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「飲んだら危険」よりも「やめたら危険」?広く使われている薬のリスクについて知っておこう。7月11日は「第1回世界ベンゾ注意喚起の日」。

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減らしたり、やめることで、症状の出る薬がある。
そのひとつが、ベンゾと略される、ベンゾジアゼピン系の薬だ。

薬をやめたら、症状が出る?
不思議におもう人がいるかもしれない。ロジカルに考えてほしい。気付くはずだ。
薬が肩代わりしていた役割を、人体が補えない状態になるのだ。

健康は、微妙なトータルバランスのうえに成立している。一か所でも支えを失えば、あらゆる部位に影響が及ぶ。多彩な症状が出る。

たとえば、だ。プロジェクトに、優秀なエンジニアが参加する。開発案件の先が見え、もう大丈夫だろうと、その人が戦線「離脱」する。翌日からすぐに、その穴を埋めるには、代替メンバーを揃え、業務を引き継いでおく必要がある。
ところが、人体には、その準備が整っていない。代替メンバーがいない。引継ぎ資料を預けておくクラウドサービスがない。そこそこのコードを吐き出して支援してくれるくれるAIもない。穴を埋めて平常運転に戻るまで、離脱による問題が発生し続けることになる。
問題の重さは、その人に、どれだけ支えられていたか、どれだけ穴埋めに時間とエネルギーが必要になるかで、異なる。軽く済む場合もあれば、重い場合もある。
この、噴出する多様な問題、多様な症状を、「ベンゾジアゼピン誘発性神経機能障害 (BIND)」と呼ぶそうだ。読み方は、データバインドと同じく「バインド」だ。

問題を解決するために、プロジェクトの外部からコンサルや起用しても、限界がある。火消しはできるが、焼け焦げた跡は残る。つまり、身体の外から、いかに優秀な医師が協力しようと、家族が献身的な支援をしようと、限界がある。
医師が協力するには、身体の中で何が起きているのかを知る必要がある。それには、できるだけリアルタイムで取得したデータが必要だ。
ところが、身体の中で発生し続ける「ありとあらゆる」現象を、逐次センシングする技術は、まだない。データに基づいて最適解をはじき出すことは不可能だ。
経験値に頼るにも限界がある。知られて日の浅い現象だ。そのうえ個体差がある。遺伝子が違う。食事、吸気、排せつ、職業、家族構成が、違う。
膨大なパラメーター。そして、人体は逐次、変わり続けている。
最適な減薬方法も、断薬方法も、離脱症状からの回復方法も、個体ごとに異なるのだ。

結果、回復までの道のりを、ひとりで耐えることになる。

離脱症状の発生確率は、決して低くはない。後掲の厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル(令和3年)」によれば、「身体依存が形成されると、減量や中止時に離脱症状が高率に生じる」その症状には「不安や易刺激性、せん妄、ミオクローヌスやけいれんなどの精神神経症状、頻脈や発汗などの自律神経症状、頭痛・嘔気などの身体症状などの多彩な症状があるが、不眠、不安、焦燥感、頭痛、嘔気・嘔吐などが頻度の多い症状」だという。

服薬時に、量、回数、タイミングを見極めることが重要であるように、断薬時にも、量、回数、タイミングを見極めることが重要だ。薬が支えていた機能を完全に補えない場合は、一部を戻すほうがよい場合もある。その場合、断薬はしないという選択が、最適解となることがある。
症状のある状態で、この調整を、いつまで続くのか先が見通せないまま、試行錯誤するのは、きわめて辛い、困難な作業だ。重い症状が24時間続く生き地獄ともなれば、人生を諦める人も出てくる。

ベンゾは気軽に処方されてきた。
たとえばデパスは、頭痛や肩こりにも効くとして、服薬中の人も多いだろう。

薬剤名を、厚生労働省の資料から、抜粋する。
アモバン、ルネスタ、マイスリー、ハルシオン、レンドルミン、リスミー、ロラメット、サイレース、ユーロジン、ベンザリン、ドラール、ダルメート、ソメリン、リーゼ、 デパス、コレミナール、ワイパックス、コンスタン、ソラナックス、レキソタン、エリスパン、ホリゾン、セルシン、 バランス、メンドン、メレックス、メイラックス、レスタス

とはいえ、皆が皆、離脱症状に見舞われるわけではない。不安を増大させることなく、安心して服薬しながら、主治医に相談して、減薬に適した時期が到来したら、慎重に進めるとよいだろう。

実は筆者の親も、5年前に断薬を試みて、BINDに襲われ、今も残存する症状に悩まされている。高齢者であるから、減薬自体は必要だ。そして高齢であるがゆえに、より慎重に進める必要がある。
とはいえ、服薬管理をする側に知識があっても、成功するとは限らない。離脱症状のリスクを知っていた筆者は、主治医と相談しながら、しかも夜間の数時間以外は常駐する形で、減薬を進めた。ところが、就寝前の最後の1錠をやめた翌朝、突然、問題が発生。そこで半錠を戻そうとしたが、本人が拒否した。
「本人が、事前に、離脱のリスクと機序を、よく理解して、腑に落ちている状態で始めなければ」調整することも、様子を見ること(ステイ)もできず、お手上げになる。
服薬にいたった経緯や、症状、経過は、長くなるので、別途書く。

小さな1錠。だが、軽く扱ってはいけない。
偏らない情報を収集し、慎重かつ冷静に、「一錠」に向き合わなければならない。
飲み方だけではなく、止め方が重要。
薬に副作用ががあることは、知られている。だが、薬に離脱症状があることは。あまり知られていない。
情報は力だ。服薬しているなら、先んじて情報を得ておこう。そして、周りに、すでに離脱症状に苦しんでいる人がいたら、できる範囲で、理解と支援を試みるといい。

症状や機序については、次の資料、書籍、記事を参考に。

厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル  ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存 」(令和3年10月15日) PDF

ベンゾ系睡眠薬・抗不安薬からの安全な離脱方法 改訂版: ~危ない!ムチャな減断薬~ 」Kindle版あり(2021/4/9)
ベンゾジアゼピン情報センター (著)

ワイパックス水溶液減薬(ベンゾジアゼピン減薬断薬情報)「ワイパックス」氏の個人ブログ

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