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20年以上断続的にこのブログを書き継いできたインフラコモンズ代表の今泉大輔です。NVIDIAのフィジカルAIの世界が日本の上場企業多数に時価総額増大の事業機会を1つだけではなく複数与えることを確信してこの名前にしました。ネタは無限にあります。何卒よろしくお願い申し上げます。

BMWの自動車3万台の生産に貢献したヒューマノイド「Figure 02」から日本の自動車業界が学べること

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BMWの米国スパータンバーグ工場で、人型ロボット(ヒューマノイド)が実際の自動車生産ラインに入り、3万台以上のBMW X3の生産に貢献しました。

担当したのは、米国のロボティクス企業Figure AIが開発した「Figure 02」です。

BMWとFigure AIが公表した2025年の運用実績は、非常に具体的です。

  • 生産に貢献した自動車:BMW X3、3万台以上
  • 取り扱った板金部品:9万点以上
  • ロボットの稼働時間:1,250時間以上
  • 歩行距離:約200マイル(約320km)
  • 歩数:約120万歩
  • 勤務形態:月曜日から金曜日、1シフト10時間

これは、展示会で数分間のデモンストレーションを見せたという話ではありません。

実際の自動車工場で、ヒューマノイドを既存の生産設備と連携させ、長期間にわたり部品の取り出しと位置決めを行わせたという話です。

ただし、3万台という数字は、Figure 02が自動車を3万台組み立てたことを意味しません。BMW X3の車体を製造する工程の一部を担当し、その結果として3万台以上の生産に貢献したという意味です。

今回の事例が重要なのは、ヒューマノイドが実際の量産現場で働くために、何が必要なのかを、具体的な技術要件と運用実績から理解できることです。

自動車メーカーや自動車部品メーカーの生産技術者にとって、ここには非常に多くの学ぶべきことがあります。

今回は、BMWとFigure AIの公式資料を基に、Figure 02が工場でどのような仕事をしたのか、なぜその仕事が難しいのか、既存の産業用ロボットと何が違うのかを解説します。

自動車工場ヒューマノイドBMW.jpeg

BMW公式のYouTube動画

BMW Group公式動画:Humanoid Figure 02 robots tested at BMW Group Plant Spartanburg

https://www.youtube.com/watch?v=xLVm-QKEZSI

この動画は、BMWが2024年8月に公開した、Figure 02の初期実証の様子です。2025年に公表された1,250時間の稼働実績そのものを記録した動画ではありませんが、ロボットが担当した作業の内容を理解できます。

注目していただきたいのは、ロボットが歩く姿そのものではありません。

板金部品をつかみ、向きを調整し、溶接設備の治具へ正確に置く動作です。

ロボットは、ただ部品を運ぶだけではありません。部品を決められた位置に、決められた向きでセットしています。

この作業の精度が、後続の溶接工程の品質に関わります。

従来の産業用ロボットが得意としてきた高精度な位置決めを、人間のような身体構造を持つヒューマノイドが、歩行や姿勢制御と組み合わせて行っている点が重要です。

1.Figure 02が担当したのは、車体溶接工程の板金部品のセット

BMWのスパータンバーグ工場は、米国サウスカロライナ州にある自動車工場です。

Figure 02が担当したのは、車体製造工程における板金部品のハンドリングです。

基本的な作業は、次のような流れです。

① ラックや部品容器から板金部品を取り出します。

ロボットは対象となる部品の位置を確認し、手で把持します。

② 部品を溶接治具まで運びます。

把持した部品を落とさないように、腕や手首の位置を制御しながら移動します。

③ 決められた位置と向きで部品をセットします。

溶接治具に対し、板金部品を要求される精度で配置します。

④ 従来の産業用ロボットが溶接します。

Figure 02が部品を配置した後、既存の6軸産業用ロボットが溶接を担当します。

この役割分担がポイントです。

Figure 02が溶接そのものを行ったわけではありません。すでに高い性能を持つ産業用溶接ロボットの前工程を担当しました。

つまりBMWは、既存の産業用ロボットをヒューマノイドに置き換えたのではなく、既存の自動化設備が得意とする仕事と、ヒューマノイドが担当できる仕事を組み合わせたのです。

