データ連携基盤の共同利用ガイドブック
デジタル社会の進展に伴い、地域や分野を超えたデータ連携の重要性が高まっています。データの共同利用は、行政サービスの効率化やコスト削減、住民に対する質の高いサービス提供の鍵となり、地域経済の活性化にも寄与することが期待されています。
今回、デジタル庁2024年10月に公開した「データ連携基盤の共同利用ガイドブック」は、自治体や企業が直面する課題の解決を目指し、共同利用の進め方やプロセスを示しています。
本ガイドブックの内容を基に、データ連携基盤の共同利用と地域社会や自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)について取り上げたいと思います。
データ連携基盤、共同利用の考え方
日本において、自治体や企業がデータ連携基盤を整備・運用する際、重複投資や相互運用性の欠如といった問題が生じています。
これに対処するために、デジタル庁は分野ごとに推奨モジュールを準備し、それを基盤に各地での共同利用を促進していく方針です。
本ガイドブックでは、個々の自治体や分野が独自に構築するのではなく、協調領域におけるデータ連携機能の標準化と共同利用の重要性を示しています。
データ連携基盤の基本的な考え方は、さまざまな公共サービスが必要なデータを共有し、地域社会や住民のニーズに応じた最適化されたサービス提供を可能にするというものです。
オープンな仕様を確保することで、基盤の設計自由度を高め、データ連携の円滑化を実現するとともに、共用化された個人認証サービスや分野ごとに標準化されたデータモデル、APIの公開による高いレベルでの相互運用性を確保していくとしています。
これらの方針を通じて、各都道府県が現状と課題を把握し、データ連携基盤共同利用ビジョンを策定し、プロジェクトを計画・遂行していくためを全体像を示すことにあります。
共同利用に関する現状調査
本ガイドブックでは、共同利用に関する現状を把握するために自治体へのヒアリングが行われ、その結果をまとめています。
ヒアリングは、令和3年度と令和4年度のデジタル田園都市国家構想交付金の採択団体を中心に実施され、現状の課題や効果が分析されています。調査では、データ連携基盤の共同利用が、コスト削減や広域的なデジタル化の推進に寄与しているといいます。
具体的には、各自治体が単独で基盤を構築・運用する場合、数千万円規模のコストが発生するのに対して、共同利用では1/2から1/12にまでコストを削減。運用コストも同様に、1/5から1/20に抑えることが可能であり、共同利用の経済的なメリットを挙げています。
共同利用の実施にあたっては、運営体制が重要となります。調査では、運営体制として「直列型」「並列型」「外部組織型」の3つのモデルが導入されており、それぞれの長所と課題が挙げられています。
「順次仕様許諾型(直列型)」は、都道府県がベンダーと契約し、基礎自治体がそれを利用する方式であり、都道府県の運営負担は大きいものの、決定権を持って事業を進められる利点があります。
データ連携基盤の共同利用実現のためのプロセス
データ連携基盤の共同利用を成功させるためには、適切なプロセスに従って段階的に取り組むことが不可欠です。
本ガイドブックでは、以下の3つのステップを推奨しています。
都道府県下の状況把握
既存のデータ連携基盤やサービスの状況を把握し、どの基盤を共同利用するか、または新たに導入するかを検討。この段階では、各自治体が運営する基盤の特性を把握することが重要。
目的の設定とビジョンの策定
共同利用の目的を明確にし、それに基づいてビジョンを策定。たとえば、広域的なサービス提供やコスト削減を目指す場合、どのような基盤が最適であるかを検討。
実行計画の策定と実行
実際に共同利用を進めるための具体的な計画を立て、それを実行。ここでは、関係者間の合意形成や運営組織の整備、コスト負担の公平な分担が重要。
これらのプロセスに基づいて共同利用を進めることで、データ連携基盤が地域のDXを強力に推進するための基盤として機能することが期待されます。
データ連携基盤の進展に向けて
データ連携基盤の将来的な発展には、以下の3つの要素が重要とされています:
個人認証サービスの共用化
データ連携基盤に接続するサービスが増加する中で、共通の個人認証サービスの導入により、サービス利用の利便性を高める。サービスごとに異なる認証要件を統一し、認証レベルを設定することが重要。これにより、住民や利用者は一度の認証で複数のサービスを安全に利用可能に
データモデルの標準化
各分野ごとのデータモデルを整理・標準化することで、サービス間のデータ連携が円滑に行われ、異なる分野間での連携も可能に。たとえば、ヘルスケア、観光、防災など異なる分野であっても、共通のデータモデルを使用することで、サービスの相互運用性を確保
APIセットの公開
データ連携基盤と各分野のサービスをつなぐAPIを公開することで、基盤のオープン性を確保し、サービス提供者間の競争と協力を促進。APIの公開は、サービス提供者が基盤に依存しすぎることなく、新しいサービスを柔軟に追加・変更できる環境を整えるためにも重要
これらの展開により、データ連携基盤を活用して実現可能なサービスが多様化し、住民にとっても利便性の向上。データ連携基盤を基盤に、地域全体での持続可能なサービス提供が実現されることが期待されます。