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生成AIに関するスキル標準

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経済産業省と情報処理推進機構(IPA)は2024年7月8日、「デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2)」を公開しました。

今回は、企業・組織のDX推進を人材のスキル面から支援する目的で2022年12月に公開した「デジタルスキル標準(DSS)」のうち、「DX推進スキル標準」に生成AIに関する改訂などを行い、バージョン1.2として公開しています。

本改訂版では、生成AIの急速な普及を踏まえ、「DX推進スキル標準」について生成AI関連の補記や共通スキルリスト内の学習項目例の追加や変更するなどの改訂をしています。

今回は、生成AIの特性をはじめとした追加を行い、共通スキルリスト内の学習項目例を追加・変更しています。

生成AIの特性
生成AIを含む新技術への向き合い方・行動の起こし方
生成AIに対するアクション:基本的な考え方
生成AIに対するアクション:詳細定義
個人として業務において生成AIを活用する例
(ビジネス・業務プロセスの)生成AI製品・サービスを開発、提供する際の行動例

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

生成AIの特性

生成AIとは

今回の改訂版では、生成AIを

文章や画像、音声、動画、プログラム等を生成できるAIモデル(学習データを用いた機械学習によって得られるモデルで、入力データに応じた予測結果を生成する)の総称である。

と定義しています。

生成AIの可能性

生成AIの可能性についても整理しています。 生成AIは日本の生産性や付加価値の向上等を通じて大きなビジネス機会を引き出す可能性。また、日本における生成AI(基盤モデル)の開発力を強化していくことで更なるイノベーションを創出し、様々な社会課題の解決に資する可能性に繋がることも見込まれるとしています。

また、持続可能性の観点から、生成AIによって業務の高度化・効率化等が実現され、経済/社会/環境面での様々な利点の想定。他方、生成AIの利用に伴うエネルギー消費量やコストの増加等への対応も求められている点も挙げています。

想定される主な有用性

大量のデータを学習し、その要約や分析、提案を出す等の業務について高い能力を発揮するとともに、人間が意思決定を行う際の一助となり得るとしています。

自然言語によるその高度な対話力ゆえに、ユーザーインターフェイスの向上も含め、多くの人がAI を様々な用途へ容易に利用できるようになった点を挙げています。

そのため、企業のビジネスプロセスや組織変革のみならず、自社が提供するサービス・製品の顧客体験の改善や変革に生成AIを利用していくとなり得るとしています。

想定される主なリスク

技術要素の特徴(学習データ、モデルの学習過程、入力方法、AI モデルの推論時に参照する情報や連携する外部サービス等)と利用者の行動によって、誤情報やビジネス・業務、倫理・法令の観点で不適切な結果が出力され、それを鵜呑みにしてしまうリスクがある点を指摘しています。

また、AIの技術発展や社会実装のスピード・複雑さや、日本と諸外国における法律・ガイドライン等の整備・施行状況が異なることにより、権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等のリスクがある点も挙げています。

新技術(生成AI含む)への向き合い方・行動の起こし方

生成AIは、社会・組織・個人に大きなインパクトを与える新技術であり、ビジネス・業務にさらなる変革をもたらす可能性があります。

昨今のデジタル技術の急速な変化を踏まえると、生成AIに留まらず今後もそのような新技術の登場が想定されています。

DXを推進する人材は、新技術がもたらす変化を自身で捉え、適切に用いながら変革につなげることが重要。そのため、DXを推進する人材に求められる新技術への向き合い方・行動の起こし方を以下のとおり定義しています。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

生成AIに対するアクション:基本的な考え方

DXを推進する人材に求められるスキルの変化に対応するため、生成AIを【活用する】、および生成AIを組み込んだ製品・サービスを【開発する、提供する】の観点から、DX推進スキル標準を改訂しています。

引き続き、デジタルスキル標準やデジタルガバナンス・コード 2.0の利用が、全社的なDXの方向性を基に人材確保・育成の取組みや、DXのビジョン・戦略の実行を後押しすると想定されるとしています。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

生成AIに対するアクション:詳細定義

生成AIに対するアクションとして詳細定義をしています。

・DXを推進する人材が生成AIの技術要素・関連する法律等を理解し、以下により組織・企業の目的の実現や課題解決に寄与する。
・公開されている/組織・企業の業務プロセス等に組み込まれた生成AIを活用する。
・ビジネスや組織・企業の業務プロセスに対する生成AIを組み込んだ製品・サービスを開発し、顧客・ユーザーへ提供する。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

DXを推進する人材自身が、生成AIを活用する際のプロセスと、留意すべき点を以下に示すしています。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

DXを推進する人材が、ビジネスや自組織の業務プロセスに対して、生成AIを組み込んだ製品・サービスを開発し、顧客・ユーザーに提供する際のプロセスと、留意すべき点を以下に示すしています。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

個人として業務において生成AIを活用する例

個人としての生成AIの活用例を以下にまとめている。これからDXを推進する人材を目指すビジネスパーソンも、下記のように生成AIを活用する・しようとすることで、短期間でデジタルに関する経験やスキル等を得ることが可能となる。

DXを推進する人材は、自身が生成AIを活用しながら、組織・企業のDXビジョン・戦略に対してどのようなアプローチができるかを検討する。そしてビジネス・業務プロセスへ生成AIを組み込むことで、組織・企業のDXにつなげることが期待される。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

ビジネス・業務プロセスへの生成AI製品・サービスを開発、提供する際の行動例

ビジネスや自組織の業務プロセスに対して、生成AIを組み込んだ製品・サービスを開発し、顧客・ユーザーに提供する際の各人材類型の主要な行動例を以下に示す。各プロセスにおいて、人材類型同士の連携と柔軟な対応が重要になる。

出典:経済産業省、IPA デジタルスキル標準の改訂版(ver.1.2) 2024.7.8

今後の展望

生成AIの技術発展と社会実装は、多くのビジネス機会を創出する一方で、リスク管理や持続可能な技術活用が求められます。

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これらの課題に対応しながら、生成AIの特性、生成AIを含む新技術への向き合い方・行動の起こし方などを理解しつつ、今回の改訂版で示すように、DXを推進するための人材育成とスキル向上を進めることが重要となっていくでしょう。

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