DX推進の成否を分けるデジタル人材育成--先行企業と遅行企業の違い
デジタル変革(DX)の成功には、最新技術の導入だけでなく、それを活用できる人材の育成が不可欠です。IDC Japanの調査によると、DXを推進する企業とそうでない企業では、デジタル人材育成の取り組みと成果に明確な違いがあることが明らかになりました。DX遅行企業の5社に1社が「スキル育成を実施していない」と回答しており、企業間のデジタル格差が拡大しています。
IDC Japanが2024年5月に実施した調査では、国内の従業員300人以上の企業を対象に、デジタルスキル育成の実態を分析。その結果、DXの進捗度が高い企業ほど、デジタル人材育成に積極的に取り組んでおり、AIやナレッジ共有の仕組みを導入していることが判明しました。一方で、DX遅行企業では、育成の取り組みが不十分であり、スキルギャップが拡大しています。
DX先行企業は高度なデジタル人材育成を実践中。一方、遅行企業の5社に1社が手つかず。~国内企業のデジタル人材育成とナレッジ共有の実態調査結果を発表~
今回は、デジタル人材育成の最新動向と、企業が取るべきアクションについて取り上げたいと思います。
DX先行企業が実践するデジタル人材育成の手法
座学と実践を組み合わせた育成
DXを推進する企業では、従来の座学研修に加え、実際の業務を通じてデジタルスキルを習得する機会を提供しています。DXプロジェクトへの参加やハンズオンワークショップを導入することで、従業員のスキル定着率を高めています。
AIを活用したナレッジ共有
生成AIを活用し、学習コンテンツの自動整理やナレッジ共有の仕組みを構築している企業が増えています。これにより、社内で得た知見を迅速に展開し、全社的なスキル向上を実現しています。
スキル評価と最適な育成計画の設計
デジタルスキルの可視化と定期的な評価を行うことで、企業全体のスキルギャップを把握し、必要な育成計画を立案しています。これにより、適切なリスキリングやアップスキリングを推進しています。
DX遅行企業に見られる課題
デジタル人材育成に消極的な企業では、育成プログラムが座学中心であり、実践の機会が不足しています。また、ナレッジ共有の仕組みが整備されておらず、スキルが個人レベルにとどまっているため、組織全体でのスキル向上が難しくなっています。さらに、従業員のデジタルスキルの評価が行われておらず、育成計画が場当たり的になっていることも課題となっています。これらの問題を放置すると、DXの推進が困難になり、競争力の低下につながる可能性があります。
企業が取るべきアクション
IDC JapanのTech Buyer リサーチマネージャーである鈴木剛氏は、DX成功のためのデジタル人材育成の重要ポイントとして、必要なスキルセットを明確にし、現状とのギャップを分析することが大切であると述べています。
また、座学だけでなく、実践型の育成プログラムを導入し、DXプロジェクトへの参加を促すことが効果的といいます。さらに、生成AIを活用し、ナレッジの蓄積と共有を推進することで、組織全体のスキル向上へのつながるでしょう。そして、スキルの定期的な評価と育成計画の見直しを行うことで、継続的な改善へとつなげていくことも重要となるでしょう。
出典:IDC Japan 2025.2