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クラウド・エコシステム(16)自治体クラウド

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第一回はクラウド・エコシステムの概要、第二回は登場の背景、第三回は注目される6つの理由、第四回はSIビジネスの今後、第五回はコミュニティの存在、第六回はクラウドを推進する団体、第七回はオープンクラウド、第八回はクラウド・エコノミクス、第九回はソーシャルキャピタル、第十回はグローバル市場、第十一回は組み合わせ型モデル、第十二回は産業構造の変化、第十三回は経営者の視点、第十四回はベンチャー企業の役割、そして、第十五回では政府の役割について整理をしました。

今回は、地域におけるコミュニティクラウド、自治体クラウドについて整理をしたいと思います。公共分野では、自治体クラウドについて注目度が集まっており、自治体クラウドへの円滑な移行と民間事業者の参入により経済波及効果が期待されています。

自治体クラウドとは

自治体クラウドとは、クラウドを電子自治体の基盤構築にも活用していこうという取り組みです。財政規模が少ない地方公共団体では、情報システムの集約と共同利用を合わせた取組みを通じて、効率的な電子自治体の基盤構築の実現、さらに便利な行政サービスの提供が期待されています。

自治体クラウドは、クラウド技術を電子自治体の基盤構築に導入することで、情報システムの効率的な整備や運用、そして住民サービスの向上などを図ることを目的としています。

自治体では、財政難が続く中、自治体ごとに情報システムを構築運用することが困難な状況となっており、自治体業務へのクラウド導入によって、システムのオープン化や標準化を進めることで、スケールメリットをいかし、地域全体におけるコスト負担の軽減が期待されます。

現在、全国には、約1,700の市町村があり、これらの全国の自治体がクラウドを活用することで、システム共通化によるコスト削減や業務の効率化なども図ることが可能となります。

また、住民情報の喪失防止や行政機能の迅速な回復、そしてサービスの継続性の確保など耐災害性の強化の観点からも活用することができます。

さらに、クラウドに蓄積されたデータを連携させることによって、利便性を向上させ、付加価値のある行政サービスを提供することもできるようになります。

自治体クラウドがクラウドを導入する場合の形態として、

・複数の自治体が共同で運用を委託する形態
・クラウド事業者が提供する自治体向けのクラウドを個々の自治体が選択して導入する形態

などがあります。

総務省の自治体クラウドの取り組み

総務省では、2009年度から北海道や京都府や佐賀県など6道府県78市町村が参加する自治体クラウド開発実証事業に取り組んでいます。地方公共団体の情報システムをデータセンターに集約し、市町村が共同利用することで、情報システムの効率的な構築と運用を実現するために、各自治体が改修することなく共同で利用できるパッケージソフトの検証、導入の課題や効果の検証するための実証実験です。

これらの開発実証事業での取り組み成果を踏まえ「自治体クラウド開発実証に係わる標準仕様書(平成22年度版)」を公表し、開発実証でのプロセスや結果から明らかになった事項などを踏まえ標準仕様書を作成し、自治体におけるクラウド技術の可能性や、災害時への対応など自治体クラウドの特性を考慮した内容も記述されています。

自治体クラウド導入による経済波及効果

総務省は2010年5月6日、当時の原口一博総務大臣が「原口ビジョンⅡ 」を公表し、自治体クラウドの2020年の成果目標を示しました。自治体クラウド導入などによる業務改革を通じて、2015年までに情報システム等への経費の30%程度(1,200億円/年)以上の経費を削減し、より効率的な電子自治体の基盤構築への再投資等を通じて地域主権型社会を構築し、3,300億円程度の経済波及効果が見込まれるとしています。

自治体クラウド推進本部の設置と推進に向けた取り組み

総務省は2010年7月30日、省内横断的に自治体と協力して自治体クラウドの取り組みを推進するため、当時の原口総務大臣を本部長とする「自治体クラウド推進本部」を設置しました。同本部には、自治体クラウドの全国展開に向けての検討を進めていくにあたって有識者懇談会が設置され、導入に向けた検討が進められてきました。