これは、今後のフィジカルAI導入を考えるうえで、非常に参考になる発想です。

2.量産工場では「84秒のタクト」と「5mmの位置決め精度」が要求された

Figure AIは2025年11月19日、BMW工場での運用結果を公表しました。

その技術報告で特に興味深いのが、BMWの生産現場が要求した性能です。

Figure AIは、この作業を評価するために、三つの重要なKPIを設定しました。

評価指標

公表された要求・目標

サイクルタイム

1サイクル全体で84秒

部品セットの所要時間

37秒

部品の配置成功率

1シフト当たり99%超

人による介入

1シフト当たりゼロを目標

さらに、部品の位置決めでは、5mm以内の許容誤差で、約2秒という短時間に配置することが技術上の課題になりました。

ここでいうサイクルタイムとは、部品の取り出しから配置を含む一連の工程に要する時間です。

自動車工場では、ロボットが作業を正しく実行できるだけでは十分ではありません。

決められた時間内に作業を終えなければ、後続の工程を待たせることになります。

例えば、ロボットの作業に予定より10秒余計にかかる状態が続けば、それがライン全体の生産能力に影響する可能性があります。

一方、速度だけを優先して部品の位置決めが不正確になれば、溶接工程で問題が生じます。

つまり、ロボットには速度と精度の両立が求められます。

ここで注意したいのは、上記の数値はFigure AIが公表した要求条件や目標であるということです。すべての指標について、全運用期間の実測達成率が公開されているわけではありません。

しかし、実際の量産ラインへ導入するために、どの程度の性能が要求されたのかは明確に示されています。

そして、このような要求があるからこそ、実際の自動車工場でのヒューマノイド導入は難しいのです。

参考:Figure AI公式技術報告「F.02 Contributed to the Production of 30,000 Cars at BMW」

https://www.figure.ai/news/production-at-bmw

3.従来の産業用ロボットと何が違うのか?

自動車工場は、ロボットによる自動化が最も進んでいる産業分野の一つです。

塗装、溶接、部品搬送など、多くの工程で産業用ロボットが使用されています。

例えば、6軸の産業用ロボットは、決められた位置にある部品を高い精度で扱うことができます。

作業環境が整い、対象となる部品の位置や姿勢が一定であれば、非常に高い生産性を実現できます。

それに対して、ヒューマノイドが狙っているのは、人間の作業を前提として作られた環境の中で、一定の柔軟性を持って作業を実行することです。

既存の工場には、人間が部品を取り出すためのラックや容器、人間が通る通路、人間の手が届くように配置された設備があります。

これらすべてを、ロボット専用に作り直すと多額の投資が必要になる場合があります。

ヒューマノイドは、人間に近い身体構造を使うことで、既存の設備を活用できる可能性があります。

ただし、どの工場でもヒューマノイドが最適というわけではありません。

同じ動作を高速かつ高精度で繰り返す工程なら、従来の産業用ロボットの方が適している場合があります。

床面が整った搬送工程では、車輪型のAMRやAGVが合理的な場合もあります。

ヒューマノイドが価値を持つのは、人間用に作られた設備を利用する必要があり、作業の位置や内容に変化があり、従来方式による自動化が難しい場面です。

BMWの事例が示しているのは、ヒューマノイドを工場のすべての工程へ投入するのではなく、導入する意味のある工程を選ぶことが重要だという点です。

4.難しいのは「手の動き」だけではない。足と腕を一緒に制御する必要がある

Figure 02の技術的な特徴は、部品を把持する手や腕だけではありません。

Figure AIの技術報告では、正確な部品配置を実現するために、歩行動作と手先の制御を組み合わせる必要があったと説明しています。

例えば、部品を正しい位置にセットするには、手首の角度を調整するだけでなく、ロボット本体の位置や姿勢が重要になります。

ロボットの身体が治具から少し遠ければ、腕を伸ばす必要があります。

近すぎれば、腕を動かす空間が不足する可能性があります。

さらに、ロボットが板金部品を持って移動する際には、部品の重量や位置によって、身体全体にかかる力も変化します。

ここで重要になるのが、全身の協調制御です。

ロボットの足、脚、腰、胴体、腕、手首を、互いに独立した装置としてではなく、連動するシステムとして制御する必要があります。

特に二足歩行のヒューマノイドでは、足の位置を調整しながら身体のバランスを維持する必要があります。

部品を正確に置こうとして上半身の姿勢を変えれば、重心も変化します。

その変化を補償しながら、手先を必要な位置へ動かさなければなりません。

Figure AIは、BMW向けの運用で、環境変化に対応する歩行制御、手と目の協調アルゴリズム、現場でロボットの動作精度を調整するキャリブレーション技術を開発したと説明しています。

