« 2006年10月28日

2006年10月31日の投稿

2006年11月1日 »

 今朝の日経新聞朝刊のスポーツ面で、前シンクロナイズドスイミングの日本代表ヘッドコーチの井村雅代さんが書いたコラムが「『世界』知り、知らせる」だった。
 井村さんは、日本のシンクロナイズドスイミングを弱小時代から世界で優勝するところまで育て、マイナースポーツをメジャーにした方で「勝てる選手の作り方」「優秀な選手を生み出すために仕掛けや仕組み」を世界的レベルで理解されている国内では数少ないすばらしい指導者だと思う。私も自分がアスリートであった現役時代には、井村さんの記事を漁るようによんで、そこから世界に通じる選手になるためのアイデアをひとつでも見つけ出そうと躍起になったものだ。
 さて、そんな井村さんの今日のコラムには興味深い一節が、

 特に芸術の世界では、国内で評価されず、外国で高評価を得たおかげで、日本でも良さが認められるということがよくある。なぜか日本人は日本人の目を頼りにした評価に信を置かない傾向があるのだ。

 同感である。競技ダンスの世界でも同じような現象は結構あって、国内で評価されず無名であった選手が海外の大会である日急に良い成績を取ってそれ以降は国内でも評価が上がった例をいくつも見たことがある。こういうときに私も含めてつくづく日本人は自分に自信を持てない民族なんだと思ったものだ。

 さてスポーツの話はこれくらいにして、話をITの分野に移してみる。ITでも、舶来もののコンセプトや欧米で成功した事例のみを持て囃す傾向が日本にはあるのではないだろうか?例えばERP。パッケージを使うことで他社のベストプラクティスを利用するというコンセプトは数年前のERPブームの前からあったもので、実際に当時既に国産の良いパッケージソフトもあったと思う。しかしERPが爆発したのは、欧米のある企業の成功事例が取り上げられたからだといわれる。これも井村さんが指摘したのと同じ現象ではないだろうか?
 しかしながらIT業界では、日本人の特性のもうひとつに、我々のやり方は特殊であるといいたがる島国根性もある。個別具体的な話になると今度は逆に、我々のやり方は違う、日本には日本の商慣習がある、昔からずっと工夫してきたそれは正しい、というような発言が急速に増えるのだ。

 別にどちらが正しいとも言わないが、同じ人があるときは欧米信奉あるときは日本の独自性の主張をするのを見ると奇異な感じがする。またこうしたブレが激しくなると、それにいちいち付き合っているとまともなプロジェクト運営はできなくなるしその結果できあがるモノもどっちつかずな使えないものになることが多い。
 少なくともある施策をうったり特定のシステムを作るときには、それが終わるまではどちらか一方にスタンスをおき続けて話を進めるべきであろう。ITやケイエイの分野では「『世界』知り、捨てる」ことも時には重要だと思う。

yoi

« 2006年10月28日

2006年10月31日の投稿

2006年11月1日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

吉川 日出行

吉川 日出行

みずほ情報総研勤務。情報共有や情報活用を主テーマにコンサルティングや新ビジネスモデルの開発に携わっている。

詳しいプロフィール

カレンダー
2013年5月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
knowledge
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