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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

固定価格買取制度と改正PFI法で再生エネルギー発電のメガトレンドがやってくる

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先日ふとしたことから、地方自治体の発意があれば、国会で審議中の再生可能エネルギー特措法で可能になる固定価格買取制度と、5月下旬に成立した改正PFI法のコンセッションの枠組みの両方を使うことで、再生可能エネルギー発電事業をかなり採算に乗せやすい形で始められることに気づきました。

固定価格買取制度と改正PFI法については以前に説明した投稿がありますので、それをお読み下さい。

孫社長の太陽光発電構想を支える全量固定価格買取制度、まだ課題も残る?
PFI法改正で日本でも官民連携のインフラ市場が拡大へ(上)
PFI法改正で日本でも官民連携のインフラ市場が拡大へ(下)

■日本の発電事業の環境が根本から変わる

このブログでは主に海外のインフラ事業の話題を取り扱っています。特に、コンセッション型のPPPと呼ばれる官民連携の事業形態の受注動向をお伝えしています。その延長で日本企業による海外インフラ案件の動向やいわゆるインフラ輸出政策の話題もお届けしています。
日本のインフラ事業についてあまり取り扱わないのは、旧PFI法の下では民間企業が国・自治体からコンセッション(特別な営業権)をもらってインフラを運営することができず、そうした事例がなかったからです。改正PFI法が成立したことにより、海外と同等の事例が出てくる可能性が高まりました。

とは言え現時点ではまだ具体的な動きはありません(改正PFI法の施行が今年末頃だという事情もありますが)。水面下では伊丹・関空統合の案件などで動きがあるようですが、表立っては報じられていません。

そこへ固定価格買取制度という、発電事業参入の枠組みを根底から変える大波がやってきます。このブログでも「報じなければ!」と思うインフラ事業(発電事業)の動きが無数に出現する可能性があります。

何がどう変化するのか?関連の要素がいくつも組み合わさっているので、箇条書きで整理してみましょう。

■事業を行う側、融資をする側、自治体側の視点を整理

[再生可能エネルギー発電事業に取り組む側の視点]
・再生可能エネルギー発電事業のうち、特に太陽光発電では、1kWh当たり40円前後という高い発電コストが妨げとなって、発電事業が採算に乗らない。
・再生可能エネルギー特措法が成立し、固定価格買取制度がスタートすると、経産省が政令で決める太陽光の買取価格にもよるが、採算性が格段に向上することは確か。
・太陽光発電で採算性を向上させるには、できるだけ大規模な発電所にしたいところ。広大な敷地の取得コストが課題だが、それを低廉に抑える仕組みがあれば話は一変する。

[改正PFI法で可能になった民間企業による自治体へのインフラ事業の提案]
・改正PFI法の下では、道路、鉄道、港湾、空港、水道、下水道などのインフラ事業について、自治体は民間企業に対して10年〜20年といった年限にわたる特別な営業許可(コンセッション)を与えて、経営を委ねることができる。コンセッションの下で民間企業は料金設定の自由を持つなど、インフラ事業を採算に乗せやすくなる。(例:空港事業で従来はなかった新しい収益源を設定することができるなど。)
・改正PFI法の対象になっている事業(施設)には、熱併給施設、新エネルギー施設が含まれる(正確には旧法時代から含まれていた)。また関連する領域に、公営住宅、賃貸住宅、廃棄物処理施設、リサイクル施設などがある。
・同法の下では、民間企業は自治体に対して新しいインフラ事業の企画を提案することができる。自治体は民間企業から持ち込まれた企画を検討する義務がある。
・これらのことから、改正PFI法の下で、民間企業が10年〜20年といった年限にわたってコンセッションを得て営業を行う太陽光発電施設、風力発電施設、バイオマス発電施設などの提案書を作成し、自治体に提出して検討を依頼することができる。

[固定価格買取制度と改正PFI法を組み合わせて採算性を向上させる]
・固定買取価格制度により、太陽光発電のコストの大半は買取価格によって相殺される。しかしそのままでは利益が出にくい可能性がある。(単価の安い発電パネルが調達できれば話は別。)
・採算性を向上させるには、初期コストで大きな割合を占める可能性のある用地取得費用を低く抑えることが不可欠。
・そこで、改正PFI法の下で自治体に提案する太陽光発電事業提案書において、その自治体が保有する遊休地を無償で活用させてもらうスキームについて提案するという方策が浮上する。
・用地取得コストがゼロで済むならば、事業の投資回収はよりたやすくなる。また、用地の所有者は自治体であるため、固定資産税の負担も免れる。