こうした技術によって、手先の位置決めを行うための身体全体の制御が可能になります。

ヒューマノイドの動きを動画で見ると、人間が簡単に行っている動作のように見えます。

しかし、その裏では、ロボットの姿勢、関節位置、部品の位置、動作速度など、複数の要素を同時に扱う必要があります。

ここがフィジカルAIを理解するうえで重要なポイントです。

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Figure 02/03機体諸元・高自由度ハンド、板金ハンドリングとVLA基盤モデル、Sim-to-Real合成データ学習、公差5mm達成機構
■【第2部】メルセデス・ベンツ・ベルリン工場×Apptronik(ドイツ):二足歩行ロボットの工場活用
Apolloハードウェア特性(可搬25kg)、既存工場での二足歩行安定化、部品キッティングと車輪型AMR使い分け
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5.1,250時間の稼働で明らかになった「前腕と手首」の故障問題

Figure 02の運用で、もう一つ非常に興味深い結果があります。

それは、長時間の運用によって、ロボットのハードウェアに存在する問題が明らかになったことです。

Figure AIは、BMWでの1,250時間以上の運用を通じて、ハードウェアの故障は比較的少なかったと説明しています。

しかし、最も問題が発生しやすかった部分は、ロボットの前腕だったと公表しました。

前腕は、人間でいえば肘から手首にかけての部分です。

この部分には、手首を動かすための機構や電子回路が詰め込まれています。

Figure 02では、前腕内部のマイクロコントローラー基板が、主制御コンピューターと手首のアクチュエータとの通信を分配する役割を担っていました。

この構造には、限られた空間に電子回路や配線を収める必要があるという課題がありました。

さらに、関節は繰り返し動作するため、可動部の配線には機械的な負荷がかかります。

モーターや電子回路から発生する熱も考慮しなければなりません。

Figure AIは、BMWで得られた実運用データを基に、後継機「Figure 03」で手首の電子回路を再設計しました。

具体的には、前腕内部の通信分配基板と、動きに伴って負荷がかかる配線をなくし、各手首のモーターコントローラーが主コンピューターと直接通信する構成へ変更しています。

この変更によって、構造の複雑さを減らし、信頼性や熱管理を改善する狙いがあります。

ここには、製造業にとって重要な教訓があります。

研究室で正常に動くロボットと、工場で長期間稼働できるロボットは違います。

量産工場では、同じ動作を何万回も繰り返します。

その結果、短時間の試験では分からなかった配線の疲労、発熱、部品の摩耗、電子回路の信頼性などの問題が表面化します。

Figure 02の1,250時間という稼働実績には、ロボットが働いたという意味だけでなく、次世代機を改善するための故障・保守データを得たという意味もあるのです。

6.BMWが成功した理由の一つは、既存の自動化ラインとの接続

BMWは2026年2月27日の公式発表で、Figure 02の導入から得られた知見を紹介しています。

その中で注目したいのが、ヒューマノイドを既存の生産システムへ統合するための取り組みです。

BMWは、Figure 02を導入する際、生産ITインフラ、労働安全、生産工程管理、工場内物流に関係する部門を、初期段階から参加させたと説明しています。

また、BMWのSmart Roboticsエコシステムと標準化されたインターフェースで接続し、既存設備と連携できるようにしました。

これは非常に重要です。

ヒューマノイドが単独で動作できるだけでは、量産工場の一部として使うことはできません。

例えば、溶接設備が動いている間は、部品の投入を待つ必要があります。

治具の扉が開き、作業可能な状態になったことを認識し、所定の動作を実行する必要があります。

部品のセットが完了したら、次の工程へ作業完了を伝える必要があります。

異常が起きた場合には、安全に停止し、現場の担当者が復旧できなければなりません。

つまり、ロボットのAIだけでなく、生産設備とのインターフェース、工程間の同期、安全制御などを設計する必要があります。

BMWは、Figure 02の導入場所として、もともと自動化が進んでいる車体工場を選びました。

この工場では、スマート搬送ロボットによる部品供給がすでに広く使われており、従業員も新技術の導入に慣れていました。

新しいロボットを、工場の中へ突然投入したわけではありません。

既存の自動化技術や運用体制を利用できる環境を選び、実際の生産工程へ組み込んだのです。

この点は、日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーがフィジカルAIを導入する際にも、参考になります。

参考:BMW Group公式発表(2026年2月27日)

https://www.press.bmwgroup.com/united-kingdom/article/detail/T0455870EN_GB/bmw-group-to-deploy-humanoid-robots-in-production-in-germany-for-the-first-time?language=en_GB

