オルタナティブ・ブログ > イメージ AndAlso ロジック >

ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨いながら、感じたこと考えたことを綴ります。

コントローラー化する、携帯デバイス ~メルマガ連載記事の転載 (2012年5月21日配信分)

»

この記事は、メルマガ「デジタル・クリエイターズ」に月1回連載中の「データ・デザインの地平」からの転載です。

連載「データ・デザインの地平」
第18回「コントローラー化する、携帯デバイス」(2012年5月21日配信分)

Windows Phone などのスマートフォン向けに開発されたアプリは、すべて「センサーアプリ」といっても過言ではありません。デベロッパーにセンサーを利用した覚えがなくとも、アプリの背景ではセンサーが動いています。
「センサー」を切り口にして携帯デバイスを眺めると、その行方が見えてきます。

スマートフォンに搭載されているセンサー

ここ2~3年の間に発売されたスマートフォン、たとえば Windows Phone の au IS12T には、次の3つのセンサーが搭載されています。デベロッパーは、これらのセンサーを利用したアプリを開発できます。

(1) 加速度センサー

スマートフォンを縦に持つと画面は縦向きですが、横向きにすると画面は横向きになります。この画面の向きの判断を担っているのが加速度センサーです。au IS12T には、左右(X)・上下(Y)・前後(Z)の3軸の加速度センサーが搭載されています。

地球上にあるスマートフォンは、重力の影響を受けます。加速度センサーによって、重力によって生じる加速度を得られれば、その値からデバイスの傾斜角度が分かります。例えば、加速度センサーにより 0.5(=1/2)という値が取得された場合、sinθ=1/2 からデバイスは30度傾いていることが分かります。スマートフォンを縦から横に向けた時、この加速度を判別して、画面の向きが変わります。

加速度センサーは、ゲームのコントローラーとしても、広く用いられています。
また、傾斜計や水平器にも使われます。筆者は、無料アプリ「ビジュアル傾斜計」を公開していますので、Windows Phone をお持ちの方はぜひ試してみてください。

(2) ジャイロスコープ

加速度センサーと似たものに、ジャイロスコープがあります。これは航空機や人工衛星にも使われています。
ジャイロスコープを構成する部品を回転させたときに働くコリオリ力から、X軸の回転・ピッチ(ピッチング)、Y軸の回転・ロール(ローリング)、Z軸の回転・ヨー(ヨーイング)の値が分かります。この3つの値をアプリ開発に利用できます。

ただし、筆者が試したところでは、このセンサーは、Nokia 製 Lumia 800(現在発売されている Lumia 900 の前のバージョン)ではサポートされていないようです。

(3) 地磁気センサー

これは電子コンパスのことで、電流の方向に対して垂直に磁場をかけると、直交方向に電流が流れるホール効果を利用したセンサーです。
スマートフォン内には、ノイズやスピーカーが発する磁場など、地磁気センサーの計測に影響を及ぼすものが数多くあります。そのためキャリブレーションが必要ですが、au IS12T は、精度データを取得して確認したところ、それらの影響を自動検出して補正しているようです。

ちなみに、電子コンパスを初めて搭載した携帯デバイスは au C3003P、その昔 XHTML Basicを初サポートしたのも au C5001T ということを考えれば、国内初の Windows Phone が au IS12T というのも不思議ではないような気がします。

Windows Phone アプリ開発においては、これらのセンサーをまとめて扱える「モーションセンサー」機能があります。

スマートフォンは、センサーの集まり

前述の3つのセンサーは、デベロッパーが企図して使うものです。
しかし、スマートフォンに搭載されているセンサーは、これだけではありません。スマートフォンは、それ自体がセンサーの集まりであり、センサーがなければスマートフォンという機器自体が成立しないほどです。たとえば、Windows Phone に限らず、基本的に、次のようなセンサーが搭載されています。

