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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ハラル認証取得でアクセス可能になる18億人の中間層市場

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「中長期の経済成長は中間層の旺盛な消費から」論者の今泉です。中間層キャンペーンをひそかに繰り広げております。ちなみに私が中間層に着目したのは「上海経済ツアー」(いろいろあっておクラになった本)を書くために仕込をしていた時期から。中間層論者としてはベテランの領域に入りつつあります。なんちて

前回掲げた麻生首相の「アジア経済倍増計画」では、インド以東の東アジアの中間層成長のポテンシャルに着目していました。
向こう5年~20年程度の経済成長の母体となる中間層の切り出し方は、こうした地域によるものだけではないということを最近考えています。一例が以下で述べるハラル産業市場。これは「イスラム教の価値観を尊重する」ことで浮かび上がってくる国や地域にまたがった市場であり、18億人の規模があるそうです。

もう一つの例として、世界各国に存在している「携帯電話の機能進化とともに成長していく層」があると思います。2000年代前半に携帯電話に初めて触れ、SMSやリングトーン(着メロ)などを楽しみ、徐々に日本の携帯ブロードバンドに近いものを経験しつつある層は、世界中で少なめに見積もっても20億人はいると思われます。日本の携帯の利用が世界の先端にあるとすれば、それに近いものをこれから数年かけて20億の人たちが経験していくことになるわけで、そこにある種の中間層的な消費の盛り上がりを見ることができるのではないかと思います。

ネットにつながった携帯を使いこなすことで得られるリテラシーや経験は、おそらく同質的な価値観を育んでいるはずで、これからこの層が同じような消費行動をとる可能性は十分にあります。おそらくは過去の中間層のようにモノを積極的に買うことはないにしても、サービスであれば抵抗感なく買うという消費行動が見られるようになるのではないかと思います。iPhoneのApp Storeはそのごく最初期のモデルなのかも知れません。

ハラル産業市場に話を戻します。ハラルとは、ご存じの人も多いと思いますが、イスラムの戒律に則った形で調理、処理、製造された食材に付けられるマークで、そのマークが付いているものであればイスラム教の人が安心して買い求めることができます。

現在では食材、食品だけでなく、化粧品、医薬品、さらにはファーストフードチェーンなどについてもハラル認証の対象になっており、イスラム諸国でこれらの分野の事業を行うためにはハラル認証が必須になっているとのこと。ハラルが付くことによって初めて消費者にリーチできる関連産業がハラル産業ということになります。
ハラル食品市場は5,800億ドルの規模、化粧品、医薬品、サービスなどを含むハラル産業全体では2兆1,000億ドルの規模があるそうです。
こうしたことを、正月にたまたま見ていたJETROの広報番組JETRO Global Eyeで知りました。以下も同番組からの情報です。

マレーシア政府はハラル産業の振興に注力しており、イスラム諸国のハラル産業全体のハブになるべく、種々の方策を展開しています。ハラル認証は、マレーシア以外の国々では地域の団体などが運営しており、日本のJISのように政府機関が認証制度を運営している国はマレーシアしかないとのこと。一度マレーシアでハラル認証を取得すると、インドネシアを初めとするイスラム諸国の市場においてもその認証は有効になるそうです。

ハラル認証を取得するためには、品質、安全、清潔の3つの観点から基準をクリアする必要があり、同番組に出演していたマレーシアハラル産業開発公社(HDC)のCEOダストリ・ジャミル・ヒディン氏によると、大多数の日本企業はこれら3つの観点では基準を満たしており、そこにイスラム教の価値観に関する理解がありさえすれば、認証取得が可能だとのことでした。
認証取得には、非ハラル製品とは生産ラインが別、原材料納入業者もハラルに沿った事業活動を行っている、物流などもハラルの基準を満たすものになっている、といった基準を満たす必要があるそうです。

ハラル産業のハブになるという意味で、マレーシア政府は特定区域にハラル産業専用の物流設備(港湾を含む)、倉庫、工場用地などを用意しており、外国企業にも門戸を開いているとのこと。従って、日本企業が進出する場合には、同公社を通じて情報を得て、ハラル産業振興区域に拠点を設ければよいということになるでしょう。これによって18億人の市場にアクセスできることになるわけです。

これから大きな成長が見込める市場であり、国・地域を超えた広がりを持つ中間層の市場です。こういう市場の切り出し方はまだまだ他にもできそうですね。

なお、先ほど探したら上記のJETRO広報番組JETRO Global Eyeがネットで無料で公開されていました。ここにあります

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