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Dion Hinchcliffe氏のEnterprise Web 2.0の「Map of the 2009 Enterprise 2.0 Marketplace」は良記事だと思っていたら、この度ZDNetに翻訳記事が載っていたので紹介。「2009年のEnterprise 2.0市場を評価する」
日本語の翻訳記事は3ページからなっているが1ページ目には彼の手による現在のEnterprise2.0系ツールベンダーのポジショニングマップが掲載されている。そしてこのマップを作るにあたって彼が気づいたいろいろな点を2ページ目と3ページ目に書いてくれている。

Enterprise2.0というのは企業内システム(主にイントラネット)にWeb2.0系技術を適用して、社内での従業員のワークスタイルや業務処理を革新させようというコンセプトで、数年前に米国で提唱され、既にいくつかの日本企業もこれに着手し始めている。そしてグループウェア時代の終焉を迎えた今多くの情報系システム担当者に注目されているコンセプトである。
しかし実際にEnterprise2.0という言葉だけでは概念的なために理解がされにくく、具体的にどう進めればよいのかを掴みにくいというのも正直なところだ。
そんなEnterprise2.0を推進するためのヒントがこのコラムの文章にはいくつも含まれているがその中で私が最も頷けたのがこの部分。
従来からあるエンタープライズ向けアプリケーションは、BlogやWiki、タグ付け、ソーシャルなインタラクション、あるいはその他の Enterprise 2.0的要素を持っている。しかし、そのことで上記のアプリケーションが必ずしもよいEnterprise 2.0プラットフォームになっているとは限らない。
(中略)
従来の製品に後付けしたWeb 2.0機能の部分は見せかけに過ぎないこともある。Enterprise 2.0においては、多くの場合「少ない方がいい」ということも念頭に置いてほしい。
これは案外企業内のシステム担当者が見落としているポイントだ。Web2.0系の技術の普及に伴いイントラブログや社内SNSといった新しい技術の企業内適用が叫ばれ話題になった。この流れに取り残されないようにと多くのレガシーなコラボレーションツールがとってつけたようにブログ機能やWiki機能を実装してそれをウリ文句にしているが、はっきり言ってそれらの機能で使い物になるものは皆無だと言って良いだろう。
残念ながらWeb2.0以前と以降ではシステムのアーキテクチャーが大きく変わってしまった。昔のアーキテクチャーで設計されたグループウェアや文書管理システムがどんなに頑張っても、今インターネットにあるような一般的でわかりやすく人を惹きつけるような機能を実装する事は難しい。
ちなみにそうしてとってつけたような機能は、(本来のグループウェア機能などの出来がなまじ良いだけに余計)見劣りするし、そもそもレガシー型システムを使い続ける限りユーザに発想の転換はおきないので受け入れられもしない。
実際、最終的にオープンソース化した企業(SocialText)やオープンソースソフトウェアを基にエンタープライズレベルの製品を作り上げた企業(TwikiとAcquia Drupalがその例だ)が最高点を出している。
と言っているようにEnterprise2.0へのアプローチはレガシーなグループウェアや文書管理システムの改良や拡張ではなく、インターネットでよく見かけるWeb2.0系ツールを企業向けにアレンジする方向性の方が成功確率が高い。
筆者の経験では、成功を収めているEnterprise 2.0事例では(もちろん、すべてではないが)、図で緑色になっている右上の部分「スイートスポット」寄りのプラットフォームを活用している場合が多い。
とDion Hinchcliffe氏が書いているが、私の経験上でも全く同じである。成功したユーザはインターネットで鍛えられたWeb2.0系のシステムをちょっとだけ企業内向けに手直しをして、そして自社の中でそれが最も適用しやすい部分に絞って使い込んでいるケースである。ちなみにこの“部分”という言葉は、機能面での一部こともあるし部署や人数的な面での一部のこともある。そしてそういう意味では、Dion Hinchcliffe氏の
市場には、まだ競争力のあるEnterprise 2.0製品を出す余地が残されている。
という意見にも同意だ。企業内で使えそうなアプリケーションがまだまだ埋もれているかもしれない。ネットの世界で次から次へと考え出されて生まれてくるアプリケーションを都度企業内でも活用・展開できないかと検討するのは決して無駄な作業ではない。
ただもっとも、Dion Hinchcliffe氏も
ソーシャルビジネスを考える上では、ツールは後から検討すべきものだ。
と言っているようにシステム(アプリケーション)ありきで検討するのは、典型的な失敗アプローチだということだけは忘れないように!
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