講師は受講者がどの席に座ってもかまわない(改稿あり)
「セミナー出席、どこ座る? 」
「セミナーに参加した時、どこに座るのがいいのか? 」というテーマでオルタナティブ・ブログが盛り上がっています。講師の立場から意見を出されている人もいます。参加者の立場から意見を出されている人もいます。意見の多様さが興味深いです。
「前に座るほうがいい」とか「あえて後ろに座る」とか「その時々で変えてみる」と個人の価値観が出て興味深いです。
2012年6月1日時点では以下のようなご意見が出ています。
Special オルタナトークセミナー出席、どこ座る?
はたしてどこに座るといいのやら……。私も見解を考えてみました。
講師の立場から言うと
講師の立場で考えてみますと、結論は「みなさん、お好きな席にどうぞ」と思っています。IT系講座は生徒さんがどの席に座っても差が出ないように講師が講義をしないといけないからです。
IT系の講座は普通、どの席も受講料が同じです。したがってIT系講座の場合は原則、座った席によって差が出ていけません。※音楽や演劇のコンサートと違うのが面白いですね。
私の場合は100人以下の会場で講師をします。なので、ワイヤレス・マイクを持ってお客さんの反応を見ながら後ろに行ったり、真ん中に行ったり。はたまた前にもどったり。私は前で一方的に話すスタイルをとりません。私は生徒さんの様子を見ながら、反応に合わせて生徒さんとコミュニケーションをとります。ワークショップ形式と講義形式の中間くらいでしょうか。
ITの授業ではパソコンの操作を前の講師席で行います。ですが生徒さんに質問を投げかけたときは生徒さんの近くまで行きます。
生徒さんの隣まで行ってニコッと微笑むと生徒さんたちには緊張感があるかもしれませんが大抵は丁寧に対応して下さいます。その際、私の声は会場全体に届くように心がけています。
講座が始まる前に生徒さんが後ろから座っていくと寂しい気持ちになります。私はさみしがりやなので講義中は自分から生徒さんの近くに行きます。後ろで寝たかった人には嫌な先生かもしれません。(笑)
講師業をされている田中淳子さんは「座る場所を変えると見える景色が変わる。景色変われば、発想も。-座席問題、ふたたび」で以下のように書かれています。
「ステイの方も、座る場所だけ変えてください。見える景色が変わりますよ。見える景色が変わると、また何か新しい刺激がありますから」
と言って、同じ島の中でも席を移動していただきます。
こうやって、全員が一瞬で、シャッフル。
参加者も新鮮な気分になり、ディスカッションをする場合も、異なるメンバとの間でまた違った刺激を受けることとなりますし、講師から見える景色が変わると、目が合いやすい方も多少変化するんです。クラス全体に流れる空気も微妙に変化します。席替えしただけで。
http://blogs.itmedia.co.jp/tanakalajunko/2012/05/--3fe0.html より引用
私は生徒さんに自分から近づいていきます。ですが生徒さんが動いて色々な生徒さんと遣り取りをする場合もあります。生徒さん同士が動いていくスタイルは私と一見、違うように見えるかもしれません。しかし本質はかわりません。先生が近くに来るだけでも生徒さんの景色が変わります。
講師が気をつけていること
私はまだまだ発展途上の講師です。とはいえ私は人前で教える事でお金をいただいています。したがって「生徒さんがどこに座ろうと、参加された生徒さんがそれぞれプラスになるようにする。」ことを心がけています。
参加した人が参加後、得をするようにクオリティの高い授業をする事をモットーにしています。
私は生徒さんがどの席に座ろうと、講座の目的を達成し、講座前よりも向上した状態でで帰宅していただくように授業計画を遂行しています。
これは厳しい表現かもしれませんが、私は「特定の席に座った人だけ得をするような授業ではダメだ」と考えています。私は感覚中心で授業を進めるところがある講師です。まだまだダメな所が色々とありますが、それでも以下のことを心がけています。
- 講師は時間厳守(基本的に延長はしない)
※主催者や生徒さんの了解が取れれば○分延長しますと予告した上での延長はあり。 - できる限り、事前に会場の様子を確認。
プロジェクター、マシンの事、会場の机と椅子の配置は? - 参加した人が「参加して得をした」と思えるような内容に。
※参加した人が得をしないと来た意味がないから。 - 生徒さんが今、何をしたら良いのかわかるように。
- 黒板・ホワイトボードは一番後ろの席の人でも文字が見える状態か?
