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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

三菱商事、英国海底送電線事業参入の背景

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三菱商事が英国で海底送電事業に参入することが発表されました。

三菱商事、英国海底送電インフラ事業の運営開始(プレスリリース、2011/12/2)

三菱商事株式会社(以下、当社)は、100%子会社であるSPC(特別目的会社)および在英国現地法人を通じ、豪州系投資銀行マッコーリー・キャピタル社の英国現地法人(以下、マッコーリー)の保有する海底送電資産ウォルニーワン(Walney 1)の持分(50%)全てを取得しました。これにより当社は、日本企業として初めて海外に於ける海底送電インフラ事業の運営を開始致します。

マッコーリーは、2009年7月に発照された事業権入札を通じ、パートナーであるバークレイズ・インフラストラクチャー・ファンド・マネジメント社(以下、バークレイズ)と共にウォルニーワンの資産及びその事業権を獲得しており、当社によるマッコーリー持分取得後のウォルニーワン持分は、バークレイズ50%、当社50%となります。

ウォルニーワンの資産規模は約130億円(105.4百万ポンド)であり、当社はパートナーのバークレイズと共に、東アイルランド海の洋上風力発電所(約184MW)とランキャスター海岸の約50kmを結ぶ海底送電線と洋上変電設備を今後20年間保有・運営します。

送電線運営事業は、インフラ事業のタイプとして見ると、石油や天然ガスを運輸するパイプライン運営事業に近いと思います。両者に共通する特徴を挙げれば、

・初期投資の規模をコントロールしやすい(区間を複数投資家で分割すれば投資をほどよい規模に抑えることができる)。
・エネルギー需要がある限りにおいて、ほぼ確実に利用顧客が存在する。
・利用顧客と適正な価格で合意し、長期契約が取り結べるならば、長期にわたって安定した投資収益を得られる。

といったところでしょうか。あまり需要の変動がなく、売上が長期にわたって安定するというビジネスです。これに近い位置づけのものにインドネシアやオーストラリアに例がある炭坑と港湾を結ぶ石炭鉄道があり、さらには、LNG基地とLNG運搬船をワンセットとしてLNG流通を手がけるビジネスもやや近いと言えます。

日本の場合、発送電分離が行われていないので、送電を投資対象することはできません。一方、電力自由化が進んでいる欧州、米国では、送電線が資産であり、投資対象になりえるばかりか、送電線建設を新規事業として計画し、そこに投資家を集めて、純然たるインフラ事業として構成することができます。特に新設需要がある洋上風力まわりはそうでしょう。

今回の取引について、別な側面から情報を伝えている以下の記事によれば、英国のガス・電力市場監督局(Ofgem)は、洋上風力発電事業者に対して送電線部分を競争入札によって売却することを求める規制を開始しているそうです。洋上風力における発送電分離と言えましょうか。風力発電大手のドン・エナジー(DONG Energy)が過半を持つ発電事業会社Walney Windfarms Limitedの送電線部分が売りに出され、三菱商事が競り勝ったという経緯です。

OffshoreWind.biz: Walney Windfarms Limited Sells Transmission Assets at Offshore Wind Farm Walney 1 (UK) (2011/10/24)
 
欧州では風力発電が盛んであり、EU全体の発電容量52,855MWのうち9.6%、84,278MWを風力が占めています。ただし、消費電力ベースでは、2010年の総消費電力181TWhのうち、風力の貢献分は5.3%に留まります。

陸上風力は成熟期にさしかかっているようで、既設容量の大きなドイツ、英国、スペインでは新設が減少しつつあります。一方で洋上風力はたいそうな勢いがあって、2010年には前年比51%増の新設があり、欧州全体で総容量2,964MWとなっています。2011 年にも計1,000~1,500MWの稼働が予定されています。また、建設中の総容量は3,000MWと現在稼働している洋上風力と同規模。これとは別に英国では7,000基以上の洋上風力を設置し、総発電容量が40,000MW(40GW)に上る超大型の計画が進行中です。

欧州の海底送電線事業には、日本企業参入の余地がまだまだありそうです。

 

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