[再生可能エネルギー事業にプロジェクトファイナンスによって融資する側の視点]
・プロジェクトファイナンスの融資が成立するには、その事業が生むキャッシュフローが安定していることが大前提。固定価格買取制度の下では、太陽光発電事業の収益は比較的読みやすく、融資可能な金額の割り出しも比較的たやすい。
・用地取得コストがゼロであるなら、それに対する融資も不要になり、全体としては融資額を圧縮できる。すなわち、債権回収がより容易な案件となり、貸出がしやすい。

[再生可能エネルギー発電事業の提案を受ける自治体の首長の視点]
・原発事故以降、地域における再生可能エネルギーへの取り組みの気運が高まっており、個々の自治体においても何らかの方策を打ち出したいところ。
・従来、一部の地方自治体では、地方公営企業法の下で電力事業(=発電事業)に取り組んできた歴史がある。現在25都道府県1市に26の事業体があり、水力を中心に296の発電所、総発電容量246万kW(原子力発電所2.5基分)が稼働している
・自らの負担で地方公営企業として電力事業を営むことは財政面で無理がある。改正PFI法の下で、民間の資金により太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などを行うことには大きな意義がある。
(・以前に造成したが、入居が進んでいない工業団地用地がある。必要であればその用地を提供したい。)
・提案をしてくれる民間企業があれば、積極的に検討したい。

おおむねこのような状況となっています。
話がわかりやすいので、太陽光発電を例として書きましたが、固定価格買取制度の対象となっている風力発電、地熱発電、バイオマス発電、中小水力発電(3万kW以下)でもほぼ似た状況にあります。

■最初の1〜2年が山場

さて。インフラ事業の環境としてみると、事業で発生する収益が国の買取制度によって長期にわたって保証されているという環境は、きわめて異例とも言うべき事業環境です。
インフラ事業の成否を決定づけるものに、そこにプロジェクトファイナンスの融資が認められるか否か(バンカブルであるかどうか)ということがあります。一般的に初期費用の7〜8割程度はプロジェクトファイナンスでまかなわれますから、これが実行されるかされないかで、事業主体側の資金調達の難度はまったく変わってきます。
固定価格買取制度の下では、長期にわたって一定水準の売上が読めるということが、他のインフラ案件とは決定的に違う要素であり、バンカリビリティが格段に向上します。この事業環境は銀行にとっても、好案件が多数出現する可能性があるということで非常に大きな意味を持っています。

これらのことから、再生可能エネルギー特措法が成立して固定価格買取制度が動き出せば、おそらくは、民間企業から地方自治体に対する猛烈な提案合戦が始まるものと推察されます。周知のように、その一部は、すでにソフトバンクの孫さんによって始まっているわけですね。
また、自治体の首長自らが関連分野のリーダー企業に働きかけて、再生可能エネルギー発電所を誘致する動きも始まるでしょう。これについても、すでに新聞で報じられていますね。

プロジェクトファイナンスのノウハウを持つメガバンクなどでも、すでに準備を開始しているものと思われます。

また、この動きが大きなうねりとなると、日本で成立しにくかったインフラファンドがいくつも成立する可能性が出てきます。個別の再生可能エネルギー発電事業案件に対して事業立ち上げ当初に投資することにより、手堅いリターンが獲得できる可能性があるからです。国内案件であるため、これまで海外案件のインフラ投資には尻込みしてきた年金や保険などの機関投資家も資金を拠出しやすいでしょう。

猛烈な投資ラッシュが起こったスペインなどの動きを見ると、最初の1〜2年が山場となるはずです。固定価格制度は、年を追うごとに価格を下げるのが制度の常識ですから(初期参入者を優遇し、再生可能エネルギー導入に加速がつくようにするため)、後から参入する場合は不利になるからです。

国内でスマートシティ/スマートコミュニティ事業に取り組む企業においても、この事業環境はきわめて大きな意味を持つと思います。そのへんについては7月26日に行うセミナーの中で、「両法によって可能になる投資回収モデル」ということで、新たに項目を立ててお伝えしたいと思います

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