・タッチセンサー

ヒトの手は電気を通すので、タッチした場所に静電気が起こります。それを静電状態に戻すために流れる電流の情報から、タッチした位置を特定します(静電容量方式)。

・近接センサー

通話中に耳などがデバイスに触れた場合でも、それがタッチ操作として解釈されないのは、このセンサーにより画面がロックされるからです。

・光センサー

環境光の明るさを検知して、画面の明暗を調節します。

・イメージセンサー

カメラにもセンサーが使われています。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型半導体のひとつである、CMOSイメージセンサーです。光を検出するフォトダイオードと増幅器を持ち、電流の変化を画像情報に変換します。

・GPS

GPS(Global Positioning System)といえば、カーナビを思い浮かべる人も多いことでしょう。もちろん、GPSを利用したアプリを使えば、スマートフォンもカーナビの代用になります。これは、複数の人工衛星からの時報を受信し、距離と着信時間から三角測量で現在位置を特定するシステムです。

ただし、場所によっては電波がさえぎられることもあり、多少の測位誤差は否めません。
筆者が試したところでは、屋内や入り組んだ狭い道では、人が移動してもGPSの位置情報が変わらないこともありましたが、広い道やさえぎるもののない広場や交差点では、正確な位置が特定できました。

GPSと、前述の地磁気センサーを組み合わせたアプリを開発すると、地図のノースアップ(北を上に向ける)とヘディングアップ(自分の向きを上にする)を切り替えることもできます。

・圧力センサー

気圧で高度を感知します。GPSが届かない場所での位置情報取得を補助します。

以上のように、センサーはスマートフォンの基本的な動作を支えていますので、スマートフォン用のアプリを開発するということは、デベロッパーが意識していなくても、センサーアプリを開発するということになるのです。
また、スマートフォンを使うということは、スマートフォン搭載のプロセッサに対して、センシングデータの処理を命令することにほかなりません。
センサーの価格やニーズによっては、今後、指紋や静脈や顔や虹彩を認証するセンサーのような、新たなセンサーの搭載も考えられるかもしれません。

IT機器の役割分担が変わる

現在のスマートフォンのスペックは非常に高く、一昔前のPCよりも大きなデータを効率よく処理できるほどです。
携帯デバイスがデスクトップPC並みのスペックへと歩を進める一方で、PCは小型軽量化により携帯性を持ち始めています。また、どちらも、カメラなどの周辺機器の機能を取り込みつつあります。
スマートフォンやPC以外にもIT機器は多々ありますが、それらの境界はずいぶん曖昧になってきました。

薄型デスクトップPC、モバイルノート、タブレットPC、ポータブルテレビ、ワンセグケータイ、電子書籍リーダー、スマートフォン、そしてデジタルカメラやスキャナーなどの周辺機器。各種ゲーム機器。携帯音楽プレーヤー。そして、これから現れてくるであろう、新たな機器。
異なる目的の機器が、ほぼ同様の機能を搭載しているケースも少なからずあります。どのように線引きをして、どのように分類できるというのでしょうか。

ビジネス向けか、パーソナルユースか。
室内利用と屋外利用のどちらの時間が長いか。
デベロッパー向け(開発ツールやコンテンツ制作ツールがサクッと動くスペックがある)か、ユーザー向けか。
情報を受信する役割がメインか、情報を加工して発信する方がメインか。
いろいろな分け方がありますが、どの分類方法も、すぐに見直さなければならなくなるほど、技術は速く進化しています。

ユーザーはこれからも、微妙に異なる種々の機器すべてを、身近に置いて使い分けるでしょうか。
それとも、これらの機器のいくつかが残り、いくつかが失われていくでしょうか。

皆さんは、ユーザーの立場から見ていかがでしょう?音楽を楽しみたい時、ケータイとスマホと音楽プレーヤーを使い分けているでしょうか。
スマートフォンをはじめとする携帯デバイスの役割は不変でしょうか。それとも大きく変わるでしょうか。

携帯デバイスの役割は、コントローラーへとシフトする

筆者は、携帯デバイスは、その形は残しつつも、主な役割をコントローラーにシフトしていくのではないかと考えています。

スマートフォンでは、データの入力や編集や保存ができます。写真や音楽を蓄積できますし、楽しむこともできます。ツールやゲームのアプリもインストールできます。スマートフォンは、データを処理するプラットフォームや蓄積するストレージとして使われています。しかし、それは「現在の」スマートフォンの使われ方です。