※IT系の授業は画面の文字が読めないと授業にならない。
読みやすいフォントか。フォントのサイズは問題ないか。 - 黒板・ホワイトボードのマジックのインク切れはしていないか。
- 言葉遣いは丁寧に。
- 身だしなみは大切に。
- (以下略)
考えがあって後ろの席に座る方もいらっしゃいます。「前の席に座らないと黒板の文字が見えない」という切実な理由の方もいらっしゃいます。講師経験がある人は会場全体・講座全体を後ろから見ようとされるようです。そのため講座に対してやる気があるからこそ、後ろに座る方もいらっしゃいます。
私が生徒として参加する際は、スライドとホワイトボードの図・文字が見える範囲で「後ろ」に座ります。というのは、私が前の席に座ると講師の先生がプレッシャーを受けるようだからです。私は生徒として参加しているにもかかわらず、講座終了後に講師の先生から「ご職業は? 」と訊かれることが多いです。
私は先生の話を聞きながら生徒さんたちの反応も無意識にチェックしてしまいます。無意識に教室全体を観てしまう職業病があるようです。私の目線は前で話をされている講師にとって「この人、チェック厳しいな。何者だ!? 」というプレッシャーを与えるようです。
反応がいい生徒さんはありがたい
前に座っている人のほうが講師の印象に残る気がします。そのため名刺交換をした際も話は弾みやすいと思います。しかし、講師の発言に対して肯定的な反応をしている人は、後ろに座っていても講師の記憶に残っています。
席をどこに陣取るかよりも、どれだけ講師に対してポジティブな反応を返しているかのうほうが大事かもしれません。
「この生徒さんはやる気があるな。」「感じがいいな」と講師が感じますと名刺交換をした後、生徒さんにとってうれしい展開になるのではないかと私見では思います。
したがって私が講師をしている時は生徒さんがどこに座っても「反応がいいか」「悪いか」で生徒さんの印象を判断している気持ちがします。前に座ろうが後ろに座ろうが、「みなさんが好きな席に座るのがいい」と日頃から感じています。
しかし、生徒さんの座る席がどこから埋まっていくのかは講師をしている時に気になります。
講師としては生徒さんが前から座っていって下さった方が嬉しい気持ちになります。「今日、参加して下さった生徒さんはやる気がある人が多いのかな? 」講師が自信を持って話せるのではないでしょうか。
一方、前の席がたくさんが空いているのに生徒さんが後ろから次々座られていかれた場合。講師は不安になるのではないでしょうか。私の場合はサッカーの試合のAWAYの心境になります。「講師に近い席は嫌なのかしら……。」と不安が増していきます。
もし生徒さんが講演会やセミナーで講師のとっておきの話を聞きたい場合。前の席から順に座っていかれると良いかもしれません。とはいえ、座席は自由に座っていいののです。自分は後ろが好きという理由がある方や講師にプレッシャーを掛けたくない人はこころのままに後ろに座るのが良ろしいのではないでしょうか。
おわりに
と、ここまで書いてオルタナブロガーの田中淳子さんの記事を改めて読み返した所、似ている箇所が多かったです。
参考:セミナーでも研修でも社内の会議でも「前」に陣取る。2012/05/30:田中淳子の”大人の学び”支援隊!
私はIT系の講師なので田中さんとはジャンルが違いますが、
話者のモチベーションなんか、話者自身で考えろよ、と思うかも知れませんが、モチベーションなんてものは、相互作用で成り立つ部分もあるので、聞き手がう まくノセるってことも大切だと思っています。 ノリノリになったら、「いつも以上に張り切って面白い話をしました」という展開も期待できます。
http://blogs.itmedia.co.jp/tanakalajunko/2012/05/post-9f27.html より引用
は大いに共感しています。
講師も生徒さんも人間なので、コミュニケーションをお互いに気持ちよく取ることができると「人と場の空気」が良くなるように感じています。講義やセミナーは講師が一方向で話すように思われがちです。しかし私の場合は「生徒さんが喜んでいるな」と感触を掴むと、普段はしないとっておきの話が飛び出します。
生徒さんが「生徒さんが講座に参加してよかった! 」と思える授業になるかどうかは、講師と生徒さんコミュニケーションが気持よく成り立つか次第かもしれません。
>>「田中淳子『速攻! SEのための部下と後輩を育てる20のテクニック』日経BP社より」に続く
編集履歴:2012.6.5 1:10 2012年6月4日から5日にかけて英語版を作成しました。その際、日本語のねじれや意味が不明確な部分を感じました。英訳する際に日本語の意図がわかりにくいと思った箇所を6月5日に修正しました。2012.6.5 23:33 日本語版も題名がわかりにくいかもしれないと思い、変更しました。「旧題名・その1:講師の側からの視点、あるいは生徒さんが前に座ろうが後ろに座ろうが問題がない」→「旧題名・その2:講師の側からの視点、