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「地域協同プラットフォーム構想」の役割

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日本では、人口減少と高齢化に伴い、地方におけるエッセンシャル・サービスの供給維持が難しくなっています。卸小売、物流、介護、ヘルスケア、教育・保育、家事支援など、地域生活に不可欠なサービスが縮小し、「買い物難民問題」や交通困難の拡大が懸念されています。

経済産業省は2024年12月24日、「第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会」を開催。新しい地方創生と産業政策の一体的推進について議論・検討を行っており、この中で、経済産業省は「地域協同プラットフォーム」構想を示しています。

地域協同プラットフォームの役割と目的

地域協同プラットフォーム構想は、従来の営利企業では維持が困難な地方サービスを、新たな共助型事業体として支える仕組みです。本プラットフォームでは、デジタル技術や省力化、協働事業化を活用して、生産性向上とコスト削減を図りながら、基盤的サービスの維持と拡大を目指しています。

具体的には、地域住民や自治体、中小企業、大企業、金融機関が連携し、共同出資による法人や労働者協同組合を組織して運営。これにより、恒常的な赤字構造を回避し、持続可能なサービス供給網の確立を目指しています。

地域協同プラットフォーム構想 出典:経済産業省 第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.12.24

さらに、設備投資やデジタル化による効率化を進めることで、コスト削減を実現し、サービスの質を向上。地域住民が出資や協力を通じて事業に参画することで、地域社会の活性化と雇用創出にもつなげていくことが期待されます。そのためには、損益分岐点を下げることで(①→②→③)、人口減少地域における基盤的サービスの維持を可能とする新たな事業体への転換が必要となります。

こうした取り組みにより、サービス供給の持続可能性が高まるだけでなく、地域住民の生活環境も大きく改善されることが期待されています。

出典:経済産業省 第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.12.24

「地域協同プラットフォーム」構想(各地で見られる萌芽)

「地域協同プラットフォーム」構想の実現に向けて、各地で見られる事例も取り上げています。

波多コミュニティ協議会(島根県雲南市)
自治組織が買物支援や地域交通、温泉施設を運営。POSデータ活用により効率的な運営を実現。地域住民の協力を得ることで安定的なサービス提供を実現

東白川村労働者協同組合(岐阜県東白川村)
移住者や地域住民による草刈り・生活支援などの共同事業を展開。移住者の雇用創出にも貢献し、地域活性化のモデルケースにも

コープさっぽろ(北海道)
DXを活用し、宅配網や移動販売、高齢者向け夕食宅配サービスを提供。地域のニーズに対応した柔軟なサービス展開が評価

大棚商店(鹿児島県奄美大島)
高齢者支援や買い物難民対策として、物資の備蓄と配送を実施。災害時にも対応できる備蓄拠点としても機能しており、地域の安全保障にも寄与

出典:経済産業省 第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.12.24

これらの事例は、地域の特性に応じた柔軟な対応と、地域住民や事業者の協力によって取り組みを進めています。

今後の展望

各地域では、地域特性に応じた柔軟な対応と事業モデルの多様化が求められており、政府は、地域協同プラットフォーム構築のための設備投資やデジタル化支援を強化していく方針です。

地方経済を支える新たな共助型事業体としての地域協同プラットフォームは、地域社会の持続可能性と競争力強化に大きく貢献していけるでしょうか。

人口減少地域でも安定したサービス供給を実現し、日本全体の地域格差解消と経済活性化を促進。地域協同プラットフォームを基盤とした新たな社会経済システムの構築は、地方創生のモデルケースとして着実に実行され、評価され展開されていくのか、今後の取組に注目です。

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