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マーケティングとは? グローバル化とは? ライフワークとは? 一緒に考えてみましょう

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2006年8月23日 »

あなたは、面白い仕事に巡り合うと、俄然やる気が出るタイプでしょうか?
それとも、「お金が出る」と言われると、俄然やる気が出るタイプでしょうか?

これは「動機つけ理論」という研究テーマです。研究成果によると人は後者の傾向が強いそうです。

上記のうち、前者の動機付けは「内発的動機づけ」と呼ばれます。これは、その行動自体から得られる自分自身の満足を得るために活動を行うケースです。....というと難しく聞こえますが、要は「楽しいからやる」ということです。

これに対して、後者は「外発的動機づけ」と呼ばれます。活動そのものと満足の間に固有の結びつきがなく、報酬を得るために活動が遂行されます。これも難しく聞こえますが、要は「報酬目当てでやる」ということです。

人間はどちらの方がより動機つけられるのかを検証するために、1971年、ディシという人が、大学生を対象にある実験を行いました。

大学生を2グループに分け、あるパズルを時間内にある形に作る課題が与えられました。グループAには制限時間内に解き終えると報酬が出ますが、グループBには報酬が出ません。課題終了後は、各グループは自由に何をしてもよいという指示が与えられました。

この自由時間に課題であるパズル解きを行った時間が、内発的動機つけの程度として評価されました。

結果は、グループBの方が、グループAよりも課題終了後にパズル解きを続ける意欲を持ち続けていることが分かり、金銭報酬が内発的動機づけを低下することが確認されました。

"Stop the pay, stop the play."ということですね。

詳細は割愛しますが、1973年にはレッパーが幼児を被験者に実験を行い、同様に報酬を予期するという認知的要因が内発的動機づけを低下させることを示しました。

また1970年代には、ティトマスという人が、アメリカとイギリスで血液の流通制度について調査した結果、ボランティアによる献血が主流のイギリスよりも、売血制度のアメリカで供給されている血液の方が、ヘルペス等の病原体が発見されることが多いことを示し、外発的動機づけが情報非対称性による機会主義的行動を招き、質の低下を招くことを示しています。

また、リーナス・トーバルズも、「それがぼくには楽しかったから」の中で、楽しいことがOSS活動の原動力である、と語っています。

この動機付け理論は、ネット上の利他的行動と深く関係しているように思います。

■ ■ ■

これは私自身もこのブログを書いていて感じていることです。

このブログを書くにあたって、原稿料はいただいていませんし、会社から命令されているわけでもありません。つまり、外発的な動機つけはほとんどありません。

では何故続けているか、というと、単に自分の考えをまとめて情報発信することが楽しいからです。特にいただいたコメントを見る時は、ちょっとワクワクします。

写真のHPやメルマガも全く同様で、自分なりの自己表現を皆様に見ていただくのが楽しいから、写真のHPも10年間続けていますし、写真の個展も自腹で数十万円の持ち出しにも関わらず何回も開催しています。

私は決して裕福な人間ではありませんし、金銭的な欲望は人並みにあります。しかし、ことブログや写真活動に関しては、お金をもらうことが目標になってしまうと、確かに意欲が低下してしまい、結果的に内容の品質も低下してしまうような気もします。

これは、他のブロガーも同じなのではないか、と思います。ブログやHPを持っている方々のご意見を伺ってみたいところですね。

■ ■ ■

ところで、内発的動機つけは、あくまで個人の内面的なモノだと思います。

企業側で「内発的動機つけ」の仕組みを企業の中に構築しようと考えることは大賛成ですが、このことを逆手に取り「内発的動機つけを与えれば、金銭的待遇は低くてもよいのだ」という操作主義的な考え方が出てくることは、危険なことだと思います。

 

関連リンク:ネット上の利他的行動を、行動形態と行動目的の観点で、歴史的に位置付ける試み

nagai

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永井孝尚

永井孝尚

オフィス永井代表。 著書「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ(中経出版)、他。

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