7.「Sim-to-Real」の本当の難しさも見えてきた

フィジカルAIの実装技術を考える際に重要なのが、Sim-to-Realです。

Sim-to-Realとは、シミュレーションなどの仮想環境で開発・学習した制御方法を、実際のロボットへ移して動作させることです。

ロボットのAIや制御技術を開発する際には、実機を使う前に、仮想環境でさまざまな動作を試すことができます。

例えば、ロボットが部品を取り出す動作を繰り返し学習したり、姿勢を変えたときのバランスを検証したりできます。

しかし、仮想環境で成功した動作が、そのまま実際の工場でも成功するとは限りません。

現実の部品には、寸法や形状のわずかなばらつきがあります。

ロボットの関節には摩擦や機械的な遊びがあります。

カメラで見た部品の位置には誤差が生じます。

ロボットの設置場所や周囲の照明も変化します。

そのため、仮想環境で学習した動作と、実際の環境で必要な動作の間には差が生じます。

この差をSim-to-Realギャップと呼びます。

BMWは、Figure 02について、テスト環境で学習した動作を比較的短期間で実際の生産ラインに移し、安定したシフト運用へつなげられたと説明しています。

ただし、BMWとFigure AIの公開資料だけでは、Figure 02の板金部品ハンドリングに、どの物理シミュレーターを使い、どのような合成データを生成し、どの制御モデルをどの程度Sim-to-Realで転移させたのかという詳細までは確認できません。

したがって、この事例を特定のシミュレーション技術の成功例として断定するのは適切ではありません。

一方、現場で求められる位置決め精度を確保するために、歩行制御、手と目の協調、キャリブレーションの技術が必要になったことは、Figure AIが明らかにしています。

重要なのは、AIを学習させることと、そのAIを実際の生産設備へ接続して安定稼働させることは、異なる技術課題であるという点です。

フィジカルAIが工場で普及するためには、AIモデルの高度化だけでなく、このギャップを埋める技術が必要になります。

8.安全性と作業者との共存も、実装技術の一部

ヒューマノイドが人間と同じ工場で働く場合、安全性の確保は不可欠です。

Figure 02は二足歩行によって移動するため、固定された産業用ロボットとは異なる危険源についても検討する必要があります。

例えば、転倒、把持した部品の落下、作業者との接触、予期しない動作などです。

BMWは、Figure 02の試験を通じて、追加の安全柵や仕切りを導入するなど、安全対策の見直しが必要になったと説明しています。

また、工場内の5G通信環境の改善も、実証で得られた知見として紹介しています。

ここで重要なのは、ヒューマノイドが人間と同じ身体構造を持っているからといって、自由に人間の近くで作業させてよいわけではないことです。

実際の導入では、ロボットの可動範囲、速度、把持する部品の重量、安全停止、作業者の動線などを評価しなければなりません。

また、通信環境の整備と、安全を確保するための制御は区別して考える必要があります。

工場内の通信を高度化することは、ロボットの状態監視やデータ連携に役立ちます。しかし、通信が途絶した場合でも、必要な安全機能が維持されるように設計することが重要です。

フィジカルAIの実装は、AIモデルやロボット本体の開発だけでは完結しません。

生産設備、安全、通信、保守など、工場全体の技術を組み合わせる必要があります。

9.BMWはFigure 02の経験を、次世代のFigure 03へ引き継いだ

Figure AIは2025年11月、Figure 02の運用成果を発表するとともに、同モデルを退役させ、後継機Figure 03へ移行する方針を示しました。

BMWで得られた1,250時間以上の稼働経験は、後継機の設計改善に活用されています。

そして2026年6月30日、Figure AIはFigure 03をBMWのスパータンバーグ工場に持ち込み、新しい作業の実演を行ったと発表しました。

新しい対象は、車体溶接工程の板金部品セットではありません。

部品を指定された順序で並べるシーケンシングと呼ばれる物流作業です。

この作業では、ロボットが部品を把持するだけでなく、必要に応じて足を動かし、胴体の姿勢を変えながら作業する必要があります。

Figure AIは、AIモデル「Helix 02」によって、手、腕、胴体、足を協調させる全身制御を実現していると説明しています。

ただし、Figure 03の新用途については、公開された実演と、Figure 02が達成した長時間の量産ライン運用実績を区別する必要があります。

Figure 02は、同じ工程を長期間にわたって繰り返すための実証でした。

Figure 03では、より変化のある作業への対応が進められています。

これは、フィジカルAIの進歩を考えるうえで、興味深い流れです。

最初は、比較的条件が決まっている作業を確実に実行します。

そこで得られた稼働データや故障情報を利用し、ハードウェアと制御技術を改善します。

そのうえで、作業の種類や複雑さを拡大していきます。

BMWとFigure AIの取り組みは、このような段階的な技術開発の一例として理解できます。

参考:Figure AI「F.03 Arrives at BMW」(2026年6月30日)

https://www.figure.ai/news/f-03-at-bmw

10.日本の生産技術部門が、この事例から学べること

Figure 02の事例は、日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーがフィジカルAIを導入する際にも参考になります。

