データセンター市場拡大、国内キャパシティは2029年までに2倍へ
国内のデータセンター市場が急成長しています。IT専門調査会社IDC Japanが2025年2月19日に発表した最新の予測によると、国内の事業者データセンターの電力キャパシティ(ITロード)は、2024年末の2,365.8メガVA(ボルトアンペア)から、2029年末には4,499.6メガVAに拡大する見込みです。これは年平均成長率(CAGR)13.7%という急速な伸びを示しており、データセンター業界の活況が続くことを示しています。
この成長を支えているのは、クラウドサービスの拡大と生成AIの普及です。特に、AWSやマイクロソフトなどのパブリッククラウド事業者はAI関連サービスを次々と展開しており、それに伴いAI向けの高性能サーバーの導入が加速しています。
また、データセンター市場では、クラウド事業者向けのハイパースケールデータセンターの建設が相次いでいます。IDC Japanの調査によると、関東および関西を中心に毎年300メガVA以上の規模の新設が続く見通しです。
AIサーバーの普及がデータセンターの電力需要を増加
データセンターの電力キャパシティ拡大の大きな要因のひとつが、生成AIサーバーの急増です。AIモデルのトレーニングや推論には、大量の計算処理が必要となり、それに伴い消費電力も大幅に増加します。
例えば、NVIDIAの最新AIチップ「H100」を搭載したサーバーは、1台あたり数キロワットの電力を消費します。一般的なクラウドサーバーと比較しても電力負荷が大きく、データセンターの電力供給能力がこれまで以上に重要になっています。
さらに、政府の補助金政策もデータセンター需要を後押ししています。国内企業がAIインフラを整備するために補助金を活用し、大規模なAIサーバーの導入を進めていることから、その設置場所としてデータセンターの需要が急増しています。
データセンターの建設コストは上昇、それでも需要は拡大
一方で、データセンター市場にはいくつかの課題もあります。そのひとつが建設コストの上昇です。
近年、半導体の供給不足や建設資材の高騰、人件費の増加により、データセンターの建設費は年々高まっています。IDC Japanのリサーチマネージャー伊藤未明氏は、「ハイパースケールデータセンターの需要は非常に強く、コスト上昇による新設ペースの鈍化はほとんど見られない」と指摘しています。
また、データセンターの急増による電力供給の逼迫も懸念されています。地方のデータセンターでは、安定した電力供給を確保するために、再生可能エネルギーの活用や電力の自家発電といった対策が求められる場面が増えています。
今後の展望--データセンターの未来はどこへ向かうのか?
データセンター市場は、今後も拡大が続くと予測されていますが、成長を持続させるためには、エネルギー効率の向上や環境負荷の低減が求められます。
- 電力効率の向上:データセンターのエネルギー効率を示す「PUE(Power Usage Effectiveness)」を改善するために、液浸冷却技術や高効率電源システムの導入が進められています。
- 再生可能エネルギーの活用:カーボンニュートラルを目指し、再生可能エネルギーの導入を加速させる企業が増えています。特に、大手クラウド事業者は自社のデータセンターでの太陽光発電や風力発電の活用を積極的に進めています。
- エッジDCの増加:都市部だけでなく、地方にも小規模データセンター(エッジDC)が増加し、ネットワーク負荷を分散する動きが加速すると考えられます。
データセンターのキャパシティは2029年までに2倍へと拡大する見込みですが、その成長を持続可能なものとするためには、インフラ整備や技術革新が不可欠です。今後もクラウド、AI、エネルギー業界の動向に注目しながら、データセンターの進化を見守っていく必要があるでしょう。