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「思考停止」は命取り。スピード感を持って「提案できる人材」へ変革する方法

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SI事業の経営者の方から、「指示待ちではなく、もっと積極的に提案できる人材を育てたい」というご相談を伺うことがあります。このようなご相談を多くの方から頂くことを考えれば、これは特定の企業や個人の資質の問題ではなく、変化の激しい現代において多くの組織が直面する共通の悩みではないでしょうか。

なぜ「指示待ち」の「思考停止」が起きてしまうのか

今、私たちは膨大な情報に囲まれています。特にIT業界の変化は激しく、その適用領域は基幹業務の開発・保守といった枠組みをとうに超えて広がっています。

例えば、IoTやAIは業務プロセスと深く関わりますし、DXは経営や企業文化そのものに切り込む取り組みです。そうなると、単なるITの知識だけではお客様に響く提案はできません。その技術を使う「事業」や「経営」についての深い理解が不可欠になります。

この複雑で情報過多な状況に対応する最も楽な手段は、「思考停止」してしまうことです。

余計なことを学ばず、これまで通りのやり方を続ける。幸い、それなりに数字は維持できているかもしれない。上司や経営者から求められる「売上と利益」さえクリアしていれば、あえて大変な学びや変革に労力を払う必要はない。

お客様の指示を待ち、上司の指示を待つ。これが、最もリスクが低く、楽な働き方になってしまっているのです。

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この「思考停止」は、典型的なリスク回避志向や依存志向の表れです。例えば、「セキュリティが心配だ」という一言で、その本質的なリスクや利便性を損なわない対処法を深く検討することなく、新しいサービスの利用を拒絶するケースはその典型です。「セキュリティ」という言葉が思考停止の免罪符となり、新しい価値を生み出す機会を逃しているのです。また、「あの人が言うなら正しいだろう」という他者への依存志向も同様の背景を持っています。

迫りくる「生成AI」の波と「スピード」の残酷な現実

これまでの変化の波も速かったですが、今、私たちはその比ではない、まさに「地殻変動」の真っ只中にいます。

生成AI、そしてAIエージェントの登場です。

かつて「クラウド」が、IT活用のコストとリスクを劇的に下げ、イノベーションを加速させました。たくさんの失敗が許容されるようになり、その中から一握りの成功が生まれ、ITの多様化と複雑化が進みました。

そして今、「生成AI」は、そのクラウドがもたらした変化を、さらに「超加速」させています。

これまで「指示待ち」でこなせていた定型業務、例えば情報の検索・要約、仕様書に基づいたコーディング、簡単な資料作成などは、急速にAIに代替されていくでしょう。これは危機であると同時に、人間にしかできない「提案」や「戦略的な仕掛け」といった高付加価値業務の価値が、爆発的に高まることを意味しています。

「思考停止」のまま、昨日と同じやり方を続けていると、自分の価値そのものがあっという間に失われてしまうのです。

この変化の「スピード」は、私たちが過去に経験したことがないものです。「様子を見よう」「誰かがやるのを待とう」と判断を先送りしている間に、AIを使いこなす競合や新しいプレイヤーに、あっという間に市場を奪われかねません。もはや、スピードこそが企業の命運を分ける時代です。

「思考停止」から抜け出す唯一の道

「思考停止」を続けると、変化への不安や焦燥感だけが募っていきます。では、どうすれば抜け出せるのでしょうか。

それは、「情報過多」という表面的な物量に惑わされず、その底流にある本質、すなわち「トレンド」を見つけ出すことです。

ネットメディアの情報は重複も多く、一見すると混沌としています。しかし、その本質的な価値や、時代を動かす大きな流れは、もっとシンプルです。「生成AI」も、まさにその最たるトレンドの一つです。

この大きなトレンドが理解できれば、それが強力な情報のフィルターとなり、無数の情報を整理してくれます。未来に向けた一本の道筋が明確になり、それこそがお客様の未来を描く「提案の種」になります。ここまで見えれば、もはや「思考停止」している場合ではないことに気づくはずです。

もちろん、トレンドに向き合うことは、これまで築いてきた事業や自分自身の価値を否定することになるかもしれず、不安が伴います。しかし、私たちが望もうと望むまいと、トレンドは社会もビジネスも変えてしまいます。

来るべき未来から目を背けても、未来は必ずやってきます。ならば、その本質に積極的に向き合い、自らを変革するしかありません。

AI時代に求められる「提案力」とは

お客様もまた、この激動の中で「自分たちの未来のためにITをどう活かせばいいか」を知りたがっています。

今求められる「提案力」とは、お客様から顕在化した課題を聞き、その解決策を提示することではありません。

テクノロジーのトレンドを深く理解し、お客様の「あるべき姿」を示し、未来の夢とそこに至る物語を語ることです。

お客様の「ビジネスの成果に直接貢献する」ために何をすべきか。「ユーザーに集中すれば他のことはついてくる」の言葉通り、お客様の未来に集中することです。

そして、「私たちと一緒になって、その未来を創っていきましょう」と語りかける。「共創」のパートナーとして関係を築くことこそが、AI時代に求められる提案力の本質です。

変革は「経営者」から始まる

「積極的に提案できる人材がいない」という悩みは、最終的には経営とマネジメントの問題です。

研修や叱咤激励で、社員の「指示待ちマインド」は変わりません。

経営者自身が、生成AIをはじめとするテクノロジーのトレンドから目を背けず、それに向き合う姿勢を明確に示すこと。そして、時代遅れの取り組みに固執せず、時代にふさわしい戦略と施策を「スピード感」を持って打ち出すこと。

その姿を見て初めて、社員は「思考停止」から目覚め、自らも変わろうと動き出します。もし、経営がトレンドから目を背け続ければ、未来に不安を抱く優秀な社員は会社を去っていくでしょう。そして、残った社員は自らを守るために、より深く「思考停止」してしまいます。これは、組織から「未来」そのものが失われていくことを意味します。

今こそ、経営者が先頭に立ち、組織全体でこの現実に立ち向かう時です。

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