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2006年10月13日 » |
ここ数日ブログのテーマであるナレッジマネジメントに関係のないエントリーが続いていたので、今日はテーマをナレッジマネジメントにもどして書いてみる。
先日同僚が貸してくれたある本に「馬鹿はうつる」という一節があり、かなりのインパクトを受けた。その本で著者は、例としてオーケストラなどの協調的作業の場ではひとりでもレベルの低い奏者が入ると全体のレベルがそれにあわさるという話をあげていた。そして芸術家が、こういったレベルは一番低い人にあさわる(=馬鹿がうつる)現象を嫌って馬鹿とは一緒に仕事をしたがらないという意見を紹介していた。
私がこの一節を読んだときに考えたのは、ディスカッションやブレインストーミングといった企業内のナレッジマネジメント的な場も同じだろうか、ということである。たしかに会議などの場で一人だけ前提知識が無い出席者がいて、いちいち経緯や背景の補足説明に話題が戻ったり、目的の意識レベルの違う参加者によって議論がかみ合わなかったりして場が意味のないものになってしまった経験を1度ならずとしたことがある。
ナレッジマネジメントの権威である伊丹先生と野中先生は「場のダイナミズムと企業」という本の中で
「創造する力」は単に個人の中にあるのではなく、個人と個人の「関係」、個人と環境との「関係」、すなわち「場」から生まれる。
と場の重要性を述べている。暗黙知と形式知の発展的円環運動や共同化や内面化のプロセスで場は重要な役割を果たすとも書かれている。が、この場の価値は参加者のうち最もレベルの低いものに影響されやすいのではないだろうか。この本には同じく「場」のマネジメントとして、場の設定マネジメント(基本要素の設定、基本要素の共有の働きかけ、ミクロマクログループのあり方への工夫)と場のプロセスのマネジメント(かき回す、切れ端を拾い上げる、道をつける、流れを作る、留を打つ)の必要性ややり方も解説されているが、場の参加者にレベルの低い者が含まれていた場合いくらこのような支援作業を行っても限界があるのではないだろうか?場の設定の際の参加者の選定が最も重要だとも思うのであるが、残念ながらこの面についての解説はこれまであまり目にした事が無い。
場のマネジメントとして、馬鹿をうつさない良い方法があれば是非知りたい。どなたか良いアイデアをお持ちの方がいれば是非教えていただきたい。
仕方が無いので視点を「場」の運営者側から参加者側に変えてみる。たまたま自分が参加した場のレベルが自分よりも上で自分が一番下の立場(ここでいう馬鹿)になってしまった場合はどうすればよいのだろうか?恐ろしいことに世の中には上には上がいるという現実があって、誰でもいつでもその場で一番下の立場になる場面はありえる。ある分野を極めた専門家でもちょっと周辺分野に行けば素人同然でそこでは最下層レベルになってしまう可能性は高い。そういう場面となってしまった場合の参加者側の対処法は、無言になること、ぐらいしかないのではないか。場でのやり取りに対しては必至にうなずきメモをとり必要なことを後で調べて次の機会までに自分のレベルを上げていくしかない。
ナレッジマネジメントで企業に各種の場を作る仕事をやっていると、推進側からは場への参加者(発言者)が少ないと嘆かれることが多い。しかし参加者が場のレベルを落とさないためにと配慮して発言をしないという心理状況は充分加味する必要があるし、その場ではリードオンリーでもその背景にレベルを上げようと必死に努力する姿があればROMも捨てたものではなさそうだ。
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