特に重要なのは、次の五つです。

第一に、ロボットを導入する工程を適切に選定することです。

BMWは、すでに高度に自動化された車体工場の中で、ヒューマノイドを使う意味のある作業を選びました。

すべての工程をヒューマノイドへ置き換えるのではなく、既存設備との役割分担を考えています。

第二に、量産現場で必要な性能を数値で定義することです。

Figure AIは、サイクルタイム、部品の配置成功率、人による介入回数を主要なKPIに設定しました。

ロボットが動いたかどうかではなく、生産工程の要求を満たしたかどうかで評価する必要があります。

第三に、ロボットのハードウェア信頼性を長期間の運用で確認することです。

Figure 02では、1,250時間以上の稼働によって前腕部分の問題が明らかになり、後継機の設計改善につながりました。

短時間のデモンストレーションだけでは、実際の工場での保守負担を評価できません。

第四に、既存の生産設備と接続する技術を整備することです。

ロボットは、既存の溶接設備、搬送設備、生産管理システム、安全制御などと協調する必要があります。

AIモデルの性能だけでは、量産工程への導入は完了しません。

第五に、実証で得られたデータを次の開発へ活用することです。

BMWとFigure AIは、最初の運用から得られた知見を、次世代ロボットや新しい作業の開発へつなげています。

これは、フィジカルAIを単発の実証実験で終わらせず、継続的な技術開発へ発展させるための重要な考え方です。

11.ヒューマノイドは「人間の代わりに歩くロボット」から「生産工程を担当する装置」へ進み始めている

ヒューマノイドのニュースでは、二足歩行や、人間に似た動作に注目が集まります。

しかし、自動車メーカーにとって重要なのは、そのロボットが何を生産できるのか、どの程度の精度と速度で作業できるのか、長期間使えるのかという点です。

Figure 02の3万台、9万点、1,250時間という数字は、こうした実用性を考えるための具体的な材料です。

もちろん、この数字だけでヒューマノイドが従来の産業用ロボットよりも経済的に優れていると判断することはできません。

ロボット本体の価格、保守費用、人による介入、設備改修費用、稼働率などを含めた比較が必要です。

しかし、実際の生産ラインで繰り返し作業を担当できたことには意味があります。

そして、BMWがロボットの稼働実績から得られた知見を、次世代機の開発や別の工場での実証へつなげていることも重要です。

フィジカルAIは、コンピューターの画面の中で文章や画像を生成するAIとは異なり、現実の設備や部品に直接働きかけます。

そのため、AIの推論能力に加えて、機械工学、制御工学、生産技術、設備保全、安全工学などの知識が必要になります。

BMWの事例は、ヒューマノイドが実際の工場へ進出する際に、これらの技術を統合する必要があることを示しています。

今後、自動車産業でフィジカルAIが普及するかどうかを判断するためには、ロボットが人間のように動けるかという点だけでなく、工場の生産性や品質、安全性にどのような価値を提供できるかを見る必要があります。

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主な参考資料

  1. BMW Group「Successful test of humanoid robots at BMW Group Plant Spartanburg」(2024年8月6日)
    https://www.press.bmwgroup.com/usa/article/detail/T0444268EN_US/successful-test-of-humanoid-robots-at-bmw-group-plant-spartanburg
  2. BMW Group公式YouTube「Humanoid Figure 02 robots tested at BMW Group Plant Spartanburg」(2024年8月6日)
    https://www.youtube.com/watch?v=xLVm-QKEZSI
  3. Figure AI「F.02 Contributed to the Production of 30,000 Cars at BMW」(2025年11月19日)
    https://www.figure.ai/news/production-at-bmw
  4. BMW Group「BMW Group to deploy humanoid robots in production in Germany for the first time」(2026年2月27日)
    https://www.press.bmwgroup.com/united-kingdom/article/detail/T0455870EN_GB/bmw-group-to-deploy-humanoid-robots-in-production-in-germany-for-the-first-time?language=en_GB
  5. Figure AI「F.03 Arrives at BMW」(2026年6月30日)
    https://www.figure.ai/news/f-03-at-bmw

※2026年10月28日時点の公開情報に基づいています。BMWとFigure AIの公表実績、技術的な要求条件、今後の導入可能性に関する分析を区別して記載しています。

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