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地方創生と産業政策

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日本は現在、少子化と人口減少という深刻な課題に直面しています。地方では若年層の流出や産業の衰退が進み、地域経済の持続可能性が問われています。

経済産業省は2024年12月24日、「第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会」を開催し、新しい地方創生と産業政策の一体的推進について議論・検討を行っています。

出典:経済産業省 第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.12.24

本部会では、地域の特色を活かした産業振興と雇用創出を通じて、日本全体の成長を支えることを目指しています。また、デジタル技術やグリーンエネルギーへの投資を促進し、地域経済の競争力を高める狙いがあります。

今回は、本部会の内容をもとに、新しい地方創生と産業政策、今後の展望について取り上げたいと思います。

地域経済と産業政策の新たな役割

地方創生において、地域経済の自律的発展を促すためには、産業政策と一体化した取り組みが求められています。少子化が進行する中で、地方から若者や女性が離れている現状を踏まえ、良質な雇用創出と生活環境の向上が求められています。経済産業省は、地方経済を日本全体の成長モデルへと移行させるため、以下の3つの方向性を打ち出しています。

域外からの投資呼び込み(グローバル型産業)

・地域の強みを活かした産業の誘致や育成を通じて、国内外からの投資を呼び込む
・製造業や情報通信業など、グローバル市場で競争力を持つ産業を強化
・GX(グリーン・トランスフォーメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、新規投資を促進

安心して働き暮らせる生活環境の創出(ローカル型産業)

・地域住民にとって必要不可欠な小売、物流、介護などのサービス産業の維持・発展を支援
・デジタル化や協同化を通じた生産性向上を図り、地域内での所得循環を促す。

地域企業の内発的成長の促進

・中堅・中小企業を中心に地域の雇用を支えつつ、産業資源や人材を活かした振興策を展開
・人材育成やデジタル技術の導入支援を強化し、地域経済の競争力向上を目指す

地方創生2.0の具体的アプローチ

石破内閣の下でスタートした「地方創生2.0」は、地方が成長の主役となるための包括的な政策であり、以下の5つのポイントを重視しています。

・安心して働き暮らせる生活環境の創生
・東京一極集中リスクへの対応と地方分散の促進
・付加価値創出型の地方経済の構築
・デジタル技術と新技術の徹底活用
・産官学連携によるステークホルダー連携の強化

これらの方針は、地方経済の付加価値を高めるだけでなく、地域間格差の解消と社会基盤の強化にも寄与していくとしています。

産業用地・インフラ整備の課題と対応策

本部会では、産業用地の不足が地方経済発展のボトルネックであることが指摘されており、既存用地の活用促進や新規造成を加速させる必要があります。具体的には、次のような施策を検討しています。

・未利用の産業用地の情報を公開し、企業とのマッチング支援を強化
・土壌汚染対策を合理化し、跡地利用を促進
・インフラ整備への資金支援や税制インセンティブを活用して、企業誘致を促進

また、デジタル技術やGXを取り入れたスマートインフラの整備を推進し、地域の生活環境と産業基盤の両面から地域経済を支えていくことの重要性を挙げています。

地域資源を活用した産業振興

地域資源や文化を活用した産業振興の重要性も強調されています。例えば、観光・ヘルスケア・コンテンツ産業などは、地域特性を生かした域外市場への展開が期待されています。

さらに、デジタル技術を活用した新興産業の創出や、スタートアップ支援を通じた地域経済の活性化を目指しています。

今後の展望

「新しい地方創生と産業政策の一体的推進」は、地域産業構造の強化と持続可能な経済成長の実現に向けた取り組みが重要となります。

地域の産業構造イメージでは、「域外開拓」と「域内循環」の二軸で産業政策が示されているように、域外開拓では、製造業や情報通信業を中心に、GX(グリーン・トランスフォーメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、世界市場で競争力を発揮。一方、域内循環では、小売・物流・介護などのサービス産業の維持・発展を通じて、地域住民の生活の質を高める施策を重視しています。

出典:経済産業省 第25回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 2024.12.24

今後は、地域特性に応じた差別化戦略と全国共通の基盤整備を両立させていくことが日本全体を強くしていく上で重要になるでしょう。例えば、産業用地の整備やインフラ強化に加え、デジタル人材育成や地域企業の生産性向上支援を強化することで、成長基盤を強化。また、新技術やエネルギー資源の活用を促進し、地域経済の競争力をさらに高めることが期待されます。

地域の独自性を活かしつつ、グローバルな視点で競争力を高める施策が、日本全体の社会や産業をけん引する鍵となるのかもしれません。

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