2025年の国内金融IT市場
IDC Japanが2025年1月16日に発表した最新予測によると、2025年の国内金融IT市場は前年比7.5%増の3兆3,290億円に達すると見込まれています。特に既存システムの刷新やインフラモダナイゼーションが市場を牽引していますが、生成AIや内製化への取り組みも注目されています。
国内金融IT市場の成長
IDC Japanが発表したデータによれば、2023年から2028年の年間平均成長率(CAGR)は6.5%と予測され、2028年には市場規模が3兆8,956億円に達するとされています。この成長の背景には、国内経済の堅調な推移、日本銀行のマイナス金利政策の転換による金利の緩やかな上昇が挙げられます。
これらの要因により、金融機関の収益が改善し、大手金融機関を中心にIT投資が加速。また、メガバンクや地方銀行、大手証券会社などが業務系システムの刷新やデータ基盤の統合を進め、デジタルビジネスの推進に向けた投資を拡大しています。さらに、ネット専業金融機関も市場を牽引しており、新たなサービス開発への投資を加速させています。
課題と地域金融機関の状況
一方で、地域金融機関では経済停滞の影響が長期化しており、一部では成長率が低迷することが懸念されています。このような環境下で、金融機関が持続的な成長を遂げるためには、既存ビジネスをデジタル技術で効率化し、新たな付加価値を生み出すことが重要です。
また、他業界との連携やエコシステムの構築を通じて、新たな収益源を確保する必要があります。さらに、ビジネス全体をリアルタイムで連携させるシステムを導入し、迅速な意思決定と柔軟な対応を可能にすることも求められています。
モダナイゼーションと生成AIの役割
国内金融IT市場を牽引する重要な要素として、モダナイゼーションと生成AIの活用が挙げられます。多くの金融機関が既存システムの刷新やインフラの見直しを進めており、これがIT支出を押し上げています。
また、生成AIを活用する取り組みも始まっており、スタートアップ企業がこの分野で存在感を高めています。さらに、金融機関が自らシステムを開発する内製化の動きも加速しており、デジタル分野を中心にその取り組みが進んでいます。
ITベンダー/SIerへの影響と今後の対応
IDC Japanの市村仁シニアリサーチマネージャーは、ITベンダーやSIerは現在進行中のモダナイゼーション関連プロジェクトに加え、生成AIや内製化支援を積極的に推進する必要があると分析しています。
モダナイゼーションプロジェクトが完了すると、ITベンダーのビジネス機会が減少するリスクがありますが、生成AIの採用が本格化する中で、スタートアップ企業が重要な役割を果たす可能性が高まっています。
そのため、スタートアップ企業との連携を強化し、金融機関の内製化プロセスを支援するサービスを開発することが求められます。また、デジタル分野におけるコンサルティング能力を強化することも重要です。
今後の展望
国内金融IT市場は2025年以降も成長を続けると予測されていますが、モダナイゼーション後の市場変化に適応することが重要となっています。金融機関は、生成AIや内製化を活用した新たな成長戦略を模索し続ける必要があります。一方で、ITベンダーやSIerはスタートアップ企業との協業やサービスの高度化を通じて、新たなビジネスチャンスを創出することが求められています。