データの処理はサーバーで行い、クラウドと連携するなら、スマートフォンの役割は、信号のI/Oに集約されます。センシングした信号を変換して送り出す機能が中心となります

私事になりますが、筆者は、30年ほど前、AV機器のサービスマニュアル編集に従事していました。当時はちょうど、リモートコントロール・ワイヤレス・ユニット(リモコン)が普及し始めた頃でした。ユニットの回路図を眺めながら、「このユニットは小さくて簡単なものだけれども、その概念は、社会を変える大きな力を持っている」と感じいったものです。

そんな筆者が、スマートフォンを手にしたとき思ったことは、「携帯デバイスとは、リモコン」ということでした。
社会の中での存在の仕方という面から見れば、スマートフォンも Kinect も、その主機能はセンシングにあります。この二つは全く異なる機器ではありません。センサーを搭載した機器という、大きな共通点があります。

いずれコントローラーとして機能するようになった携帯デバイスは、デバイスの動き、光、色、圧力、温度のみならず、ヒトの動作や思考まで、ありとあらゆる情報をセンシングして、変換し、送り出すようになるでしょう。

前回のコラムで、ヒトの受信機能を代行するセンサーについて述べましたが、携帯デバイスはますます小型化し高性能となり、その役割を担うようになるでしょう。もっとも、その暁には、スマートフォンという呼称は過去のものかもしれません。

以下は、案内。

美しいシーンを見て楽しむ傾斜計/水平器アプリ。
Windows Phone 無料アプリ「ビジュアル傾斜計 Ver.0.8」実機を傾けると、水面に紅葉や桜が舞ったり、草原をたんぽぽの種が飛んだり、滝を背景に蝶が舞ったりします。
ボタンや、転がる球体などのオブジェクトをタップする都度、ビジュアルが変化します。
2D/簡易3D(等測投影)やデザインを随時切り換えられる、見て楽しめる傾斜計です。

Butterfly

Windows Phone アプリ開発記事。インプレス Think IT
Windows Phoneアプリ制作からマーケットプレイス公開までを完全ガイド!」全13回。
企画、デザイン、実装から申請まで、一連の手順を詳説しています。

Community Open Day 2012
全国のコミュニティによる合同イベントが、6月9日(土)に開催されます。
午前中は Windows 8を題材にしたキーノートや、Developer や ITPro をターゲットにしたジェネラルセッション、午後は各コミュニティによるセッションがあります。
四国会場では、録画による USTREAM 配信を予定しています。

「データ・デザインの地平」バックナンバー
≪ 第1回 UXデザインは、どこへ向かうのか? (2010/12/20)
≪ 第2回 そのデータは誰のもの? (2011/01/24)
≪ 第3回 子ノード化する脳 (2011/02/20)
≪ 第4回 多重CRUDの脅威(2011/03/14)
≪ 第5回 震災は予知できなかったのか(2011/04/18)
≪ 第6回 永代使用ポータル、クラウドがつなぐ生者と死者の世界(2011/05/16)
≪ 第7回 脳活動センシングの進化が、作曲を変える(2011/06/13)
≪ 第8回 死にゆく者の意思は守られるか (2011/07/11)
≪ 第9回 Windows Phone 7.5 に見る"ヒトとコミュニケーションの形"(2011/08/29)
≪ 第10回 データ設計者は、ヒトを知れ、脳を知れ(2011/09/26)
≪ 第11回 設計者であるための、日々の心得(2011/10/24)
≪ 第12回 センサーの進化がユーザー・インタフェースを変える
≪ 第13回 プログラマ or デザイナから、"デベロッパー"へ(2011/12/05)
≪ 第14回 技術進化が促す、人類総デザイナー化(2011/01/16)
≪ 第15回 芸術家、大量発生の時代(2011/02/13)
≪ 第16回 明日の言動予報(2011/03/12)
≪ 第17回 アウトソーシング・センサー(2011/04/09)

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する