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 先日の「要件は“現行と同等”です って・・・」というエントリーで書きわすれたのだが、グループウェアの更改時に「既存の文書(データ)を全て新システムへ移行してください」というのは無駄でしかないので辞めた方が良い。

 グループウェアというものはなかなかに便利で手軽にいろいろなものを登録・保管しておける。しかしその手軽さ故に不要な情報や古くなって使えない情報もそのまま残りがちである。EUCなどと称してユーザに自由にデータベースを作成する権限などを渡していた場合はこの傾向がさらに強くなる。
 だから高い金額をかけてシステムを再構築する際には各データベースの文書をきちんと棚卸しして使われてないものや古いものは削除すべきだ。グループウェア上の情報にだって寿命があるはずで、この変化の激しい時代にそれはどんどん短くなっている。だいたい紙の文書だって保管期限があって数年で廃棄するのだから電子媒体だって同じ扱いを行って当然だ。

 実際にメールやスケジューラのデータまで全て新システムへ移行しろという要件が出る事は結構ある。スケジュールデータなんて一過性のフロー情報であってわざわざ新しいシステムへ昔の行動履歴を保管する必要はないはずなのに。そしてメールについても、POP3やIMAPなどの標準化されたメールを移行するのならともかくロータスノーツやマイクロソフトエクスチェンジなどの特定企業の独自フォーマットのメールを別のシステムに移行することを強要するのは辞めた方が良い。移行費用が膨大になるだけで得るものは少ない。
 メールというのは基本的にはフロー情報であって頻繁に蓄積&再利用するストック情報ではないはずだ。連絡やお知らせ、ニュースなどという寿命の短い短期的な情報を後から再利用するケースは少ないはずで、そんなメールの移行作業に莫大なコストをかけるというのが私には理解できない。ちなみにこれはフロー系情報全体にいえる話でメール以外の通達や連絡の掲示板やフォーラムについても基本はデータ移行対象を極力減らすべきだ。
 いやもちろん過去の経緯を調べたり以前と同じようなメールを再送するというケースは日常でよくあることで古いメールの再利用自体は頻繁に起こる。だからシステム切り替え後に古い前のシステムを3ヶ月とか半年とか残しておいて古いメールはそちらのシステムで確認し必要に応じてコピペ出来るようにする必要はある。メールで送られてきた大切な文書(ストック情報)を何度も再利用することも多いので個別メールをテキストやファイルにして書き出して保存できる機能も不可欠だ。
 移行作業と称して新システムのメールボックスに古いメールを全件コピーすることが無駄だと思っているだけだ。数千人の社員の数千通のメールを変換するのにどれだけのシステム切り替え時間とその検証作業の時間が必要になるか考えて欲しい。

 こうした移行に際して変換ツールを自社で開発しその存在を自慢するベンダーもいるが、そもそも自社の独自形式のメールを他社製のソフトに簡単に移行できるように技術開示する企業があるわけがなく変換ツールの信頼性など知れている。グループウェアベンダーの戦略として一旦導入したシステムを他社へ切り替えるコストを大きくするのは常道の戦略だ。ツールを使ってもその変換結果を検証するのはユーザの側の負担でもあるわけだがその覚悟がないなら全件移行なんて要件をきめてはいけない。

 もしいま使っているグループウェアのデータを全件移行したいというのが絶対の要件であれば別のソフトへの切り替えではなく既存ソフトのバージョンアップを選択すべきであるし、そうでなく何か他に解決すべき課題があってグループウェア製品を乗り換えるのであれば移行に掛けるコストや体力は極力減らすべきだ。

yoi

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吉川 日出行

吉川 日出行

みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

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