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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

山東省製「13万円の電気自動車」に反応したメモ

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昨日、そばにいる自動車業界担当のコンサルタントがほとんど脈絡なく「自動車業界は革命だから…。電気自動車への移行はこの2~3年で一挙に起こるかも知れないね」とつぶやきました。あまり未来予見的なことを言う方ではないので、「え?」と驚き、Twitterに記したところ、色んなことが見えてきました。以下Twitterのログで。

@dimaizum: 自動車業界担当の某さんによると、ガソリン自動車から電気自動車への転換は比較的近い将来に短期集中的に起こる可能性があるとのこと。安くて便利で維持費も安い、税法上も厚く優遇されるとなれば、ですね。ブレークスルーのポイントは電池を安くするスキームがあるかどうか。

@dimaizum: @_hayashi 一足飛びに50万円は無理でも、150万円ぐらいなら3年後ぐらいに実現してそうですね。5年で100万円ぐらいまで下りてくるかも知れません。中国メーカーが価格競争始めると、もっと早く100万円を切るかも知れませんね。

@dimaizum: しかしふと思ったけど、電気自動車は日本の携帯電話モデルと同じで、初期の購入費はほとんどゼロ、乗った分だけ月次で徴収するみたいなビジネスモデルでどしどし普及が進むのではないだろうか。

@_hayashi: @dimaizum 当然色々無茶は含んでるんでしょうけど13万円のやつも出てきてるみたいです。https://twitter.com/murasawa/status/5157869681 思いの他早く我々も恩恵が受けられるイノベーションが実現するかもしれません。

この @_hayashi さんのポストで村沢義久氏の存在を改めて知ったわけです。

@murasawa: 中国でのスモール・ハンドレッドはすごいの一語。山東省の「13万円の電気自動車」。30万~50万円のものが出ることは知っていたが、13万円とは。「月産100台に達した」というから、テスラ「ロードスター」の生産ペースとほぼ同じ。ただし、向こうは1台1000万円で売っている。

スモール・ハンドレッド…。どこかで見た言葉だとつらつら思い起こしていたところ、以前に日経朝刊経済教室欄でまさに村沢義久氏(東京大学サステイナビリティ学連携研究機構特任教授)の論文を読んでひどく印象に残っていた言葉だということに気づきました。以下Wikipediaによる語釈

「スモール・ハンドレッド」(英語表記Small Hundreds、あるいはSmall 100’s)は東京大学特任教授である村沢義久が、2009年3月、その著書『日本経済の勝ち方-太陽エネルギー革命』(文春新書)で、今後の自動車業界の見通しに関して初めて使った表現である。
その意味するところは、ガソリン車と比較して構造が単純な電気自動車の時代になると、「ビッグスリー」に代表される既存の大メーカーによる寡占状態が終わり、「百社単位」のベンチャー企業あるいは異業種からの参入企業が出てくる、というもの。

ちなみに同氏の論文「クルマ近未来 幕開け電気自動車時代」が載ったのは2009年6月10日付日経朝刊。

山東省には13万円で電気自動車を作るメーカーがあることを知り、あちこち検索してみたところ、あるわあるわ。

@dimaizum: 奇瑞の7万元の電気自動車が政府の補助金6万元がついて、1万元で買えるということをいっているらしい記事。 http://bit.ly/34bNna

@dimaizum: 4000ドルの電気自動車が見つかった。 http://bit.ly/6yuTk

@dimaizum: 1000ドルの電気自動車、というか三輪車が見つかった。 http://bit.ly/3GtjbK

@dimaizum: このページに13万円(1万元?)の電気自動車がありそう。 http://bit.ly/2ykjO

@dimaizum: 山東省の電気自動車メーカーは、"shandong electric car"で検索すると多数見つかる。"shanton"ではなく"shandong"、"electric vehicle"ではなく"electric car"。すでに産業集積ができている模様。

@dimaizum: 正しい想いを抱いた起業家が出れば、電気自動車のユニクロが出現しますね。

考えは「電気自動車のユニクロ」にまで至ってしまいました。ここで合いの手が入り。

@IINAlab: @dimaizum PCの汎用部品化がメーカーを淘汰したようにコンポーネントの共通化で電気自動車はファッションと同じように業界が変わるきっかけになりえると思います。

自動車業界の構造変化を思い描いてみる…ということになった次第。

なお、一連のポストは先頃放映されたNHK特集の「自動車革命」が発端になっていることは、ご覧になった方ならすぐにおわかりいただけると思います。私も後からその番組を知りました。昨日は深夜に第一回の再放送を観ました。

山東省に出現していると思われる電気自動車の小さなメーカー群による産業集積に欠けているものは、言うまでもなく近代的なマーケティングと安全対策にかける投資です。これを引き受ける起業家が出現すれば、電気自動車のユニクロは十分に成立すると思います。
1,000円前後の中国製フリースで爆発的なブームを呼び起こしたユニクロがブランドを確立し、高感度ファッション路線に移行して「世界一を目指す」という宣言がなされるまで約10年。10年あれば、そういう劇的な成長が起こります。

既存の大手自動車メーカーとしては先端技術への開発投資を続けると同時に、クリステンセンの言った下位市場から上がってくる破壊的なイノベーションにも目を向け、場合によってはシスコのようにMerger & Developmentを行うなどして、自らの領域を侵食されないように注意することが必要だと思います。

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