震災後の2011年7月7日には、「自治体クラウド推進本部有識者懇談会とりまとめ」及び「クラウドサービス導入による効果提案項目(案) 」を公表しました。

効果提案項目(案)では、自治体がクラウドサービスの導入を行う際に、サービスの向上、業務改革支援、情報セキュリティやシステム性能向上などの導入効果を検証するなどの参考資料として位置づけています。

懇談会とりまとめでは、クラウド導入にあたってのカスタマイズの制約や相互運用性の確保や住民データのプライバシー確保などの情報セキュリティ対策や法的留意点などの諸課題を整理しています。自治体クラウドの全国導入を加速するために、導入効果に係わる検討項目の整理や共同化の計画策定や財政支援などの導入環境の整備についての方向性が示されています。

自治体クラウドの円滑なデータ移行や連携に向けて

また、2011年7月22日から、地方自治体へのクラウドサービス導入に向け、クラウドサービス間の相互運用性の確保のための検討を行うことを目的とし、自治体クラウドの円滑なデータ移行等に関する研究会が開催されています。

2012年5月17日には、自治体クラウド推進事業(団体間の業務データ連携に係る検討・実証)の成果報告書が公表され、クラウド環境下において、自治体が様々な団体との間で円滑な業務データ連携を実現できる環境を整備していくため、地方自治体の協力も得ながら、連携データ項目や連携機能・方式等の検討・実証を実施結果が報告されています。

震災を機に自治体クラウドの導入が加速

震災直後、津波による被害で多くの公共施設が流失、破壊され、住民生活に関わる多くの基本データが失われました。本人性の確認や、被災者の安否や所在の確認が困難となり、医療や介護などでの診療や心身のケア、子どもの教育や各種生活支援の実施や行政手続を進める上で支障が生じました。

宮城県南三陸町の役場は、建物が全壊して庁舎全体が津波により水没。住民関連データを格納したサーバーが流され、電子化された戸籍の原本データが消失しました。紙で保管していた土地台帳なども津波で流され、生活を支える行政手続が困難となるという事態が生じました。宮城県の女川町や岩手県大槌町などの3市町でも住民基本台帳サーバーをはじめとしたハードが破損しデータが消失するなど、被災各地の自治体で、情報システムの破壊や停止などの大きな被害を受けています。

戸籍のデータは、地方法務局で保管していた戸籍副本をベースに復元できたものの、個人情報保護など制度上の障壁もあり復元するまでに相当の時間を要しました。そのため、紙台帳のデジタル化やデータの安全な保管など、災害時の業務継続や行政機能を早期に回復するための行政情報システムの見直しの必要性が浮き彫りとなっています。

総務省は4月13日、東日本大震災で被災した11道県の227市町村を対象としたICTの利活用による被災地域の復興対策「被災地域情報化推進事業」の交付事業を計29件を決定しました。今回決定した補助対象事業の事業総額は82億7000万円となり、政府が各事業費の3分の1、合計27億5500万円を補助します(関連記事)。

半数以上を占める15件が、「自治体クラウド導入事業」で、事業総額は、自治体クラウドの区分では最大の6億8800万円となります。

岩手県大槌町・普代村・野田村は3町村共同で、基幹系となる住民情報・税・福祉・保険/年金などと、内部系情報システムの財務会計・人事給与などをクラウドへ移行します。

一方、釜石市は、自治体クラウドを単独で導入し、さらに、災害への備えとデータのバックアップの強化のため、住民基本台帳のデータを北九州市に保管することを決めています。自治体クラウドと遠隔の自治体にデータを保管する二重の安全対策を講じる自治体は全国初の取り組みとなります。

自治体クラウドと地域社会

政府の補助金事業を契機に、被災地の自治体での自治体クラウドへの移行が進み、さらには、被災地の自治体以外への水平展開も可能となり、サービスの低価格が進むことが期待されます。また、自治体間のデータ連携が進めば、住民の行政サービスの利便性向上にもつながり、さらには、クラウド基盤構築への再投資を通じて、経済波及効果への期待にもつながります。

自治体クラウドの普及は、地域社会において住民の利便性向上と、社会社会経済の発展にとこまで寄与できるのか、公共サービスにおけるクラウド・エコシステムの取り組みは、今後の地域におけるクラウド利用のあり方を占う上でも重要な取り組みとなるでしょう。

 

※担当キュレーター「わんとぴ

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