に800万円もらえます。Bは1000万円もらえますが、くじ引きにより15%の可能性でゼロになります。あなたはどちらを選びますか?

例2: お金を支払うことになりました。Cは800万円必ず支払うことになります。Dは1000万円支払いますが、クジ引きにより15%の確率で支払わないですみます。あなたはどちらを選びますか?

調査によれば例1では全体の72%がAを選び、例2では78%がDを選んだそうです。

実は、期待収益(又は期待損失)を計算すると、Aは+800万円、Bは+850万円、Cは-800万円、Dは-850万円です。合理的に判断すると、例1ではBの方が得で、例2ではCの方がより少ない損失に抑えられます。つまり全体の3/4の人は、合理的な判断を行っていないことが分かります。

ここから分かることは、人は何かを得る際にはリスクを嫌い、何かを失う場合にはリスクを取る傾向にある、ということです。

■ ■ ■ ■

売り手と買い手の力関係で、一般的に買い手有利になるのも、これが一つの理由となっています。

人はものを「買う」(お金を失う)場合はリスクを取るようになり、例え値段が上下する状況でも時間をかけて積極的な交渉をして大きな値引きを勝ち取ろうとします。

一方で売り手(お金を得る)の場合はリスクを回避するようになり、将来的に値段が上下する可能性があってもなるべく現在の価格で交渉をまとめようとします。

同様に、企業が利益が上がっていない事業からなかなか撤退できないのも、同じ心理が働いている要因が大きいのです。

プロモーション戦略や撤退戦略を立てる際、このことを理解しておくと非常に役立ちます。

冒頭の投資などで損切り出来ないのも同じ理屈です。

「認知的不協和」を紹介したこちらのエントリーで述べましたように、首尾一貫して「自分は正しい」と思いたい人間の性質はここでも出ています。

■ ■ ■ ■

マクロ経済学では、個々の人間は合理的判断を行う存在、という前提で理論が構成されてきました。しかし近年、これが見直されてきています。経済学や経営の世界に心理学が入ってきたのも、必然かもしれません。

ところで、株式投資で大きな評価損を出している株を抱えていて、売却すべきかどうか悩んでいる場合、よく言われるのは「今、その株を持っていない状況で、新たに現在の価格でその株を買うとして、私は買うかどうか?」という基準があります。これは、我々がプロスペクト理論の呪縛から逃れる一つの方法でもあります。

ちなみに、冒頭の質問ですが、かくいう私も前者のケースが多く、75%の中に分類されるようです。

nagai

« 2006年9月20日

2006年9月21日の投稿

2006年9月22日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のトラックバック
カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
mm21
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