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 このところインターネットのソーシャルメディア系の話ばかり書いてきたが、今日は本来の企業内の情報共有や情報流通の話題に戻す。

 私の専門とする分野はナレッジマネジメントだが、どうやらこの分野では何年かおきに周期的に同じようなテーマがブームになる傾向がある。例えば検索エンジンは90年代後半に登場して2002年頃に2回目のブームそして昨年までが3回目のエンタープライズ・サーチブームだった。でそんな企業内の情報共有のサイクルでいうと今はどうやら「グループウェア」がホットのようだ。

 昨年あたりから急にグループウェアの見直しや再構築についての問い合せや相談あるいは実際の導入作業に関する提案依頼などが増えてきている。その背景にはどうやら日本のグループウェア市場でこれまで圧倒的なシェアを持っていたロータス・ノーツが時間経過と共に老朽化したりサポート切れになったという事情もあるらしい。
 さてこういうグループウェアの見直しという問合せを受けて訪問し打合せをする際にちょっと気になる事がある。よく「新グループウェアの要件は“現行と同等”です」「既存のデータを全て新システムへ移行してください」というのに出くわすのだ。現行と同等で全データを移行するのならそれは単なるバージョンアップなので私の出番はないので丁重にお断りを申し出るのだが、正直新グループウェアが今と同じでこの会社は本当に良いのだろうか、と内心では思っている。

 この技術進化の早い時代では新しい時代背景にあわせた新しいコンセプトやツールが次々と登場している。グループウェアの属する情報系システムでは特にそうだ。今までの実装方法がそうだったからとこれからもその方法がベストだとは言い切れないはずだ。
 例えば規定集やマニュアルなどの文書管理をロータス・ノーツのようなグループウェアで行っている会社は多いが、ロータス・ノーツでそうした文書を共有しようとするとワードやエクセルで作った文書を添付ファイルという形式で貼り付けて行う事になる。これだと文書を開いてみるために1クリック余計に必要だし、検索や並べ替えのことを考えても使い勝手が悪い。こういうのはグループウェアではなくファイルサーバベースで実装してインターフェースをWebブラウザにしたほうが使い易い可能性はないのか。あるいは最近の複雑な規定ではあちこちで引用や参照が行われるが、これはいっそWikiベースで書き直した方がユーザにとって理解しやすいものになるのではないか。そういうことをきちんと検討したほうが良い。

 ワークフローもそうだ。過去のワークフローがグループウェア上で実装されていたからといって次もそうしないといけない理由が良く分からない。今時は基幹システムですらブラウザで操作する時代だ。ワークフローもWeb系システムで作り直した方が他のシステムとの連携などが容易になることは多い。

 こうした要件の整理以外にそもそもグループウェアとファイルサーバの使い分けはどうするのかとか、なぜか日本では別システムになっていることが多いスケジュール管理システムをどうするのかとか、せっかく高いお金をかけてグループウェアを入れ替えるならその機会に検討すべき項目は多いはずなのに、そういう話をグループウェアの担当者から聞く事は少ない。

 忙しいからと言ってそういう検討を手抜きしてしまうようではグループウェアユーザである現場の生産性はいつまでたっても上がらない。

yoi

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吉川 日出行

吉川 日出行

みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

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