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エレベータの事故で製造会社であるシンドラー社の管理体制が問われている。過去にも細かい故障やトラブルがかなりの回数発生していたというのである。
こういった細かいトラブルをきちんと管理していればあのような重大事故には至らなかったという意見があるが、これはハインリッヒの法則と呼ばれる労働災害についての統計分析から得られたノウハウを根拠にしている。ハインリッヒの法則は、1:29:300の法則とも呼ばれ、1件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、その裏にはケガはないがヒヤッとした300件の体験があると分析結果が元になっている。
こうした教訓をもとに製造業では昔から現場では「ヒヤリ・ハット集」というものの整備や管理が行われてきた。これはその名前のとおり日々の業務の中で「ヒヤリ」とした体験や「ハット」した体験を収集し、後で専門部署が分析をしたり現場で読み返して再発を防止するというように使われる。ところがバブル崩壊後の不況期にこうした直接的に数字に繋がらない分野のコストをカットする動きが一部の企業にあるのも事実のようだ。
今回の事件のように「ヒヤリ・ハット集」が収集されていない、引継ぎがされていないというのは問題外であるが、現場が書いた「ヒヤリ・ハット」を溜めるだけで分析や活用ができていない企業は増えている。また昨今の成果主義の悪しきあおりを受けてマイナス評価になりかねない「ヒヤリ・ハット」を現場や実際の担当者が出したがらないという風潮もあるようだ。
「ヒヤリ・ハット集」は昔から日本企業で地道に育んできたナレッジマネジメントだと思うので、こういった機会に各企業で是非見直しをしてより安価で効果的に実施する手段を考えていただきたい。“収集”や“分析”をする部分にはITが使えると思う。分析したり集めた結果を“配布”“公開”する部分もだ。但しそもそもの1:29:300の法則という考え方を“啓蒙”することや“内面化”することはやはりITではなく人間で行なうしかないのも事実である。苦しい経営環境でもこういった部分への人的投資は続けて欲しいものである。最終的にはそれが顧客支持を集め企業価値を高めることになるのだから。
ちなみに「ヒヤリ・ハット」は製造現場だけのものではなく、サービス分野等でも活用できる。例えば、企業の製品やサービスに対して不満を持った顧客のうちクレームを言ってくるのは4%程度だが、その裏には96%の無言のユーザがいるとの統計もある。こう考えるとサポートセンターに寄せられる苦情はないがしろに出来ないし、営業の失注分析などもこの法則を使って考えることができるはずである。
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