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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

インターネットにビジネス方法特許がしっくりこない理由-その1

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字下げがどうもヘンに見えるので、今日から段落頭を字下げしないで書きます。

昨日ざざざと素案を書いてしまいましたが、もたもたしていると、誰かさんがそそくさと同種のビジネス方法を出願書類にまとめてしまい、さっとオンライン出願してしまうといやだなぁと思ったので、とりあえず現在頭のなかにあるものをすべて出させていただいた次第です。
これでもって、昨日書いた分については公知のものとなりました。これと同様ないし当業者がこれを見て容易に類推できる類似したビジネス方法は特許にならなくなります。あましこういうやり方は好みませんが、まぁ抜け駆け防止ということでご容赦ください。
なお、社団法人発明協会発行の「特許出願の手引き」によると、本人が論文誌などで発明内容を発表した場合は特例で、発表後6ヶ月は「新規性がある」と認めてもらえるそうです。

さて、インターネットが直接的間接的にからむ事業モデルに関して、ビジネス方法特許を取って参入障壁を築くやり方がどうもしっくりこないということで、さんざん引っ張ってきましたが、その理由を説明していきます。

【仮説1】インターネット空間では、発明者が発明内容の権利をがちがちに守ることで、普及や浸透がかえって阻害されるということはないか?

98年頃のことです。米国の某A社がデジタルコンテンツの超すごい技術と超すごい事業モデルを開発し、その日本における営業権を某B企業が獲得して、日本での普及を図っていました。私はそのころデジタルコンテンツの配信を自分の書き物のテリトリーにしていたので、呼ばれて手伝うことになりました。
マーケティングツールを書くために、某A社の技術に関する資料を山ほどインプットさせられて、「おぉすげー」とばかり思っていました。
その技術は超高度であり、事業モデルもうっとりするぐらい超完璧でした。
その技術に関するプロダクトが保管されている部屋に出入りするドアには、米国のなんちゃらセキュリティ基準の入退出管理機構が組み込まれており、部屋自体がその基準に沿ってかなり頑丈にできているとのことでした。ライセンスを受ける際に、その種のしっかりとしたセキュリティを施すということが条件になっていたとのことです。私は感激屋なので、「すげーすげー」とばかり思って、嬉々として仕事をさせてもらってました。
1年が過ぎ、2年が過ぎました。そのデジタルコンテンツ技術はなかなか事業ベースに乗りません。利用企業は超がちがちの契約を取り結ぶ必要があり、超すごい技術にふさわしい超高額なロイヤリティが設定されていた模様です。
結局その事業は採算に乗ることなく、某B企業は撤収してしまいました。それから数年してその超すごいA社も超意外な企業Cにあっさりと買収されてしまいました。A社の技術が現在、われわれの目に見えるようなところで使われているのかどうか、少なくとも私は知りません。

私ごときが今頃書くまでもないことですが、このインターネット空間ではまずユーザーベースを確立することが先決であり、そこがすべってしまうと、利益のりの字も出ません。
その肝心のユーザーベース確立に際して、誰かが「この権利は絶対に人に触らせない」「この発明はものすごく革新的だからロイヤリティはものすごく高くて当然」という態度に出ると、周囲の事業パートナーや潜在的な顧客が「あ、そう」(しらー)となってしまい、「それならそうで勝手にやってれば。オープンソースもある時代だし」ということになってしまって、相手にされなくなる、ということが起こるのではないでしょうかね?

これに似た経緯が、ソニーのATRAC3にも見られると思います。
個人的にはソニーは好きな企業であり、高校生の時分には同社のオープンリールのテープデッキを大切に大切に使っていたぐらいで、最近なども気づいてみたら、連続的にソニー製品ばかり数個買っていたということもありました。ネットワークウォークマンも買ったし、Clieのデジカメ付きの機種なども買ってました。そのソニー好きの私が言うということで、おゆるしください。
ソニーのATRAC3は楽曲ファイルの圧縮方式としては非常に優れたものであることは確かで、ある時期、MP3ファイルとATRAC3ファイルとの音の違いを聞き比べた時にも、当時のオーディオ装置がしょぼかったにもかかわらず、「音的にはなんかいい」という印象を持った記憶があります(ややあいまい)。
AVのソニーであり、世界のソニーですから、圧縮方式1つにしても非常に完璧なものを作り上げなければならないという自負があったであろうことは、大いに想像できます。また、傘下にSMEを持っており、音楽専門の看板を掲げる上でも、MP3に負けられないという気持ちがあったでしょう。

それはよくわかるのです。

しかし、当時(97年頃から98年頃)、CDをリッピングしてパソコン内にストアしたり、ストアした楽曲ファイルをCD-Rに焼く(私的複製の範囲内で)世界は、すでに「MP3が便利~」と感じる人が米国だけでなく日本でも多数派になっており、プロプライエタリな圧縮方式を押し通すことがその「便利~」という気分に逆行するということが、なぜ、理解できなかったのか、不思議でなりません。
ソニーのATRAC3の場合は、自分とこの権利が惜しくて態度をがちがちにしたというのと多少事情は違うのでしょうが、それでも権利付きのプロプライエタリな技術でとにかく強引に進んでいたという姿勢はあるのであり、それははっきりと顧客不在の姿勢であったと言えます。それがために、iPod出現後の誰もがよく知っている現在に至る経緯があるのではないかと思うのです。

前にも書いたように、私は既存の世界における工業系の特許や化学系の特許、ソフトウェアの特許などの意義や有効性を否定するものではありません。しかし、こと、インターネットが絡み、インターネットが利用基盤であり、そこでもってユーザーを獲得していくような事業に関しては、新規な部分をビジネス方法特許(あるいはモノの特許)で守ることによって、こうしたことが、ほぼ間違いなく生じるということを、そろそろ皆が認識してもいいのではないかと思い始めています。

それ以外にも理由がありますが、長くなってしまいそうなので、今日はこのへんで。70分ぐらい。

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