『ビジネス2.0』の視点:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 『ビジネス2.0』の視点

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

« 2012年7月19日

2012年7月20日の投稿

2012年7月21日 »

Open Compute Projectとは

米フェイスブックは2011年4月7日、オレゴン州プラインビルに建設した自社データセンターを公開し、同データセンターで採用しているエネルギー利用効率の高いサーバーとデータセンターの仕様やベストプラクティスを業界全体で共有するための取り組みである「Open Compute Project」を発表しました。

「Facebook」のサービスの提供するために独自設計をし、既存のデータセンターと比べエネルギー効率を38%向上、費用を24%削減、そして、電力効率の指数のPUEは1.07と非常に効率の高い数値を示しています。

「Open Compute Project」では、オープンソースソフトのように多くの人が実際に構築運用で使うことで改善が図られ、大量に同じ使用のサーバーの製造や調達が可能となり、業界の標準化も進むとともに大規模データセンター構築が容易になります。

今回のプロジェクトの最初の取り組みとしては、今回のデータセンターで使用しているサーバーのマザーボードや電源、筐体、サーバーラック、データセンターの設計に関する仕様やCADファイルなどをGitHubで公開しています。

今回のプロジェクトでのデータセンターの建設にあたっては、米AMD、米Dell、米Hewlett-Packard、Intel、そして、SkypeやZyngaなどが参加しています。今後はこれらの事業者が、プロジェクトの仕様に基づいたサーバの製造などを行っています。

フェイスブックが「Open Compute Project」を推進する背景

フェイスブックは、「Open Compute Project」を推進する理由は、「Facebook」の9億人以上のユーザを抱え、Facebook は毎月数千億を超えるメッセージを処理していくために、大規模データセンターを構築し、サービス用に標準化された大量のサーバを安価に調達することが必要となっているためです。データセンターへの投資は大規模であるため、調達コストと構築コストは事業の収益を大きく左右します。

フェイスブックはこれまで、2011年4月にオレゴン州プラインビルに「Open Compute Project」の最初の取り組みとなるデータセンターを開設、ノースカロライナ州フォレストシティに、世界有数のエネルギー効率を誇るデータセンターを開設しています。「Open Compute Project」バージョン2のウェブサーバが大規模に配備されるケースとしては、フォレストシティが初めてとなります。

フェイスブックは、「Open Compute Project」によりデータセンターのオープンソース化を推進することで、様々な事業者が参加し、本仕様に適合させていくこおで、フェイスブックが主導するプロジェクトとなり、より大規模なデータセンターを規模の経済を生かし低コストで構築する環境を整えることができるようになります。

また、こういった活動は、質の高いエンジニアにとってイメージ向上につながり、優秀なエンジニアの確保にもつながると考えられます。

「Open Compute Project Foundation」の発足

フェイスブックは、さらにフェイスブックが中心となり2011年10月27日、「Open Compute Project」を推進するための非営利組織「Open Compute Project Foundation」を発足しています。

Open Compute Project Foundationの公式メンバーにはFacebookのほか、米Intel、台湾ASUSTeK Computer(ASUS)、米Dell、中国Huawei Technologies(華為技術)、米Red Hat、米Cloudera、中国Baidu(百度)、米Mozilla、米Rackspace Hosting、米Netflix、米Goldman Sachs、NTTデータなどが参加しています。

本Foundationの活動の方針については、BYLAWS OF OPEN COMPUTE PROJECT FOUNDATION(PDF)」から確認することできます。

「Open Compute Project Foundation」の活動は、フェイスブックの設計図をオープンソース化して公開するだけでなく、大規模データセンター事業者が集まり、データセンターに最適なハードウエア仕様を協議し、実際の普及を推進する団体として、取り組みが進んでいます。

「OCPソリューション・プロバイダー・プログラム」でハードウェアの調達構造が変化

「Open Compute Project Foundation」は2012年5月2~3日、米テキサス州サンアントニオで「Open Compute Summit」を開催しました。

本Summitでは、ストレージやマザーボードに関する新施策や、「Open Compute Project」仕様の「Open Rack」に関する詳細、そして各社の「Open Rack」への対応などが発表されています。

ここで注目されるのは、「Open Compute Project」仕様のサーバーをデータセンター事業者に納入する「OCPソリューション・プロバイダー・プログラム」です。

本プログラムは、「Open Compute Project」仕様のサーバーなどを製造する企業を「Open Compute Project」が斡旋するという取り組みです。 このプログラムの中心に参加しているのが、台湾のクアンタ・コンピュータ(Quanta)やウィストロン(Wistron)などのODM(相手先ブランドによる設計製造)事業者です。

ODM事業者は、本プログラムに参加することよって、データセンター事業者から直接サーバーの製造などを請け負うことができるようになります。つまり、大手ベンダーを介さずに、ビジネスができるようになり、これまでのサーバーなどのハードウェア調達のサプライチェーンの構造が大きく変わることになります。

「Open Compute Project」から始まる新たなエコシステム

「Open Compute Project」によりデータセンターのオープンソース化を推進することで、様々な事業者が参加し、プロジェクトのガイドラインに合わせた、それぞれのビジネスを構築し、データセンターレイヤのエコシステムを形成が進んでいくと考えられます。

このエコシステムによって、フェイスブックは自社に有利な仕様で安価にデータセンターを構築でき、多くの事業者はフェイスブックのデータセンター建設にあたっての大量納品が可能となり、双方にとってメリットの高いものとなるでしょう。

