生成AI進展で急がれるデータセンターと計算資源の整備
生成AIの急速な普及と活用拡大に伴い、AIモデルの学習と推論に必要な計算資源の需要は飛躍的に増加しています。そのため、高度なAI技術の実現には膨大なデータ処理能力が求められ、その基盤を支えるデータセンターの整備が急務となっています。
政府はこの課題に対応するため、国内における計算資源の確保とデータセンターインフラの拡充に向けた取り組みを政策的に進めています。
経済産業省は2024年12月25日、「第1回 産業構造審議会 商務流通情報分科会 次世代半導体等小委員会」を開催。今回はこの中から、AI産業基盤強化に向けたデータセンターと計算資源整備に焦点をあてて取り上げたいと思います。
AIの急成長と計算資源確保の重要性
生成AIの登場により、AI学習と推論に必要な計算能力は加速度的に増大しています。最新のAIモデルでは従来の数倍以上の計算資源が求められるため、国内における計算インフラの強化は経済成長と技術革新の実現に不可欠です。特に、低遅延性、データセキュリティ、プライバシー保護の観点からも、国内での整備が求められています。
生成AIの進展により、AIの計算資源需要は2023年から2030年にかけて急増すると予測しています。
AIに関する市場では、国内では年平均47.2%、世界では53.3%の成長が見込まれ、2030年には国内のサーバーおよびストレージ需要が約1兆円規模に達する見通しです。
このため、政府では2027年度までに60EF(エクサフロップス)の計算能力を整備する計画を掲げ、AIモデルの学習と活用に十分なリソースを提供する体制を構築していくことを目指しています。
データセンター拡充と経済への影響
AI需要の拡大に伴い、計算資源の確保に加え、データセンターの整備が重要となっています。政府では、データセンターの整備においては以下の重点項目を挙げています。
経済安全保障と競争力強化
データセキュリティの強化を通じて、自国のデータ主権を守りつつ、海外からの投資呼び込みを促進。また、デジタル赤字の緩和にも寄与し、デジタル経済の健全な発展を支援
低遅延性による産業利用促進
低遅延かつ高速処理が求められるAIモデルへの対応が可能となり、製造業や医療、物流などさまざまな産業でのAI活用を促進
市場規模の拡大と雇用創出
データセンター整備と関連するインフラ投資により、新たな雇用機会の創出と地域経済の活性化
脱炭素電力インフラの拡充と持続可能性への対応
AIの計算需要増加に伴い、データセンターや半導体工場の電力消費量も大幅に増加することが予測されています。
2033年にはデータセンターと半導体工場の電力需要が最大537万kWに達する予測もあり、安定的かつ低コストで供給できる脱炭素電力インフラの整備が急務となっています。
MicrosoftやGoogleなどの海外ビッグテック企業もデータセンターの電力消費増加に伴い、CO2排出量削減を課題として取り組んでおり、日本も同様の戦略が求められます。
今後の展望
AI技術の急成長などにより、計算資源とデータセンターの重要性は今後さらに高まることが予測されます。国内におけるインフラ整備は、AIモデルの高度化とともに産業競争力の向上を促進し、経済安全保障の観点からも重要となるでしょう。