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周波数再編アクションプラン

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総務省は、2024年9月30日に「周波数再編アクションプラン(令和6年度版)」案を発表しました。

本アクションプランは、無線通信技術の進展とそれに伴う周波数利用の拡大に対応するため、限られた周波数資源を最大限に活用し、円滑かつ効率的に再編を進めるための具体的な取り組みを提示しています。2040年までの周波数帯域の確保目標や、5GおよびBeyond 5Gの普及に向けた計画が中心となっており、日本のデジタル競争力を一層強化することが期待されています。

周波数再編の背景と意義

現代社会では、スマートフォンやIoTデバイス、無線LAN、ドローン、自動運転車といった、さまざまな無線通信を利用した新しいサービスが急速に普及しています。このようなサービスの多様化に伴い、電波の需要は急増し、特に移動通信におけるトラフィックが年々増加しています。

また、災害時における通信手段としての重要性も高まっており、例えば、東日本大震災や能登半島地震では、衛星携帯電話やドローンが緊急通信の手段として活躍しました。こうした背景を踏まえ、総務省は、電波資源を有効に活用し、新たな技術や需要に応じた周波数の再編を着実に進めることが不可欠であると考えています。

周波数再編アクションプランは、これまで総務省が毎年策定してきた政策を継承しつつ、令和5年度からは電波法改正により電波監理審議会が策定の主体となりました。これにより、透明性や予見可能性がさらに高まり、社会的信頼性の向上が図られています。

5G・Beyond 5Gの推進と周波数確保の重要性

アクションプランの大きな柱となるのは、5Gのさらなる普及とBeyond 5G(次世代通信技術)の実現です。特に、5Gは日本の産業・社会基盤として、さまざまな分野において社会課題の解決や経済成長に寄与すると期待されています。5Gネットワークの構築は、スマートシティや自動運転、遠隔医療など多くの分野で新たなサービスを提供する基盤となるため、社会実装を加速させることが不可欠です。

今回のプランでは、主に2.6GHz、4.9GHz、26GHz、40GHz帯の追加割当てが計画されており、ダイナミック周波数共用や国際的に調和の取れた割当方式を取り入れることで、周波数の効率的な利用を推進します。

Beyond 5Gに向けた周波数確保は、日本のデジタル競争力を高めるうえで重要な役割を果たします。Beyond 5Gでは、2030年代に向けてさらなる高度な通信技術が求められており、ミリ波帯など高い周波数の利用が増加すると見込まれています。

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出典:総務省周波数再編アクションプラン(令和6年度版) 2024.9.30

また、新たな周波数割当方式として「条件付オークション」が導入されることも注目されます。この方式は、既存の無線システムと共存しつつ、新たな事業者が適切な条件の下で周波数を利用できるようにするもので、ビジネス環境の透明性や公平性が確保されるとされています。これにより、5GやBeyond 5Gを活用したビジネスチャンスが広がり、産業競争力の強化が期待されています。

公共業務用周波数の効率化とデジタル化推進

一方で、公共業務における周波数利用の効率化も重要な課題として位置付けられています。デジタル化が進む中で、公共業務用無線システムのアナログからデジタルへの移行が急務となっており、特に防災無線や災害対策用のテレメータシステムのデジタル化が推進されています。例えば、150MHz帯や400MHz帯で運用されている公共業務用無線システムは、デジタル化による効率的な通信を実現し、災害時にも迅速で確実な情報伝達が可能となります。

また、5GHz帯や6GHz帯など、無線LANのさらなる高度化に向けた周波数の拡張も計画されています。無線LANの利用が増加する中で、上空での利用を可能にする技術的な検討や、6GHz帯の屋外利用拡大が進められており、特にWi-Fiの普及によるネットワーク接続の安定性と利便性向上が期待されています。

2040年までに約70GHzの帯域確保を目指す

総務省は、2040年末までに合計約70GHz幅の周波数帯域を確保するという長期目標を掲げています。この中には、5GやBeyond 5Gに必要とされる約42.5GHz幅の携帯電話向け帯域や、Wi-Fi向けの約13.9GHz幅の帯域が含まれています。また、非地上系ネットワーク(NTN)向けにも約16.7GHz幅が確保される予定です。こうした帯域確保は、既存の周波数帯域の効率化と再編を進めることにより実現され、無線システムの共用化や技術進展によって可能となります。

この帯域確保により、Beyond 5G時代に向けた通信インフラが整備され、日本のデジタル社会の基盤を強化するとともに、少子化や地方過疎化といった社会課題に対する解決策としても期待されています。地方においては、デジタルインフラの整備が進むことで、都市と地方のデジタル格差を縮小し、地方創生を推進する効果が見込まれます。

経済成長とデジタル社会の基盤整備

今回のアクションプランは、日本のデジタル社会の発展と経済成長を実現するための重要な取り組みです。5GやBeyond 5Gといった次世代通信技術を基盤とするデジタルインフラの整備は、生産性向上や新たなビジネスチャンスの創出に寄与し、グローバル競争力の強化にもつながります。少子化や人口減少に伴う生産人口の減少を補うためにも、テクノロジーを活用したスマートな社会構築が求められています。

総務省は、このアクションプランに基づき、透明性と予見可能性を確保しながら、周波数の移行と再編を着実に進めていくとしています。これにより、電波の有効利用が一層進められ、無線通信技術の利活用が進むことで、我が国の経済の活性化に貢献することが期待されています。

総務省が発表した「周波数再編アクションプラン」は、日本のデジタル社会の進展と競争力向上に向けた重要な施策です。5GおよびBeyond 5Gの普及に向けた周波数確保や、公共業務用周波数のデジタル化、さらには2040年に向けた長期的な帯域確保目標が設定されており、経済成長や社会課題の解決に大きく寄与することが期待されています。

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