つまり、これまでのハードウェアを販売する事業者が主導するモデルから、オープンソース化により、データセンター運営事業者が主導するモデルへと大きく方向転換する動きが出てきているといえるでしょう。

この流れは、爆発的にWeb スケールでの進化し、クラウドが急速に成長する中において、これまで紹介してきたオープンソースのクラウド基盤ソフトウェアである「オープンクラウド」がプロプライエタリ中心だったクラウドビジネスのモデルを大きく変えようとしたように、データセンター事業者がエコシステムのハブとなり、クラウドインフラを支え、大きなイノベーションを生み出す時代に変化していくのかもしれません。

かってな推測ですが、グーグルが「Google Compute Engine」の提供を発表したように、フェイスブックも大規模なデータセンターと豊富なコンピューティングリソースを駆使しIaaS市場に参入する日も、そう遠くはないのかもしれません。

 

Open Compute Project に関する関連記事(参考記事)

※クラウド・エコシステムに関するブログ

  • (1)クラウド・エコシステムとは何か? (2012.5.14)
  • (2)登場の背景 (2012.5.15)
  • (3)注目される6つの理由 (2012.5.16)
  • (4)SIビジネスの行方 (2012.5.17)
  • (5)コミュニティの存在感 (2012.5.20)
  • (6)クラウドを推進する団体 (2012.5.21)
  • (7)オープンクラウドの展開 (2012.5.23)
  • (8)クラウド・エコノミクスの視点 (2012.5.24)
  • (9)エコシステムにおけるソーシャル・キャピタルの役割 (2012.5.25)
  • (10)グローバル市場へ (2012.5.28)
  • (11)全体最適化志向の「組み合わせ型」モデルへ (2012.5.29)
  • (12)産業構造の変化と新規ビジネスの創出 (2012.5.30)
  • (13)経営者の視点 (2012.5.31)
  • (14)ベンチャー企業の役割 (2012.6.1)
  • (15)政府の役割 (2012.6.4)
  • (16)自治体クラウド (2012.6.5)
  • (17)教育クラウド (2012.6.7)
  • (18)医療クラウド (2012.6.8)
  • (19)コネクテッド・エコノミー (2012.6.11)
  • (20)ユーザドリブン (2012.6.12)
  • (21)クラウド・イノベーションによる新たな価値創造 (2012.6.14)
  • (22)ベンチャー企業とベンチャーキャピタル (2012.6.15)
  • (23)ソーシャルゲームビジネス<前編>(2012.6.19)
  • (24)ソーシャルゲームビジネス<後編>(2012.6.20)
  • (25)電子書籍ビジネス<前編>(2012.6.20)
  • (26)電子書籍ビジネス<後編>(2012.6.21)
  • (27)スマートテレビの台頭(2012.6.25)
  • (28)スマートテレビ市場をリードするのは?(2012.6.26)
  • (29)スマートテレビのプラットフォーム覇権争い(2012.6.27)
  • (30)スマートテレビ向けの開発者獲得競争(2012.6.28)
  • (31)スマートテレビのこれから(2012.6.29)
  • (32)加熱するIaaSレイヤ競争(2012.7.2)
  • (33)クラウド上で繰り広げられるエコシステム間競争(グーグル、AWS編)(2012.7.3)
  • (34)エコシステムで対抗軸を示すOpenStack、CloudStack(2012.7.4)
  • (35)オープンクラウドを推進するOpenStack、CloudStackとは(2012.7.5)
  • (36)オープンクラウドがAWSを超える日は?(2012.7.6)
  • (37)成長するPaaS市場(2012.7.9)
  • (38)OpenPaaSの登場(2012.7.11)
  • (39)PaaSを展開する国内事業者(2012.7.12) 
  • (40)PaaSレイヤのエコシステム(2012.7.13)
  • (41)国内の郊外型データセンターの動向(2012.7.17) 
  • (42)国内の首都圏データセンターと市場動向(2012.7.18) 
  • (43)グローバルデータセンターの動向(2012.7.19) 
  • (44)Open Compute Project (2012.7.20)
  •  

     

    ※担当キュレーター「わんとぴ

    OneTopi「クラウド」@cloud_1topi(クラウド)   OneTopi「情報通信政策」@ict_1topi(情報通信政策) OneTopi「電子書籍」@ebook_1topi(電子書籍)

    OneTopi「モバイル」@mobile_1topi(モバイル) OneTopi「SmartTV」@smarttv_1topi(スマートテレビ)

    OneTopi「地域活性化」@localict_1tp(地域活性化)OneTopi「スマートシティ」@smartcity_1tp(スマートシティ)

    MASAYUKI HAYASHI

    « 2012年7月19日

    2012年7月20日の投稿

    2012年7月21日 »

    » このブログのTOP

    » オルタナティブ・ブログTOP



    プロフィール

    林 雅之

    林 雅之

    ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
    国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
    著書『オープンクラウド入門(インプレスR&D)』『「クラウド・ビジネス」入門(創元社)』

    詳しいプロフィール

    Special

    - PR -
    最近のトラックバック
    カレンダー
    2013年5月
          1 2 3 4
    5 6 7 8 9 10 11
    12 13 14 15 16 17 18
    19 20 21 22 23 24 25
    26 27 28 29 30 31  
    business20
    Special オルタナトーク

    仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

    カテゴリー
    エンタープライズ・ピックアップ

    news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
    単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

    news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
    上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

    news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
    「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

    news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
    自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

    news094.gif なんて素敵にフェイスブック
    夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

    news094.gif 部下を叱る2つのポイント
    叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

    news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
    会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

    オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


    サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