AI時代に「素人」は生き残れない?
最近、AIの進化のスピードに驚かされている方も多いのではないでしょうか。ChatGPTの登場からわずかな3年ほどで、MicrosoftのCopilotやGoogleのGeminiなど、私たちの仕事を劇的に変えてしまう可能性のあるツールが次々と登場しています。
先日、あるSI事業者の方のお話を伺う機会があったのですが、来年度の事業計画が「相変わらずの立て方」だと聞き、少し心配になってしまいました。
AIが破壊する「これまで」のビジネスモデル
その「相変わらずの計画の立て方」とは、
「事業予算=人数×単金」
という考え方です。
業績を伸ばすためには「人数」を増やす必要があり、そのために「即戦力で稼いでくれる人」の採用に力を入れる、というものです。
しかし、IT人材が取り合いになっている今、これは非常に困難な道です。仮に人を採用できても、単価を上げにくい状況では、利益を出すのは難しくなります。
そして何より、このビジネスモデル自体が、生成AIによって根本から脅かされています。
生成AIを搭載した開発支援ツールの登場は、コーディングやドキュメンテーションといった「知的力仕事」つまり、「人数×単金」で稼ぐビジネス・モデルを破堤に追い込むことは、もはや避けられません。
昨今のAI駆動開発ツールでは、何をしたいかを入力するだけで、仕様の作成からコード生成、テストまで、ほぼ自動でこなしてしまうものも登場しています。
これはつまり、「システム開発のための工数需要を集めて収益を拡大する」という、これまでのビジネスの前提が成り立たなくなる可能性が高い、ということです。
「人数×単金」で測られていた仕事、つまり、ある意味で「誰でもできる知的力仕事」は、AIに代替されていく。これが、私たちが直面している現実です。
あなたは「素人」ですか? それとも「プロ」ですか?
では、AIが仕事を代替していく時代に、私たちはどうすればいいのでしょうか。
その答えが、「素人」から「プロ」への転換です。
ここで言う「素人」と「プロ」の違いは、次のように定義されています。
素人は、自分の会社の仕事をきっちりとこなせる存在です。その能力が高ければ、自分が所属する会社では、役職は高く、権限を持ち、まわりが従ってくれます。
一方、プロは、会社を越えて、名前で知られている存在です。その人個人の能力によって高く評価され、お客様が従ってくれます。
あなたはどちらでしょうか?
以前、転職の相談を受けた際に、ご自身のキャリアを「何歳の時に係長になり、課長になり、部長になった」と説明され、同期よりも、出世は早かったと自信を持って語られる方がいたそうです。しかし、残念ながら、その「役職」は、その会社でしか通用しないキャリアです。
転職市場で、あるいはこれからの社会で求められるのは、そうした社内的な評価ではなく、「プロとしてのキャリア」です。
聞きたいことは、他の会社でも通用するプロとしてのキャリアです。例えば、どのような仕事を通じて、どのような知識やスキルを身につけ、誰とつながり、どのような成果に、いかなるカタチで貢献したかということです。
AI時代に価値を持ち続けるのは、後者の「プロ」としてのキャリアです。「人数×単金」の「工数」としてではなく、「高くても構わないから、なんとしでも〇〇さんに仕事をお願いしたい」と言われるような、個人の価値を高めていく必要があります。言い換えれば、会社という看板がなくても、個人の名前で仕事を得られる存在です。
「人的資本経営」という考え方
この変革は、個人の意識だけでなく、会社の経営にも表れています。 「事業予算=人数×単金」という考え方は、「人的"資源"経営」です。これは、「人材をコストとして消費する対象とみなす考え方」です。
それに対し、これからの時代に求められるのが「人的"資本"経営」です。
「人的資本」とは、「人材に投資して、ひとり一人の価値を高め、高い収益を上げようという考え方」です。
会社は、従業員一人ひとりを「プロ」として育てるために投資し、その能力を活かせる環境を提供する。
私たち個人も、その環境を活かし、会社に与えられる機会を待つだけでなく、自ら「自分に時間やお金を積極的に投資しなくては」なりません。
AI時代は「プロ」になるチャンス
終身雇用が幻想となった今、会社の看板や役職だけに頼る「素人」の生き方は、非常に不安定です。
AIは、私たちが「素人」のまま安住することを許してはくれません。
もはや転職は当たり前の世の中です。だからこそ、企業が、優秀な人材をつなぎ止めるにはプロを育てるための投資や施策が必要であり、それは優秀な人材を集める切り札にもなります。一方で、個人としては、プロでなければ生きにくい世の中になりました。
これは恐ろしいことであると同時に、大きなチャンスでもあります。
これまでは会社という枠の中でしか評価されなかった人も、自らの価値を高め、社会に通用する「プロ」として輝ける時代が来た、とも言えるのです。
大切なのは、「会社に期待するのではなく、社会に期待される存在を目指すこと」です。
AIの進化を恐れるのではなく、自分を「プロ」へと高めるための最強の「相棒」として使いこなし、自分だけの価値を磨いていく。 今までであれば一人で抱えていた仕事も、AIという様々な専門分野の優秀なスタッフを、まるで自分の専属であるかのように活用できる時代になったのです。それを使わない手はないでしょう。
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