日本のCBDC導入に向けた現状と今後の課題
デジタル社会の進展に伴い、キャッシュレス決済の普及が進んでいます。2019年にグローバルステーブルコインの構想が発表されて以来、多くの国々で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討が本格化しています。日本もこの流れを受け、CBDCの導入について検討を進めています。
財務省は2024年5月28日、「第9回CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する有識者会」を開催し、CBDCに関する関係府省庁・⽇本銀⾏連絡会議における検討状況等についてまとめています。そのポイントについて、取り上げたいと思います。
日本銀行は、スマートフォンアプリやカードを使ったデジタル通貨であるCBDCの検討を進めています。CBDCにおいて現金と同じように日常生活で使え、いつでもどこでも安全に利用できることを目指しています。
本有識者会議では、CBDCの導入を前提としないものの、導入する場合に考慮すべき点について整理しています。
制度設計の基本方針
CBDCを導入する場合、その制度設計にはいくつかの重要なポイントを挙げています。
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日本銀行と仲介機関の役割分担
- 日本銀行はCBDCの発行・管理を行い、民間の仲介機関が利用者への提供や取引の実行を担当。これにより、利用者は簡便かつ安全にCBDCを利用できるように
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CBDCと他の決済手段の役割分担
- 現金や銀行預金、その他の決済手段とのバランスを保ちつつ、CBDCが補完的な役割を果たすことが重要。特にオフライン環境での利用や、低手数料の取引を可能にすることが求めらる
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セキュリティと利用者情報の保護
- 万全のサイバーセキュリティ対策と、プライバシー保護が不可欠。利用者の情報が適切に管理され、悪用されないようにするための仕組みが必要
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法的対応
- 現行法との整合性を図りながら、CBDCの法的地位を明確にするための法整備が必要。これには、通貨法や民事法などの改正が含まれる
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コスト負担のあり方
- CBDC導入に伴うコストを誰が負担するかという議論も重要。国民や企業、政府がそれぞれどのように負担を分担するかを明確にする必要
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クロスボーダー決済
- 国際的な取引においても、CBDCがスムーズに機能するよう、他国のCBDCとの相互運用性を確保することが求められる
今後の展望
CBDCの導入は、まだ具体的な決定がなされていないものの、制度設計やセキュリティ対策、法整備など、多くの課題をクリアしていく必要があり、日本の市場に普及していくには、多くのハードルを乗り越えていく必要がありそうです。
今後も関係者間の議論を重ね、より具体的な制度設計と実施計画を進めていくことが重要です。日本がどのようにCBDCを導入し、活用していくのか、今後の動向を注視していきたいと思います。
出典:財務省 第9回CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する有識者会 2024.5.28