デジタル・ダストの活用による「振る舞いのインターネット (IoB: Internet of Behaviors) 」
調査会社のガートナーは2020年11月12日、「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の2021年版を発表しました。
「企業は、新型コロナウイルス感染症の危機への対応から成長の推進へと向かう上で、2021年のトレンドのテーマを形成する3つの主な領域に注力する必要性を示しています。
3つの主な領域は
『People Centricity (人中心)』
『ロケーションの独立性』
『レジリエンスの高いデリバリ』
です。
「2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」は以下の9つです。
- 振る舞いのインターネット
- トータル・エクスペリエンス
- プライバシー強化コンピュテーション
- 分散クラウド
- 場所を問わないオペレーション
- サイバーセキュリティ・メッシュ
- インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス
- AIエンジニアリング
- ハイパーオートメーション
今回は、「振る舞いのインターネット (IoB: Internet of Behaviors) 」について、とりあげたいと思います。
振る舞いのインターネット
多くのテクノロジが人々の日常に関する「デジタル・ダスト (粒度の小さいデータ)」を捕捉して使用できるようになっており、振る舞いのインターネット (IoB: Internet of Behaviors) と呼ばれる状態が生じています。IoBは、顔認識、位置情報の追跡、ビッグ・データといった、個人に焦点を絞ったテクノロジを組み合わせ、結果として生じたデータを、関連する人の振る舞い (現金での購入、デバイスの使用など) に結び付けるものです。
企業は、こうしたデータを使って人の振る舞いに影響を与え始めています。例えば、COVID-19のパンデミックにおける感染防止策の遵守状況をモニタリングするために、企業はIoBを活用してコンピュータ・ビジョンで従業員のマスク着用を確認したり、熱画像カメラで発熱している従業員を特定したりしています。
2025年末までに、世界人口の半分以上が少なくとも1つのIoBプログラム (商用または政府) の対象になるとガートナーは予測しています。IoBは技術的には実現可能ですが、人々の振る舞いに影響を与えるために用いられるさまざまなアプローチについて、倫理的・社会的な幅広い議論が行われるでしょう。
と指摘しています。
こういった個人に焦点を絞ったデータ活用とさらにはAIの活用については、政府でも議論や検討が進められています。
総務省のAIネットワーク社会推進会議では、報告書2020年のとりまとめを進めています。
出所:AIネットワーク社会推進会議 2020.11
たとえば、ビジネス利用者における取組では、AI利活用ビジネスのガバナンスの重要性が示されています。
AI利活用ビジネスのガバナンスの重要性
AIビジネスに関連する法律や倫理、ステークホルダには大きな広がりがあり、従来ビジネスと同じようなつもりで進めると、リスクが実現してしまう可能性が高い。ステークホルダと法的・倫理的課題の検討を行うためのガバナンス体制を整えることが今後の課題として必要。AI利活用ビジネスのガバナンス体制について、本推進会議として引き続きフォローし、研究していくことが必要。
振る舞いのインターネット (IoB: Internet of Behaviors)によって、利便性の高い社会が創造される一方で、より、倫理や社会のあり方などがの議論がますます求められるようになっていくでしょう。